ドラマ挿入歌「まっしろ」で注目・ビッケブランカさんが新譜

インタビュー

 シンガー・ソングライターのビッケブランカさんが、セカンドアルバム「wizard(ウィザード)」(avex trax)をリリースしました。疾走感あふれるロックから、ダンスミュージック、ポップソング、さらには持ち味のファルセットボイスを生かしたバラードまで、多彩な楽曲が詰め込まれています。新垣結衣さん、松田龍平さん主演の日本テレビ系ドラマ「獣になれない私たち」(水曜午後10時放送)の挿入歌「まっしろ」でも注目を集めているビッケブランカさんに、音楽への思いを聞きました。

ドラマのテーマを伝える手助けを

――アルバムの収録曲の一つ「まっしろ」は、切なくも美しいメロディーが印象的な冬のバラードです。「獣になれない私たち」の挿入歌に起用されていますが、どんな思いを込めてこの曲を作ったのですか。

 曲を作るに当たって、ドラマの第1話から5話ぐらいまでの台本を読ませていただきました。ドラマ全体の雰囲気や登場するキャラクター、特に新垣さんが演じる主人公(深海晶)の振る舞いなどを想像しながら、それらを引き立てるような曲を作りたいと考えました。だから、この曲には、僕自身の気持ちや伝えたいメッセージというのはないんです。あくまで、ドラマが伝えたいテーマを視聴者に伝える手助けをしたい。そんな思いで作りました。

――「wizard」は、どんなコンセプトで制作したアルバムですか。

 「冬」というのは、なんとなくぼんやりとしたテーマとしてあったけれど、コンセプトは特にありません。僕は、一つ一つの曲に対するこだわりはたくさん持っていますが、アルバム全体に関するこだわりはないんです。収録した12曲は、曲調にばらつきがあるし、関連性もないように思えるかもしれません。でも、どれも同じ人間が作った曲なので、聴いてくれた人には何かを感じ取ってもらえるんじゃないかと。

ビートルズはまったく聴かない

――音楽を始めたのは、両親の影響だそうですね。

 母の影響で、小学生の頃から1970~80年代の洋楽をよく聴いていました。例えば、ABBA(アバ)やカーペンターズ、ベイ・シティ・ローラーズ、それに「マイ・シャローナ」という曲が大ヒットした「ナック」といった辺りでしょうか。ギターは、父の影響でやはり小学生の頃から遊びで弾くようになって、同じ時期にピアノも始めました。不思議なことに、両親はどちらもビートルズは好きじゃなかったんです。だから、僕もそれを引き継いだのか、いまだにビートルズはまったく聴いていません。

 中学生、高校生のころはとにかくたくさん曲を作っていました。その後、大学進学のために上京し、その頃に初めてライブを開いたのですが、「なんだか曲を作っている方が楽しいな」と思って、また曲作りに没頭していきました。

――高校生の頃にバンドを組んだりしなかった?

 同級生と組んでみたことはあったけれど、そんなに楽しいとは思えませんでしたね。僕にとってバンドは「やりたいことがやれない場所」だったんです。例えば、バンドのメンバーに「ここは絶対にこうした方がいい」とアドバイスしても、「いや、俺にはこだわりがあるんだ」なんて言われて拒まれてしまう。そんなこともあって、バンド活動からは離れました。振り返ってみれば、小学生の頃から、やっていて楽しいと思えることだけをやってきて、今もその延長線上にいる感じです。いまだに楽しいと思えることだけをやらせてもらっている、本当に贅沢ぜいたくな状況なんです。

――「ビッケブランカ」という名前の由来は?

 ポルトガル語で「純真な海賊」という意味です。以前所属していた事務所の人の僕に対する印象が「粗暴」だったんです(笑)。何かと「そんなの違う。こんなの嫌だ」とギャーギャー言っていたから。でも、僕の話をよく聞いてみると、いたって真っ当だし、音楽に対して純粋な気持ちを持っていると。それで、粗暴な人間である「海賊」に「純真」という言葉を組み合わせて、「ビッケブランカ」に決まりました。

――ビッケブランカさんの大きな魅力の一つがファルセットボイスです。ファルセットを使うようになったきっかけは?

 地声が低いので、自分の声では届かない音域があって、曲を作る時に「なんとかならないものかな」とずっと思っていたんです。やはり母親の影響で、クイーンの曲もよく聴いていたのですが、ボーカルのフレディ・マーキュリーや、フレディの影響を受けたMIKA(ミーカ)というアーチストが、ファルセットを自分のスタイルにして歌っていることを知ったんです。日本だと、裏声で歌うとエキセントリックだとか、奇をてらっているように見られる風潮があるけれど、世界に名だたるアーチストのファルセットを聴いているうちに、「こうやって歌っていいんだよ」と教えてもらったような気がして、「じゃあ、僕も(ファルセットで)歌ってみよう」となったんです。それが今から7年ほど前、23、24歳ぐらいの時でしょうか。

「wizard」(avex trax) 通常版(CD)3000円 初回生産限定盤(CD+DVD) 3800円=いずれも税別

――作曲の際も、ファルセットのパートはかなり意識してメロディーを作っている?

 今はもう、ファルセットを入れるのは普通のことですね。地声だと「ピアノの鍵盤のここからここまでで曲を作る」となるところが、ファルセットを入れると、使える鍵盤の幅が広がります。その範囲で自由に曲作りをしているといった感じですね。

目的を決めずに前に進む

――来年1月から、全国7都市でライブツアーを行う予定です。ビッケブランカさんにとって、ライブとは?

 曲を作っている時は、聴いてくれる人のことはあまり考えていないんです。独りよがりで作っているので。でも、アルバムを引っさげてライブを開いて、幸いにして僕と同じように楽しそうな表情をしているお客さんを見ると、アルバムを作って良かったなと。自分のことだけ考えてアルバムを作ったけれど、一応は世の中にとって何らかの価値のあるものだったかもしれないと思わせてくれる場所がライブですね。

――アーチストとして、目指すところは何ですか?

 僕には、目的なしに歩き出すくせがあるんです。何か目的を決めてしまったら、そこへ向かう1本の道を歩き続けるしかありません。でも、目的がなければ、前に進みさえすれば、どんな道を歩いたっていい。どの道をたどるか、常に選択肢が開かれた状態にしておきたいんです。ただ考えていることは、次にリリースする曲が、今回のアルバムのどの曲よりも良いものであれ、ということだけです。それをずっと繰り返していけたなら、10年後にはどんな曲が出来上がっているだろう。そんなことを考えています。

(取材・読売新聞メディア局 田中昌義)

ビッケブランカ

1987年生まれ、愛知県出身。2014年7月、配信シングル「追うBOY」でインディーズデビュー。16年8月、配信シングル「Natural Woman」でメジャーデビュー。同年10月、ミニアルバム「Slave of  Love」リリース。17年7月、ファーストアルバム「FEARLESS」リリース。18年11月21日にセカンドアルバム「wizard」リリース。19年1月から、全国7都市で「WIZARD TOUR 2019」を行う予定。