篠原涼子さん、映画「人魚の眠る家」で“究極の母の愛”熱演

インタビュー

 母親の究極の愛を描いた映画「人魚の眠る家」(堤幸彦監督)が11月16日(金)に全国公開されます。原作は、東野圭吾さんが作家デビュー30周年を記念して執筆し、ベストセラーとなった同名小説。愛する子どもが事故で意識不明になり、回復の見込みがないと告げられた夫婦は、ある決断を下します。すべてを投げうって我が子を守り抜こうとする母親、播磨薫子を演じた篠原涼子さんに、作品の見どころなどを聞きました。

涙を流しても流してもまだあふれてくる

 ―――家族の悲劇に直面し、究極の選択を迫られたとき、どんな決断を下すのか……。重くて深いテーマの作品ですが、薫子役のオファーがあったとき、どんな気持ちでしたか。

 最初に原作を読ませていただいたときは、少し迷いました。私も子どもを持つ母親なので、もし同じことが起こったら、自分はどうなるだろう。そう考えてしまう自分の弱い部分がストップをかけたんです。でも、もう一度読み直して、やはり素晴らしい作品だと確信しました。悲しく切ないだけではなく、サスペンス的な展開もあり、最後は温かな感動にあふれていて、とても奥深い作品です。薫子は悩み葛藤し、様々な感情に揺れ動きます。約2時間の映画の中で、一人の女性がこんなにいろんな顔を見せる作品もなかなかないですよね。すごくやりがいのある役で、女優として、これを逃すのはもったいない、やらなかったら後悔すると思いました。ハードルは高いかもしれないけど、飛び越えたいと思い、オファーを受けました。

 ―――薫子は繊細な感情表現が要求される、難易度の高い役だと思いました。どのようにアプローチしたのでしょう。

 堤監督に「薫子はとても芯の強い女性」というアドバイスをいただきました。悲劇に振り回されても、希望を捨てずに子どもを守ろうとする薫子の芯の強さを、しっかりと観客に伝えられたらいいなと思って演じました。脚本家の篠﨑絵里子さんが、私をイメージして薫子を書いてくださったので、入り込みやすかったですね。

 ―――篠原さんはリハーサルから、周りが「大丈夫か?!」と心配するくらい、涙を流していたそうですね。

 涙を流しても流してもまだあふれてくる、そんなシーンが多かったんです。目が充血して、顔がむくんで、泣くのは体力を使うんだと知りました。撮影後はマラソンを走った後みたいに、どっと疲れが襲ってきて、ぐったりしていました。でも、毎日、現場に行くのが楽しくて、うれしくて。どういうふうに演じるか、想像するだけで幸せでした。原作の東野さんの魂だったり、脚本の篠﨑さんや堤監督の思いだったりが、そうさせてくれたんだと思います。現場の雰囲気もすごく熱くて、素晴らしい体験でした。

 ただ、舞台のように同じシーンを何回も演じたら、いろいろな薫子を見せられるんじゃないかという思いがあります。自分にはまだわからない薫子の感情が、やればやるほど出てくるのかなと思うと、何度でも演じてみたいですね。

仕事も家族も犠牲にしない

 ―――別居中の夫・和昌を演じた西島秀俊さん、最先端科学技術で娘の命を守る研究員・星野祐也を演じた坂口健太郎さん。2人の男性が薫子と関わります。西島さん、坂口さんの印象は?

 西島さんとは何度か共演しています。年も近いし、実生活で親であるという共通点もあって、子どもの話で盛り上がりました。すごく、明るくてチャーミングな方です。仕事に向き合う姿勢がかっこよくて、カリスマ性もあります。坂口さんは、笑顔がくしゃっとしてかわいくて、癒やし系。弟みたいな存在でした。彼はオーラがあって、ビジュアルもすてき。撮影後にモニターで確認すると、どの角度から見ても完璧なんです。うらやましかった!

 ―――篠原さんには2人の小学生の息子さんがいますが、映画の中で女の子のお母さんを演じていかがでしたか。

 男の子もかわいいですが、女の子もかわいい! 瑞穂役の稲垣来泉(くるみ)ちゃんは、演技は天才的で賢くて、かわいい! それに、女の子って、何だかいいにおいがするんです。会話も「ピンクが好き」とか、ほんわかしちゃう。男の子は「えーい」「わーい」「ぼーん!」みたいな感じ(笑)。それはそれで、不器用なところがかわいいんですけど。

 ―――息子さんはすごくやさしくて、お母さんを労ってくれるそうですね。

 そうなんです。ときどき、彼氏をやってくれます。「こっちにおいで。大丈夫だよ」って、頭をぽんぽんしてくれるんです。

 ―――うらやましい! お子さんと出演作を見ることはありますか。

 出演作も見ますし、ほかの映画もよく一緒に見に行きます。子どもって、わりと大人の映画も理解できるんですよ。上の息子は黒沢明監督の映画「生きる」が好きなんです。この前、「ミュージカル 生きる」を見て感動したらしく、家で映画を見返しています。好きすぎて、パッケージを絵に描き写したり、映画のセリフを書き留めたりしています。

 ―――息子さんの将来が楽しみですね。この映画は母親の究極の愛が描かれています。女性にとって、母になるというのは大きなターニングポイント。篠原さんは母親になったとき、人生観が変わったり、考え方に影響があったりしましたか。

 母親になって変わったとしたら、子どもができると、それが「勇気」になること。一人じゃないという強さや、ちゃんとしなきゃいけないという気持ちが湧き出て、「人のために何かしたい」と思うようになりました。自分の中で決めていたのは、結婚しようが子どもが生まれようが、仕事を犠牲にしたくない。そして、仕事のために家族を犠牲にしたくない――ということ。仕事も家族も言い訳にしない。自分の責任で前向きに取り組みたいと考えています。

 (聞き手:メディア局・後藤裕子 撮影:米田育広)

篠原涼子(しのはら・りょうこ)
女優

  1973年8月13日生まれ、群馬県出身。90年に東京パフォーマンスドールのメンバーとしてデビュー。94年にリリースしたシングル「恋しさとせつなさと心強さと」が大ヒット。90年代後半から女優として本格的に活動し、2006年に連続ドラマ「アンフェア」で主演。その劇場版第1作「アンフェア the movie」(07年)で映画初主演。近作に「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(18年)など。「ハケンの品格」(07年)、「ラスト・シンデレラ」(13年)、「オトナ女子」(15年)、「愛を乞うひと」(17年)などのテレビドラマにも多数主演。

【作品情報】
人魚の眠る家

 2人の子を持つ播磨薫子とIT機器メーカーを経営する夫・和昌は離婚寸前で別居中の夫婦。ある日、娘の瑞穂がプールで溺れ、意識不明になったという悲報が届く。回復の見込みがないわが子を生かし続けるか、死を受け入れるか。究極の選択を迫られた夫婦は、和昌の会社の最先端技術を駆使して前例のない延命治療を開始する。治療の結果、娘はただ眠っているかのように美しい姿を取り戻していくが、その姿は薫子の狂気を呼び覚ます。周囲の困惑をよそに、次第に薫子の行動はエスカレートしていく。それは果たして愛なのか、それともただの欲望なのか。過酷な運命を背負うことになった彼らに、衝撃の結末が待ち受けていた。

原作:東野圭吾「人魚の眠る家」(幻冬舎文庫)
監督:堤幸彦
脚本:
篠﨑絵里子
出演:
篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、田中哲司、田中泯、松坂慶子
(c)2018「人魚の眠る家」 製作委員会
公式サイト:http://ningyo-movie.jp/

2018年11月16日(金)全国公開