映画「友罪」、佐藤浩市さんが演じる加害者家族の「十字架」

インタビュー

 心を許した友が、かつて日本中を震撼しんかんさせた“あの事件”の少年Aだったら――。衝撃の問題作「友罪」(薬丸岳・集英社文庫)が映画化され、5月25日(金)に全国公開されました。物語の要となるタクシードライバー山内を演じる佐藤浩市さんに、撮影エピソードや映画への思いを聞きました。

贖罪を背負った男が選んだ道

―――主人公は、元週刊誌記者で、今は町工場で働く益田純一(生田斗真)。同僚の鈴木(瑛太)と友情を育みますが、彼は17年前に児童殺傷事件を起こした少年Aでした。この2人の物語と並行して、息子が起こした交通事故で家族が離散し、贖罪しょくざいの日々を送るタクシードライバー山内の物語も描かれます。「加害者の家族」という難役をどのような気持ちで演じましたか。

 瀬々ぜぜ(敬久)監督は「重いテーマで……」と言っていたけれど、ぼくは「重い」とは思わなかった。物事を多面的に見なくてはいけなくて、この映画で僕がスポットをあてるのは「贖罪」の念だと思ったんです。息子の罪を償うために、家族として常に「贖罪」を抱えて生きていく。幸せそうにしてはいけない。笑ったところを見られてはいけない。それが加害者とその家族が背負った十字架、と、山内はそういう生き方しかできない男なんです。

―――山内は責められるのを覚悟で遺族の元を訪れますが、遺族は「独り善がり」と彼を断じます。

 山内の贖罪が遺族に伝わった瞬間に報われるものなら、それでいい。ですが、報われることはないんですよ。加害者の家族も苦しいだろう。でも、被害者のことを思えば、遺族はそれをわかってあげるわけにはいかないんです。そういう複雑な思いを、遺族は抱えている。山内のやっていることが正しいのかどうか、それは誰にもわかりません。でも、彼はその道を選んだ。それしかできなかったんです。

少年Aがラストで見せる圧巻の表情

―――瀬々監督の「64―ロクヨン-」では、鈴木役の瑛太さんとも共演していました。「友罪」では、ほとんど絡みはありませんでしたが、完成した作品を見た感想を教えてください。

 いまの若い人たちって、毛羽立ってないというか、肌触りがよくてさらっとしてますよね。毛羽だったりザラついたりするのは、かっこ悪くて恥ずかしいと思っているのかな。でも、触感が悪くてもいいじゃないか。毛羽だったところから伝わるものがあるはずだって、信じてやってみればいいのに。ぼくは、そう思っているんですよ。今回の瑛太、映画の初っぱなは、「おいおい大丈夫か、そんなに走って」と思ったんですけど、終盤、ちゃんと収束した。そして、ラストのあの表情。すばらしかったよね。すごく毛羽立ってた。あの表情ですべてを抱き込んだ。演じきったんじゃないかと思う。瑛太、「勝負に出たな」って。

最後に少しだけ明かりを灯した

―――瀬々監督作品は4作目。監督やスタッフとのチームワークもよいと聞きました。

 ぼくは瀬々監督とは話し合いとかしないの、ぜんぜん。例えば、山内の職場に遺族が訪ねてきて、「子どもを返せ」と泣くシーンがある。そのとき、山内はどうするのか。ぼくは、形骸的に接したいと思った。「大丈夫ですか」と言いながら背中にそっと触れるんです。そんな感じでいいかなって監督に聞いたら、「勝手にやってください」と。「じゃあ、勝手にやるよ!」。ずっとこんな感じかな(笑)。

―――すごく信頼されているのを感じます。監督は原作の設定を変え、山内のエピソードを膨らませています。何か意図があったのでしょうか。

 群像劇として、いくつもの視点で描きたかったんだと思います。犯罪に直面した様々な立場の人間を描くことで、見せ方を変えたかった。見る側の人たちにどんなボールを投げようか。受け取りやすいところに投げるのか、受け取りにくいところに投げるのか。いろんな形のキャッチボールをしたいという……。

―――映画では、登場人物それぞれが岐路に立ちます。これからどうなるのか、見る側に委ねられた気がしました。

 薬丸さんの原作がそういう物語であるし、瀬々監督のこれまでの作品も解答のないものが多いんです。最後は、自分の中でどう受け止めるのか。山内でいうと、償い続ければ、いつか「もういいよ」と言ってくれるかもしれない。愚かだけど、そういう保守的な道を選んだわけです。でも、息子は父親と違う道を選ぶ。山内は何のために家族を解体したのかと激高しますが、心のどこかで息子には違う生き方をしてほしかった。だから、息子が下した決断を受け止める。望んだ方向とは違うけど、これはこれで一つの決着の付け方だと、納得する。山内は家族を取り返せないけど、それでも少しだけ明かりがともる。一つだけ荷物を下ろせた。見ている方に伝わるかどうかわかりませんが、そういう“願い”をこめました。

 (聞き手:読売新聞メディア局・後藤裕子、撮影:金井尭子)

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佐藤浩市(さとう・こういち)
俳優

 1960年12月10日生まれ、東京出身。映画「青春の門」(1981)で初出演し、ブルーリボン賞新人賞を受賞。その後、数々の映画やテレビドラマで幅広く活躍。「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(94)、「64-ロクヨン- 前編」(2016)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。「ホワイトアウト」(00)、「壬生義士伝」(03)では同最優秀助演男優賞を受賞。近年の主な映画出演作は「愛を積むひと」「起終点駅 ターミナル」(ともに15)、「花戦さ」「北の桜守」(ともに17)など。

<映画情報>

(c)2018映画「友罪」製作委員会

『友罪』
 ジャーナリストの夢に破れて町工場で働き始めた益田は、同じ時期に入社した鈴木と出会う。鈴木は寡黙で、周囲との交流を避けていたが、益田とは次第に打ち解け心を通わせていく。しかし、ある出来事をきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人ではないかと疑い始める――。

原作:「友罪」薬丸岳(集英社文庫)
監督:瀬々敬久
出演:生田斗真、瑛太、佐藤浩市、夏帆、山本美月、富田靖子、奥野瑛太、飯田芳、小市慢太郎、矢島健一、青木崇高、忍成修吾、西田尚美、村上淳、片岡礼子、石田法嗣、北浦愛、坂井真紀、古舘寛治、宇野祥平、大西信満、渡辺真起子、光石研
配給・宣伝:ギャガ
(c)薬丸岳/集英社 (c)2018映画「友罪」製作委員会
公開:2018年5月25日(金)全国ロードショー