有働由美子さん、1日からZEROキャスターに リスクの大きい道を選んで 

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池谷美帆撮影

 NHKの顔として活躍した有働由美子さんが、1日から日本テレビ系のニュース番組「NEWS ZERO」(月~木曜午後11時、金曜午後11時30分)のメインキャスターとして再始動します。50歳を目前にNHKを退局するという人生の大きな選択をした有働さんに、現在の心境や働く女性たちへのメッセージを聞きました。ときに目を潤ませ、ときに答えに迷いながら、有働さんらしくホンネを語ってくれました。

 職員証を返して押し寄せる不安

――なぜ49歳でNHKを退局されたのか、改めて教えてください。

 入社したときから昨年くらいまで、全く辞めるつもりもなくて、1社で一生を全うしたいと思っていたんです。でも2年ぐらい前に、編成や人事などの業務はどうかと言われて。いつまでも若手のつもりでいましたが、組織人として現場の第一線にい続けるというのは、もうわがままな年齢になっていたんですね。

 でも、もうちょっとだけ、自分のことだけ考えて、やりたいように現場で生きたい。定年してからというのでは、やっぱり同じ現場でも違う。えいやっていう感じでしたね。

――退局後はどんな気持ちでしたか。

 気持ちよく3月31日に退局しました。だけど職員証を返したとき、帰りにすごく不安になったのを覚えています。これでよかったんだっけ、と。ずっと組織にぶら下がっていたわけじゃないですか、保育園の頃から。「辞めたら解放される」って聞いていたんですけど、いやいやいや、職員証を取り返しに行きたくなるような不安な気持ちでいっぱいになりました。何かの所属から離れるというのがこんなに不安なのだと、初めて知りました。

 南スーダンの少女に気づかされたこと

――このままではいけないと、旅に出たそうですね。

 東日本大震災の被災地、イスラエル、西日本豪雨の被災地。南スーダンの難民居住区やカンボジアにも行きました。

――特に印象深かった場所や人は?

 南スーダンの難民居住区で16歳の女の子に話を聞きました。内戦で、母親の消息はわからないまま、避難途中で男性に……。会ったときは妊娠4か月でした。難民居住区には様々な支援がありますから、「ここに来ていいことはあった?」と聞いたら、「何もない」と。将来の夢もないと言うんです。

 今、アフリカのニュースを聞けば、きっと彼女のことが思い浮かぶ。それって実は大事だったんじゃないかな、頭でっかちになっていたなと、気づかせてもらった感じがします。

「男性社会脳」になっている自分を問い直す

――肩書は、ジャーナリストではない?

 入局したときに「アナウンサーもジャーナリストたれ」という勉強をし、キュウリを買うにしてもそういう視点でものを見るようにと学んでいました。なので、自分はジャーナリストなのだと思っていました。セックスレスや離婚の問題を取り上げるときも、ジャーナリスティックな視点で見なきゃと。政治や経済だけでなく毎日の生活が大事だよね、ということを声高に言ってもいい時代になっている。そこはもっと言っていかないとダメですよね。こっちのニュースの方も大事じゃんって。

――新しいタイプのジャーナリストとしてのスタートに、期待しています。

 それがもうこの年だと、「男性社会脳」になっているじゃないですか。今、自分の価値観を壊すのに一生懸命です。若い頃、私が「違うでしょ、おじさん」と思っていたようなふうになってしまっていて。面倒だから、そっちに合わせちゃってて。

 例えば、セクハラって、男性が女性にするものと思いこんでいて。でも、若い男性に「あなたどうなの彼女は?」って聞いている自分は、よく考えたらセクハラじゃん! 社会に問うより、今自分を問うています。

バッシング覚悟で臨む

――番組ではSNSを使った「会話」も予定されていますね。

 私の古い価値観も言ってみて、バッシングされたらそれもいい。皆さんからの意見を番組に反映させます。番組終了後、SNSを活用してライブ配信をし、意見をもらう。私の価値観がフックになって、皆さんが価値観やニュースを考えたりしてくれたら。

 たたかれないように愛されるようにやると、丸くふわっとやっちゃうと思う。それだったら、私は要らないかなって。堂々と言って、堂々とたたかれて、私が自分の価値観を変えていけばいい。そういうニュース番組の発信者になれればと思っています。

――民放での仕事を始めて、何か驚きはありますか。

 視聴率表がありとあらゆるところに貼ってある。しかも、他局との比較も。NHKも視聴率を大事にするんですけど、そんなにあからさまではないので、民間企業に来たんだなと思いました。

 それと、NHKでロケに行くときはディレクターがかっちり(流れを)作ってくるんですけど、民放は出る人に任せてくれる。「どうぞ自由に」って。最初は、それに戸惑いました。リハーサルもNHKよりずっと少ない。リハがなくて、いきなりもう始めるんですかって、不安になる。1回おさらいさせてくれ、と。

恋愛や結婚は面倒!?

――深夜の番組に出演すると、生活時間が変わります。結婚や恋愛はどうなりそうですか。

 男性として好きな人はたくさんいるんですけど、大抵がものすごい年上で、80歳以上とか。犬を飼いだしたら、そういう欲が本当になくなりましたね。自分のことがよくわかってきたので、面倒くさいんでしょうね。我慢したりできない。「仕事のことがしたいのに、この人がいるから仕方がなく時間を過ごしているけど、とってもイライラが募っている」みたいなのがリアルにわかっちゃうので、そう思いながら一緒にいるのも相手に申し訳ないし。今のところはないですね。

――仕事における自分自身の変遷を教えてください。そして、50代をどう過ごしたいですか。

 20代はただ必死。30代は肩ひじ張っていました。ちょっとできるようになって、負けたくない、社会に認められたいというのがありましたね。40代になってようやく、自然体っていうものが見えてきたかな。ここから楽しみです。30年かかって、やっと仕事が自分の形でできる。

 だから、若い子から辞めたいと相談されると、その気持ちすごくわかるけれど、働くことは続けた方がいいと言います。若い頃は苦しいし悲しいし、人間不信になったりもするけれど、40代後半からは楽になるから。

 リスクのある選択を

――若い世代の働く女性たちに助言を。

 2択があったら自分に負荷の多い、危ない道を選んだ方がいい。そのときはこけるかもしれないし、一生の汚点だとか失敗だとか思うかもしれないけれど、メリット、デメリットではなく、リスクが大きい、挑戦的な道を選んだ方が私はよかったですね。

 周りがどう思うかではない。長い人生を考えると、人の意見で生きても誰も責任とってくれないですから、自分がやりたいことは何なのか、自分は本当はどう思うのか、ということを考えていないと、自分がわかんなくなっちゃう。私もそういう時期があって、振り返ったときに空白なんですよね。成長もしたようでしてないし。あの時代を取り戻したいという反省も含めて、自分がどう思うのかを大事にしてほしいですね。

記者発表での有働さんと共演者

――「視聴者との会話」と有働さんの「ホンネ感」が、新しい「NEWS ZERO」のコンセプトだそうですね。自分の言葉で、ホンネで語るのは責任が伴います。

 重いことです。ただ、間違わないようにしようとすると、何も言えなくなる。放送で正直というのが一番難しい。盛らずに引かずに等身大でしゃべって、そこが間違っていたら謝る。27年間テレビの世界でやらせていただいたので、仮に失言で「もう出てくるな」という話になっても仕方がないよね、という覚悟でいます。

 夜11時のニュースは何があってもZEROを見てもらえるように、視聴率というより、「つけていると何か考えちゃうよね」という番組にしたいです。

(聞き手:読売新聞・大手小町編集長 小坂佳子)

有働由美子(うどう・ゆみこ)

 1969年鹿児島県生まれ。大阪育ち。神戸女学院大学卒。91年NHK入局。ニュースやスポーツ番組のキャスターのほか、紅白歌合戦の司会も務めた。2007~10年、ニューヨーク特派員。10年から「あさイチ」のキャスター。18年3月、NHK退局。10月から日本テレビ系「NEWS ZERO」のメインキャスターを務める。