陽月華さん 映画「かぞくわり」で奈良が大好きに

インタビュー

インタビューに答える陽月華さん

 作家・折口信夫の小説「死者の書」をヒントに、日本の家族のあり方を描いた映画「かぞくわり」(塩崎祥平監督)が1月19日に公開されます。奈良の古寺にまつられている“伝説の姫”の生まれ変わりである主人公・香奈を演じた女優の陽月華さんに、映画の見どころなどを聞きました。

――初めての主演映画ですね。香奈役としてオファーを受けた時の感想は?

 香奈は、38歳まで定職に就かず、両親のもとで暮らしていてキラキラしたところが少しもありません。人生に疲れている感じです。今までそういう女性を演じたことはなかったから、台本を読んで「ぜひやりたい」と言いました。伝説の地・奈良を舞台に、このファンタジーをどう映像化するのかなと思って、ワクワクしました。

――確かに、最初に登場した香奈は、化粧っ気もありませんでしたね。図書館のアルバイトで、終業時間が来たら、仕事が中途半端でもすぐ帰ってしまう。何事にも冷めている感じ。こういう女性っている、と思わせる自然さがありました。

 はは。私の周囲の人たちが見たら、「あ、こういう陽月、知っている」「見たことあるよ」と言うに違いありません。自分にもそういう一面があるのかもしれませんね。

――ところが、離婚の危機にある妹家族が実家に転がり込んできて、物語は急展開していきます。香奈は急に家に居場所がなくなってしまいますね。めいが、所狭しと並んだ家財道具を次々と投げ捨てるシーンは迫力ありました。

 撮影中、父親役の小日向文世さんが、役者さんたちに「ここはどう思う?」って問いかけてくれることが多かったんですよ。それが新鮮でした。私って、ぼんやりしているところがあるのかもしれないけど、「どう思う?」と聞かれて初めて「きっと、こういう感情だと思いますよ」と言葉にして確認できたりする。

 小日向さんのポジティブ・レクチャーを受けつつ、みんなで話し合いながら1シーン、1シーンを立体的に作り上げていった感じです。そういえば私は、劇団(宝塚歌劇団)をやめてから長いこと「みんなで作り上げる」という機会がなかったような気がして、すごく楽しい現場でした。

――母親役の竹下景子さんの印象は?あのきれいな女優さんが、カツラがズレたままで登場したり、便座に座りながら電話をしたり。体当たりで演技されたようですが。

映画「かぞくわり」から ©2018かぞくわりLLP

 竹下さんは、たおやかで周囲を安心させる雰囲気を持っていらっしゃる方。その竹下さんが、はっちゃけた演技をされるので、正直、私もびっくりしました。台本を読んだだけでも、「ここまでさせるのか。監督すごいなあ」と。でも、ご本人は楽しんで演技されているようでした。

――画家になる夢を絶たれていた香奈は、神秘的な男性と出会い、再び絵を描いてみようと思います。大胆に、とりつかれたように描く姿が美しく表現されていました。苦労されたのではないですか。

 情熱的にキャンバスに向かう姿は、指導役の画家の先生がいてこそ撮影できたものなんです。先生には、絵に対する情熱をお話しいただいて。例えば、青々とした田んぼを描くのに、先生は「地球の中には赤いドロドロとしたマグマが流れているんだ。それに土が混じって、こんな色になる」と、私の目の前で油絵の具を何層も重ねていくんです。「こういう考え方をするのか」と。すごくラッキーな体験でした。
 

――撮影中、奈良県葛城かつらぎ市に滞在されたのですね。その印象は?

 奈良は修学旅行で行っても鹿くらいしか印象に残っていないし、関西にいたころも、遊びに行くなら京都、という感じでした。それが、今回の撮影で1か月ほど奈良に滞在して、大好きになったんです。今でも休暇が取れたら、奈良で過ごしたいと思うくらいです。

――何がきっかけだったんですか?

 私の宿泊していたホテルに「まんがで読む古事記」が置いてあったんです。夜、宿に帰って暇つぶしに読んでみたら、これがすごく面白い。「えっ、あの神社の名前も、うそ、あの地名も載っている!」と発見が多くて。映画にも大神おおみわ神社が登場するんですが、それも載っている。興味を持って調べるようになって、どんどん奈良が好きになりましたね。

――具体的にはどんなところに魅力を感じますか?

 緑が美しかったり、歴史を感じたり。もちろん、そういうところもあるけれど、私は、そこに集う人たちに興味があります。小日向さんは、撮影中、たくさん面白い話を聞かせてくださったし、現地で古墳ツアーもしました。「ご神体登山」というのがあるんですよ。ただの登山ではなくて、神聖な祈りを捧げるための登山なんです。そうやって集う人たちは、何事にも真摯しんしに向き合っている感じがして、同じ空気を吸うだけで、自分の背筋もピンと伸び、それでいて肩の力がスッと抜けていく感じがしました。

――映画では、1300年以上の歴史を誇る国宝・當麻寺たいまでらの本堂内部が初めて撮影されました。塩崎祥平監督が奈良県大和郡山市出身で、今も奈良に在住しているからこそ実現できた映像だと、評判が高いですね。

 奈良には、本当に素晴らしい空気感がありました。それが、みなさんにも伝わればうれしいです。

(聞き手:読売新聞メディア局・永原 香代子、撮影:本間 光太郎)

陽月華(ひづき・はな)

 1980年生まれ。東京都出身。宝塚歌劇団で宙組トップ娘役を務める。2009年に退団。映画「駆込み女と駆出し男」(15年)や「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」(17年)などに出演。今年も「二階堂家物語」(1月25日公開)、「あの日のオルガン」(2月公開)など、出演作が次々公開予定。

【公開情報】「かぞくわり」2019年1月19日(土) 

         有楽町スバル座・TOHOシネマズ橿原ほか全国順次公開

映画「かぞくわり」から ©2018かぞくわりLLP

【ストーリー】奈良の地に現存する1300年以上の歴史を誇る寺。その寺には曼荼羅を一夜にして織り上げたという伝説の姫がまつられている。奈良のごく平凡な家庭で育ち、画家になることを夢見ていた香奈はこの姫の生まれ変わりだったが、画家になるという夢を親に拒絶された彼女は、38歳になっても定職にも就かずに両親とともに実家暮らしを続けていた。そんな香奈の前に現れた謎の青年が香奈を画家の世界へと導いたことにより、街全体を巻き込んだ大騒動へと発展。そして、ついに香奈の中に眠っていた姫の魂が目覚め始める。

脚本・監督:塩崎祥平
出演:陽月華、石井由多加、佃井皆美、木下彩音、松村武、竹下景子、小日向文世
企画製作:かぞくわりLLP 
配給:日本出版販売株式会社
クレジット:©2018かぞくわりLLP
公式HP:https://kazokuwari-llp.com/

【予告編(YouTube)】