永瀬正敏、岩田剛典 映画「Vision」に出演 神秘の山を守る

インタビュー

見終わってしばらくしてから「震えた」

 河瀬直美監督の最新作「Vision」(6月8日公開)は、フランスの名女優ジュリエット・ビノシュさんと永瀬正敏さんがダブル主演する映画です。河瀬監督の故郷である奈良に長期滞在して、アートのように美しい森の中で木とともに生きる男を演じた永瀬正敏さんと岩田剛典さんに撮影秘話や見所を聞きました。

――本作は、ビノシュさん演じるエッセイストが山深い森を訪ねて、永瀬さん演じる山守のともや、岩田さん演じるりんと出会う幻想的な物語です。永瀬さんは、「あん」(2015)と「光」(17)に続き“河瀬組”3作連続主演です。完成した映画を見た感想は?

永瀬正敏さん 前作二つは試写を見終わったあと、しばらく立ち上がれませんでした。今回は、すぐに立ち上がって監督とおしゃべりしたり、食事に行ったりできたのですが、しばらくしてから、わーっと体が震えました。なぜなのかは今でもわかりません。あー、これは後から来るやつなんだなと。3作目で初めての経験でした。

寝起きのまま撮影開始

――岩田さんは初めての河瀬作品への出演ですね。いかがでしたか?

岩田剛典さん 去年の「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2017」で河瀬監督とお会いして、今回の作品のお話をいただきました。いやー、未経験のことばかりで、いい意味で「洗礼」を受けました。奈良の地に降り立った時からもう監督、現場のスタッフ、演者たちの目の前には「岩田剛典」はいなくて、「鈴」として扱っていただいた。役を演じるのではなく、自然と鈴として生活して、日常生活の経験も役になっていく現場は初めてでしたね。朝、ぱっと目が覚めた時からカメラが構えられていて、いきなりノーメークのまま撮影が始まっていくんですよ。すべてが新鮮で神秘的でした。

――現地でリアルに暮らしながら役に入る「河瀬メソッド」ですね。河瀬組初体験の岩田さんへのアドバイスは?

永瀬さん 普通の撮影は何度かリハーサルを重ねて監督の「スタート」という言葉でお芝居が始まり、「カット」で終わるのですが、それが一切ない。そういうのはあらかじめ「驚かないでね」と言いました(笑)。

――エグゼクティブプロデューサーとしてエグザイルのHIROさんが名前をクレジットされていますね。

岩田さん 「気合入れてがんばってこい」と激励されました。

永瀬さん クランクインの前日にお会いしたのですが、「うちの岩田をよろしくお願いします」とあいさつされました。

――「山守」というあまり一般にはなじみの薄い職業の役でしたが。

永瀬さん 僕はクランクインする前から現地に入って、実際の山守さんに家系図から見せてもらって、「山守とは?」というところはもちろん、吉野の山の大切さを教えてもらいました。チェーンソーの講義を受けて、枝打ちや伐採の仕方もレクチャーしてもらいました。僕の役・智が、今苗を植えても、成長する木を見届けることはできません。山守は未来に向けて何かを残す仕事で、代々受け継いでいかなければならない大切な歴史を学びました。

スタントなし、ロープ1本で木に登る

――普段の岩田さんは「都会っ子」のイメージですが、山守の役作りは?

岩田さん 山守は特殊技能で、ロープ1本で体を支えて器具を使わずに、10メートルぐらいの高さまで、自力で木に登るんですよ。結構高いところに上って、ロープでぶら下がる。まるで無重力に近いような状態で、最初はバランスをとるのも、体を縦に起こすのも難しかったです。撮影がない日も付きっきりでレクチャーしてもらいました。監督からも「吹き替えはなしで」と言われていたので、のこぎりを使ったり、木に登ったりするのもスタントなしでやりました。まき割りは永瀬さんに教えてもらいました。日ごろのダンスやトレーニングとは違った筋肉を使うので、筋肉痛で足がパンパンになりました。

――撮影中、大変だったことは?

永瀬さん 木に登るのもそうですが、寝て起きるともう、朝から撮影隊がカメラを構えているという状態でした。智の小屋は雨が降ると、地滑りが起きるような場所で、ダムの取水が止まると水道も止まっちゃうんですよ。そんなトラブルがいっぱいありました。

いつかはハリウッド進出も?

――ビノシュさん演じるフランス人エッセイスト・ジャンヌと英語で会話するシーンがありましたが。

永瀬さん 大変でした(笑)。難しかったのは、完璧に台本にあるセリフを覚えるだけではなく、監督から「智の気持ちになってジャンヌに聞いてみて」と言われました。逆に「アドリブでジャンヌに答えてみて」とも言われました。自分の英語力のなさを痛感しました(笑)。

岩田さん 僕も全然だめで……。

永瀬さん 君は、頭いいだろ~?

(c)2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.

岩田さん いやいや(笑)。鈴は口数が多くない役でしたが、それでも大変でした。何度も現場で「(自分の英語)大丈夫ですかね?」って聞いていました。試写ではそればかり気になりました。

――ビノシュさんから、「あなた、英語を覚えて世界に出たほうがいいわよ」って言われたそうですね。今後ハリウッド進出は?

岩田さん こういう仕事を突き詰めて行ったら、いつかは挑戦したい夢のひとつではありますね。そういうお言葉をいただけたことを胸に受け止めて、いずれそういう“Vision”も自分の中でイメージしていけたらなと思います。

(c)2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.

――永瀬さんはビノシュさんとの共演シーンがたくさんありましたが、どのようなお話を?

永瀬さん すばらしい女優さんでした。でも、“河瀬メソッド”では、気軽に岩田君と話すのもダメで、もちろん智としてジャンヌと話すのはいいけど、他の人も含め、役者同士の私語も禁止されていました。最初撮影に入られた時、ジュリエットに話しかけられたり、食事に誘われたりしましたが、僕はずっと智でいないといけないので、一人で食事をしていました。きっと「どうした?永瀬くーん?」と思われていたと思います(笑)。

――岩田さんはどのような印象を?

岩田さん とてもクリエイティブな女優さんだと思いました。自分からどんどん監督に対して提案していましたし、自分自身のアイデアも持って現場に入ってこられて、とてもプロフェッショナルでした。当たり前なのかもしれませんが、ひとつのシーンをよりよくするために、「こういうふうにした方がいい」と何度もディスカッションしていました。

――目の見えない神秘的な老女、アキ役の夏木マリさんの演技にも圧倒されました

(c)2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.

永瀬さん 本当に1000年生きていたかもしれない(笑)。以前お会いしたときはお話ししましたが、現場に入ってからはお話しできませんでした。

――猟犬として智と一緒に暮らす愛犬「コウ」とのシーンも印象的でした

永瀬さん かわいかったですね。いまだに恋しいです。連れて帰って来たかった。「コウ」は、タレント犬ではなく、地元に住んでいる猟犬なんですが、「コウ」に山のことを教えてもらった気がします。

――最後に映画の見所を

永瀬さん 試写で僕が体験したおどろきを実感してほしいです。最初に見たときと、次に見たときでまた感想が違ってくると思う。1年後、10年後、見るたびに未来に向かって成長していく作品だと思います。ぜひ、劇場で体感してください。

岩田さん まず、吉野の森が本当に美しい映像です。ストーリーはシンプルではありませんが、難しくはありません。見たらきっと懐かしい誰かに会いたくなると思います。登場人物みんな、自分の中で欠けている、パズルのピースを探している。最後に答えを見つける。そこは見る方にとって、ぐっときて、共感してもらえるポイントだと思います。神秘的でアートに近い美しい作品になっています。

――山守になりきった岩田さんを見て、ファンは驚くのでは?

岩田さん ファンは僕だと気がつかないかもしれない(笑)。

永瀬さん ワイルドガンちゃんを見に来てください(笑)。
 (聞き手:メディア局・遠山留美、撮影;金井尭子)

(c)2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.

公開情報:映画「Vision(ビジョン)」6月8日(金)から全国公開
配給:LDH PICTURES 監督・脚本・編集:河瀬直美
出演:ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏 岩田剛典、美波、コウ、白川和子、ジジ・ぶぅ、森山未來、田中泯、夏木マリほか

公式サイト:http://vision-movie.jp/

永瀬正敏 (ながせ・まさとし)

1966年7月15日、宮崎県生まれ。映画「ションベン・ライダー」デビュー(1983)、「あん」(2015)、「光」(17)ほか。29年度芸術選奨・文部科学大臣賞受賞

岩田剛典 (いわた・たかのり)

1989年3月6日、愛知県生まれ 2010年「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE」のパフォーマーとしてデビュー。
主な出演作品:映画「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」(16)、映画「去年の冬、きみと別れ」(18)、ドラマ「崖っぷちホテル」(日本テレビ系)(18)など。現在EXILE(14~)と三代目 J Soul Brothersを兼任して活動中

【予告編】(YouTube)