「おいしい女」になるヒント

インタビュー

 映画「食べる女」が9月21日に公開されます。映画に出演しているタレントの壇蜜さんと、原作者であり脚本を執筆した筒井ともみさんに、映画の見どころや、恋に仕事に悩み多き女性たちへのメッセージなどを聞きました。

しずる感が心を動かす

――――小泉今日子さん演じる雑文筆家で古書店主の敦子(トン子)が、おいしい料理で迷える女性たちを家に迎え入れます。男を寄せ付けない編集者や、料理ができなくて夫に逃げられた主婦など、年齢、職業、価値観の異なる8人の女性たち。孤独を感じながらも幸せを模索する日々が、おいしいそうな料理とともに描かれます。

(C)2018「食べる女」倶楽部

壇蜜さん:臨場感というか、「しずる感」のある映画だと感じました。出てくるものすべてが「食べたいな」「作りたいな」と思わせてくれる。要所要所で枯れた井戸が出てくるのですが、井戸のよみがえり方に女性たちの立ち直りがリンクしているのかな、と感じました。男性との関係で傷ついたり悲しんだりしてきた人たちが、最終的には食を通じて笑顔になっていく。私もそうなれるかな、という説得力がありました。

筒井さん:「多様性は可能性」と、いつも言っています。いろんな人がいて、いろんなやり方がある。登場人物の女性たちも多様です。映画では実はみんな大して幸せになっちゃいないんですけど、「まあいっか、とりあえず食べてから考えよ」ってなる。「女の子たちが食べることからひそやかに始めるレボリューション」というメッセージを込めました。この世界が、今よりもちょっとでも優しくてタフになったらいいですね。

――――夫とは別居中で、2人の子供を育てながら耳のパーツモデルをしている。壇蜜さんが演じた「ツヤコ」の役柄について、どのように受け止めましたか。

壇蜜さん:子供がいるけど身ぎれいにしている人で、“おっかさん”じゃない人。仕事も子育てもしながら、おしゃれとか自分自身のしたいことをあきらめてない人ですね。旦那さんは彼女に妻としての魅力とか、母としての魅力を見いだせてなかったから出ていっちゃったのかな。

筒井さん:女優さん8人のキャスティングは、すんなり決まったんです。だけど、男優陣は大変でしたね。この話の本質をわかってもらうのに苦労しました。

「おいしくなーれ」が隠し味

――――映画の冒頭から、おいしそうな料理がたくさん出てきて、思わず私も映画の中に入りたいと思ってしまいました。

筒井さん:撮影中に、女優さんたちがすごく食べてくれて。一番人気はアジのサワークリームあえでした。どれも私が普段から作っている料理で、すべて簡単ですよ。砂肝とポロネギのソテーも人気だったな。

壇蜜さん:私はあまり、食べるチャンスがなかったんです。映画を見て、すぐに作ったのは手羽先焼き。

筒井さん:あの料理は、吉本ばななさんのお姉さん(漫画家のハルノ宵子さん)に、「おいしい料理を教えて」と頼んで教えてもらったものなんです。そのときは二つ教えてくれて、一つはお豆腐を水切りして炊きたてのご飯に載せるだけの料理でした。塩かしょうゆをかけると、すごくおいしいですよ。もう一つ教えてもらったのが、手羽先のグリル。焼くだけなんだけど、コツは塩を使うことと、「おいしくなーれ」と言いながら塩をもみ込むこと。

壇蜜さん:「おいしくなーれ」は大事ですよね。メイドカフェでもやってますから(笑)。私もそうやってから焼きました。

おいしい女とは 

――――映画のチラシに「おいしい女になるヒントここにあります」と書いてありました。「おいしい女」とは、どういう女性のことを言うのでしょうか。

壇蜜さん:まずいことをしない女でしょうね。やりこめない。攻撃をしすぎない。群れたり、復讐ふくしゅうしたりしない。今の世の中からしたら、「格好つけちゃって」とか「本当はグチりたいくせに」とか言われても、唇をかんで前を見るような人が実は味を持っている人、おいしい人だと思っています。

筒井さん:まず自分を精いっぱい楽しめる人かな。

――――原作の出版から10年以上たっての映画化です。映画化までに曲折があったのですか。

筒井さん:映画やテレビの関係者から「わかりにくい」と言われてしまって。いろいろなところに断られました。テレビ局は全部の局に断られましたから、それを自慢にしたいくらい。映画もテレビも今ではわかりやすいことが第一条件になっている。

壇蜜さん:世の中にはわかりやすくないことも存在するのに。わかりやすさが求められるのは、それだけ想像力がなくなったということでしょうか。

筒井さん:ふとしたきっかけで、一番「らしくない」東映で決まりました。昔、任侠にんきょう映画で売った会社でしょ。今度のポスターなんかもすごいの、東映としては。

壇蜜さん:確かに東映の映画が始まるとき、波がダダーンと打ち寄せる。あれがすべてを物語っていますよね。うちは硬派ですよ、軟派じゃないですよ、ってね。

ごはんを食べて、誰かを好きになる

――――最後に、一言ずつメッセージをお願いします。

壇蜜さん:問題作です。全米が泣くかどうかわからないけど、見た人のおなかは鳴らすことができる。この映画を見た後、強い衝動が生まれます。なぜかといえば、「あなたはここにいていいし、いるべき人だ」というメッセージが伝わり、「また明日生きてみよう」って思える。そういうすごくわかりやすい気持ちが芽生える映画だと思います。まさかの東映映画です。

筒井さん:みんなバラバラだけど、みんながささやかな自分のために生きている。見終えたときに、「さ、今日これから何を食べに行こう」って思ってくれたらうれしいし、「誰かを好きになるのもいいかな」と思ってもらえたら。

壇蜜さん:確かに好きになろうかなって思いますね。不器用ながらも人を好きになる感覚はまだ残ってるよねって、みんなにあるんだよねって、思える映画です。

筒井さん:おなかが鳴るってことは、魂のいいところも鳴ってくれるはず。映画を通して、女の子たちが元気になってくれたらいいですね。

筒井ともみ(つつい・ともみ)
脚本家、作家

 映画「失楽園」「阿修羅のごとく」や、テレビドラマ「家族ゲーム」など、多数の脚本を手がけている。小説やエッセーなど著書多数。8月末に「食べる女 決定版」(新潮文庫)を出版。

壇蜜(だんみつ)
タレント

 1980年生まれ、秋田県出身。グラビアモデルとして芸能活動をはじめ、現在はテレビやラジオへの出演、執筆活動と幅広く活躍。女優としても、テレビドラマや映画『関ヶ原』(2017)、『星めぐりの町』(2018)などに出演している。

【映画情報】

(C)2018「食べる女」倶楽部

「食べる女」

 8人の女性たちの「食」と「性」をめぐる物語。年齢も職業も価値観も違う女性たちが、恋愛や仕事に悩みつつ、おいしいご飯を食べながらそれぞれの幸せを模索していく。

出演は小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子、広瀬アリス、山田優、壇蜜、シャーロット・ケイト・フォックス、鈴木京香ら。
原作、脚本:筒井ともみ
監督:生野慈朗

9月21日公開。