夫婦デュオ「ハンバート ハンバート」支え合い、結成20周年

インタビュー

「ハンバート ハンバート」の佐藤良成さん(右)、佐野遊穂さん

 ぬくもりのあるアコースティック・サウンドが幅広い年齢層に支持されている夫婦デュオ「ハンバート ハンバート」(佐藤良成さん、佐野遊穂さん)。その歌声は、「アセロラ体操のうた」などのCMソングで耳にしたことがある人も多いはずです。2018年には結成20周年を迎えて、7月25日に記念アルバム「FOLK 2」(スペースシャワーミュージック)をリリースします。音楽のパートナーとして、夫婦として支え合う佐藤さんと佐野さんに、新作への思いや夫婦の絆について聞きました。

記念アルバム「FOLK 2」リリース

――「FOLK 2」はどんな経緯で作られたのですか。

佐野さん スタッフから「結成20周年を記念してレコーディングをしよう」という話が出まして。2年ほど前に出した「FOLK」というアルバムの評判がとても良かったので、「それじゃあ、記念盤として『FOLK 2』を」という流れになりました。

――「FOLK」は全曲、ギター弾き語りでしたが、今回のパート2では、ギターのほかに、ピアノやバイオリンなども使われています。カバー曲が多くて、荒井由実「ひこうき雲」、井上陽水「クレイジーラブ」、森高千里「渡良瀬橋」などバラエティーに富んだ選曲ですね。

佐野さん ライブではカバー曲を積極的に取り入れています。「FOLK」の時に、収録曲の半分をオリジナル曲、半分をカバー曲にしたら、アルバムとしての構成バランスがすごく良かったので、今回も同じバランスにすることに決めました。

佐藤さん 今、僕たちは2人だけでライブを行うことがほとんどなのですが、これまでアルバムに収録してきた曲は、だいたいバンド編成なんです。だから今回は、僕たちが今、ライブで演じている音に近いアレンジにしてアルバムに収めたいという思いがありました。

――唯一の新曲「永遠の夕日」は、年をとってすっかり白髪になってしまった男性が、若かりし日に恋をした女性を思い出すという内容です。老境に入った男性の思いを歌にしたのはなぜですか?

佐藤さん デビュー以来、自分の身の回りの出来事などを詞にしてきたので、以前なら、このような歌を作ることはなかったと思います。おかげさまで僕はまだそんなに白髪はないけれど(笑)、今年で40歳になりました。今誰かと恋をしているという曲ではなく、過去の恋を振り返る曲ができたのも、年齢を重ねるとともにそういう視点が生まれてきたからだと思います。若い頃は、過去を振り返ることなんてありませんでしたから。

最後に残ったバンド仲間

――バンドは元々、佐藤さんが大学時代に結成して、メンバーが就職などで次々とやめていくなか最後まで残ったのが、佐藤さんと佐野さんだったのですね。

佐藤さん 他のメンバーの様子を見ていて、「えっ、みんな、就職活動するんだ?」ってビックリしましたね(笑)。みんな音楽をやりたいからやっていると思っていたのに、そうじゃなかったのかと。俺は音楽しかやりたくなかった。例えメンバーがやめても、俺はやめるつもりはありませんでした。ただ、もしも俺一人きりになっていたら、どうなっていたか分かりません。幸い、彼女が残ってくれたので。

――「ハンバート ハンバート」という名前は、ロシア出身の作家ウラジーミル・ナボコフの小説「ロリータ」に登場する大学教授、ハンバート・ハンバートが由来だとか。

佐野さん いくつかバンド名の候補を挙げて、消去法で最後に残ったのが「ハンバート ハンバート」でした。彼(佐藤さん)が大学でロシア文学を学んでいて、授業で「ロリータ」を読んだことがあったので、この名前を候補に入れておいたのだそうです。

親になって作詞に影響

――デビュー20周年を迎えた今の心境は?

佐野さん 長年、活動を続けていると、仲たがいをして解散してしまうバンドも多いと思うけれど、自分たちは20年間続けてこられました。それは、運が良かったのと、スタッフをはじめ、周りの人たちに恵まれたからだと思っています。

――運が良かったとは?

佐野さん 私は元々「ミュージシャンになるんだ!」と決意してバンドに入ったわけではないんです。たまたま誘われて「ああ、いいよ。楽しそうだから、やるやる」みたいな軽いノリで(笑)。でも、歌を歌う、声を発することは本当に楽しくて、それを仕事にできた自分はラッキーだなって。

佐藤さん 向いている仕事が見つかってよかったね(笑)。自分はただただ音楽をやっているうちに、こうやって時間がたっちゃったという感じで、20周年を迎えるなんて、思いも寄らなかったです。人生のちょうど半分を「ハンバート ハンバート」に懸けてきたことになるので、とても感慨深いですね。

――バンド仲間として出会って、やがて恋人同士となり、結婚し、子どもが生まれ……と、20年間で2人の関係性が変化してきたわけですが、その変化は音楽にも影響を与えていますか。

佐藤さん 状況が変わると、見えること、思うことも変わってきます。特に、子どもが生まれて親になったことで、それまでと考え方が変わって、歌詞作りに大きく影響しました。音楽的には、彼女と長く一緒にいることで、彼女の声をどう生かすべきか、2人の声をどう合わせたらいいのかといったことが、自然と分かるようになりましたね。

――お子さんは3人でしたね。

佐野さん 10歳、7歳、4歳で、3人とも男の子です。

――ツアーで家を空けることも多いと思いますが、お子さんたちの面倒は?

佐野さん 両親に面倒を見てもらったり、いろんな子育て支援のサービスを利用したり。

佐藤さん 上の子どもたちは留守番ができるようになったので、だいぶ楽にはなったけれど、一番下の子はまだ小さいので、親に預かってもらうか、家に来てもらうか、という感じですね。

――仕事でも家庭でも、いつも一緒なのですね。

佐野さん いつも一緒なので、相手にとって今、何が大変なのか、大変なことにどう取り組んでいるのかが、お互いによく分かるんですよ。たとえば、けんかをしても、数日後に曲作りの締め切りが迫っていれば、お互いに「けんかをしている場合じゃない」となります。

佐藤さん 明日がライブという時にけんかをして、それでも2人でライブの準備を進めなければいけないこともあるもんね(笑)。

佐野さん 夫婦が家事の分担を巡ってもめることってよくあると思いますが、私たちには「家事はとにかく短時間で効率的にやらないと仕事にも影響が出る」という共通認識があるんです。今、自分が何をやるのがベストなのか、それぞれ考えながら行動しているので、家事でもめることはないですね。

60歳まで続けたい

――今後の目標は?

佐野さん 60歳まで「ハンバート ハンバート」を続けることです。あと18年。その先はどうなるか分からないけれど、とりあえず「60歳まで」が目標です。

佐藤さん 彼女がそう言う以上は続けていこうかな。曲を作る時はいつも「課題はすべてクリアする」という気持ちで作っているのですが、どれだけ曲を作り続けても、課題が尽きることはありません。今までもずっと「次はもっと良くしたい、もっと良くなるはず」という気持ちでやってきたので、これからもそんな感じで続けていきたいと思っています。
(聞き手・読売新聞メディア局 田中昌義)

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ハンバート ハンバート

佐藤 良成(さとう・りょうせい) 1978年生まれ、神奈川県出身。担当はボーカル、ギター、フィドル(バイオリン)ほか。佐野 遊穂(さの・ゆうほ) 1976年生まれ、東京都出身。担当はボーカル、ハーモニカほか。1998年に「ハンバート ハンバート」を結成。2001年にCDデビュー。映画「包帯クラブ」(2007年)、「プール」(09年)で劇中音楽や主題歌を担当し、「おかあさんといっしょ」などの子供番組や人気アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」(16年)にも楽曲を提供。CM ソングは「アセロラ体操のうた」が話題になり、現在も「ミサワホーム」などのCMが多数オンエア中。