映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」女優陣が語る「家族」

インタビュー

(左から)蒼井優さん、夏川結衣さん、吉行和子さん、中嶋朋子さん

 山田洋次監督の最新作「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」が5月25日に全国公開されます。3世代がにぎやかに暮らす平田家を舞台にした「家族はつらいよ」シリーズの第3弾で、今回は家事を担う史枝が家出して、残された家族が大混乱に陥る様子が描かれています。撮影中のエピソードを、共演した吉行和子さんと夏川結衣さん、中嶋朋子さん、蒼井優さんが語ってくれました。

最初から波長の合うチーム

――「家族はつらいよ」は、平田周造(橋爪功)と吉行さん演じる妻・富子の夫婦に、夫婦の長男・幸之助(西村まさ彦)と夏川さん演じる妻の史枝、中嶋さん演じる長女・成子と夫の泰蔵(林家正蔵)、次男・庄太(妻夫木聡)と蒼井さん演じる妻の憲子の4組の夫婦の物語です。シリーズ前作で2013年公開の「東京家族」もいれると、4回目の共演ですが、撮影現場の雰囲気はどうでしたか?

吉行さん 現場の雰囲気は本当にいいですよ。私もずいぶん長く役者の仕事をしているけれど、こんなに気持ちの良い方ばかりがそろっている現場って、そうはないんです。一人でも面倒くさい人がいると、嫌になっちゃうもの(笑)。みんなマイペースで、良い意味で「人のことは構っちゃいられない」みたいなところがあって。でも、それがいいんです。

中嶋さん 最初の作品(東京家族)の時から、なんとなく波長が合うと感じるチームだったんです。山田監督もそう感じたからこそ、「次もこのチームで撮りたい」とお考えになって、シリーズとして何作も続いてきたのではないでしょうか。

Ⓒ2018「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」製作委員会

――確かにみなさん、世代は異なるのに仲の良さが伝わってきます。

蒼井さん 橋爪さんや吉行さんは役者の大先輩にもかかわらず、そういうことをまったく感じさせない方なんです。だから、現場でとてもリラックスできる。

吉行さん 大ベテランだなんて言われると悲しくなっちゃうんですよ。そういう意識は全然ないからね。妙に遠慮されると、こっちも居心地が悪い。橋爪さんなんか、一番からかわれているもの。

中嶋さん いじられ役ですね(笑)。

家族は一番身近な個人の集まり

――今回の作品は、専業主婦の史枝が物語の核になっています。家事を担いながら「外に働きに出たい」「フラメンコ教室に行ってみたい」という思いを募らせていた史枝は、夫の心ない言葉で不満を爆発させ、家を飛び出してしまいます。

夏川さん 一人暮らしでも家族がいても家事はするけれど、一人暮らしなら、やり方が多少雑でも、自分さえ目をつぶれば済みます。でも、家族や第三者がいると、その人たちが気持ち良く過ごせるように、しっかりと家事をこなさなければいけない。史枝も家族のためを思って毎日頑張っていたのに、当の家族からは感謝の気持ちが感じられず、夫から専業主婦を侮辱するようなことを言われて、ついには家出をしてしまうんです。もっとも私に言わせると、誰かを思いながら家事ができるって、なんだかうらやましい(笑)。

蒼井さん ないものねだり(笑)。でも、365日、何十年間も誰かのために家事を続けなければいけないと思うと……。

夏川さん 「一生仕事を続けろ」って言われるのもつらいよ。結局、家族の間では外で仕事をしている人にも感謝すべきだし、家事を担っている人にも感謝すべき。そこは平等じゃないといけないと思う。

――みなさんは「家族」という言葉に、どんなイメージを抱きますか?

中嶋さん 家族って「一番身近な個人の集まり」なんですよね。親やきょうだいを「家族」と考えちゃうと、「家族としてあるべき形」に整えなければいけないと考えてしまって、窮屈さを感じてしまう気がする。家族を個人の集まりと考えれば、形が整っていなくてデコボコがあっても、それでいいと思えるんじゃないかな。

蒼井さん 私も朋子さんと同じ考え。家族は個人の集まりだなって、大人になってみるとよくわかります。子どもの頃は家族に甘えてしまうけれど、ある程度の年齢に達すると、自立した個人として甘えをなくさなきゃと思うようになる。

吉行さん 私は、実生活では「家族」という言葉に実感はないんです。もちろん、かつては私にも家族はいたんですけど(笑)。この映画に出演することによって「ああ、家族ってこういうことか」と感じることができた。人生の終盤にこんな経験ができて、本当に良かったと思っているんです。

夏川さん 平田家って、端から見ると本当にうらやましい家族ですよね。しょっちゅう家族会議を開いて、言いたいことを言い合って。家族会議を開く家庭ってあまりないと思います。開こうとしたって、なんだかんだ言い訳をつけて集まらない人もいると思う。

――平田家の家族会議は、シリーズを通じて作品の見どころの一つでもありますね。

夏川さん 今回、史枝は家出中だったので、家族会議には参加していません。だから、会議のシーンの撮影を客観的に見ることができたんです。家族が話し合っているうちに、仲たがいしている幸之助と成子に“きょうだい感”がにじみ出てきたり、憲子が平田家の一員としてなじんできていることがうかがえたり。山田監督が計算し尽くして作り込んだ大事なシーンなんだと、あらためて実感しました。

女優をやってきて本当に良かった

――史枝は、家事に追われる生活から抜け出し、新しいチャレンジをしたいと考えます。みなさんには何かチャレンジしたいことはありますか?

夏川さん 今は仕事で精いっぱいで、新たに何かをするような余裕がないかも。

中嶋さん 私たちの仕事って、常に新しいことにチャレンジしなければならないからね。

夏川さん 映画やテレビドラマの仕事は期間限定で、2か月から長くて10か月ぐらい。それが終わると、また新しい映画やドラマの仕事が始まります。仕事の中に必ず何か新しいことがあるから、仕事を続けている限り、あえて新しいことを始める必要がないんです。しいて言うなら、外に向かって何かにチャレンジするより、内に籠もって何かをしたいです。例えば、編み物とか。

蒼井さん 私は手芸が趣味で、編み物をやっているんですが、次は織物や染色もやってみたい。毛糸を自分で染められたら、好きな色を作れるし、色のバリエーションが広がるから。

中嶋さん 靴下を編んでいただきました。すごくかわいらしい靴下なんですよ。

夏川さん 今は私のを製作中。順番待ちしてました(笑)

中嶋さん 実は私、空中ブランコを始めまして……。

一同 えぇーっ。

中嶋さん ある人に勧められて、空中ブランコのレッスンに通っているんです。「今だ!」というタイミングでブランコから手を離したり、足を離したりするんですが、頭の中で「今だ!」と考えると、一瞬タイミングが遅れちゃうんですよ。だから、タイミングが遅れないように脳が一瞬で体に号令を出せるよう、トレーニングするんです。これってお芝居にも役立つかなと思って。

夏川さん 意外な趣味!

中嶋さん こう見えて、実はアクティブなのよ(笑)。

――吉行さんはどんなチャレンジを?

吉行さん 私はただ女優を続けるだけ。この年になって、女優をやってきて本当に良かったと思っているんです。やっていなかったら、どんなに退屈な人生だったことか。私はこれまで、退屈を味わったことがほとんどないんです。

夏川さん 旅行したりはしないんですか?

吉行さん たまにはするけど、やっぱり一番楽しいのは仕事。役に取り組んでいる時が一番リラックスできるんです。みなさんの人生はまだまだ先が長いから、いつか私の言葉を思い出してくださいね(笑)

夏川さん その境地に達する道のりは、まだまだ遠い(笑)。

(文・読売新聞メディア局 田中昌義、写真・金井尭子)

吉行 和子(よしゆき・かずこ)

東京都出身。1957年、舞台「アンネの日記」でデビュー。78年映画「愛の亡霊」と2013年「東京家族」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。主な出演映画は「おくりびと」(08年)、「人生、いろどり」(12年)、「小さいおうち」(14年)、「DESTINY 鎌倉ものがたり」(17年)など。

夏川 結衣(なつかわ・ゆい)

熊本県出身。1994年、映画初主演作「夜がまた来る」でヨコハマ映画祭・最優秀新人女優賞受賞。2010年、「孤高のメス」で日本アカデミー賞助演女優賞などを受賞。主な出演映画は「歩いても 歩いても」(08年)、「64―ロクヨン―前編/後編」(16年)など。

中嶋 朋子(なかじま・ともこ)

東京都出身。ドラマ「北の国から」(1981年~2002年)では22年間にわたり、主人公の娘・蛍役を務める。映画「つぐみ」(1990年)でブルーリボン賞助演女優賞などを受賞。主な出演作に映画「ふたり」(91年)、NHK大河ドラマ「篤姫」(2008年)など。

蒼井 優(あおい・ゆう)

福岡県出身。1999年、ミュージカル「アニー」でデビュー。2006年、映画「フラガール」で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞などを受賞。主な出演作品は「百万円と苦虫女」(08年)、「オーバー・フェンス」(16年)、「彼女がその名を知らない鳥たち」(17年)など。

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」は5月25日(金)より全国公開。
監督:山田洋次 出演:橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優ほか
制作・配給:松竹