小澤征悦さん「ミス・シャーロック」出演「うそを本気で演じる」

インタビュー

 俳優の小澤征悦さんが、動画配信サービス「Hulu」と「HBO アジア」の共同製作によるオリジナル連続ドラマ「ミス・シャーロック」(4月27日スタート)に出演します。「名探偵シャーロック・ホームズと相棒のジョン・ワトソンが、もしも現代の東京にいたら?」「ふたりとも女性だったら?」という設定で描かれるミステリー・ドラマ。警察も手を焼く難事件に挑む捜査コンサルタント・シャーロック役を竹内結子さんが、その相棒・和都わと役を貫地谷しほりさんが演じ、小澤さんは、シャーロックの兄で内閣情報分析官の双葉健人を演じます。小澤さんにドラマの見どころや、今年20周年を迎えた俳優人生について聞きました。

兄妹の根底にある「愛情」と「信頼」

――小澤さんの演じる双葉健人という役柄の魅力は何でしょうか?

 主役のシャーロックは、頭脳明晰で観察力、推理力に優れているというキャラクターです。その兄である双葉健人は、妹に負けず劣らず頭が良くて、それゆえに憎たらしい。そんなキャラクターを構築してみました。お互いに「自分の方が上だ」と思っているようなところがあって、素直になれない兄妹だけれど、シャーロックが追っ手から逃れるシーンなどでは、健人は妹のことを案じて手を差し伸べます。そんな兄妹の根底にある「愛情」や「信頼」を感じていただけるといいですね。

――コナン・ドイルが小説で描いたシャーロック・ホームズは、世界の映画・ドラマ史上、最も多く映像化されているキャラクターとして知られています。今回の出演に当たって、原作は参考にしましたか?

 シャーロック・ホームズの小説自体は子どもの頃から好きで、よく読んでいたんです。ベネディクト・カンバーバッチがシャーロック役を演じたドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」(英BBC、2010年~)も見ましたし。ただ、原作や過去の映画化・ドラマ化作品を参考にすると、それが演技に良い影響を与えることが多いけれど、逆に演技の足かせになる場合もあるんです。今回の作品は、もちろん原作はありますが、舞台の設定は現代の日本だし、シャーロックもワトソンも女性に置き換わっています。だから、(原作ものではなく)オリジナルの作品だと捉えて、あえて何も参考にしない方がいいと考えました。

現代日本を世界に正しく伝えたい

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――シャーロックとワトソンを女性に置き換えるというアイデアについては、どう思いましたか?

 すごく面白いなと思いましたね。でも、はじめは竹内結子さんがシャーロックを演じることがイメージできませんでした。カンバーバッチが演じたシャーロックを見た時、セリフ回しが速くて驚いたんです。シャーロックは頭が良いから、早口でしゃべりながら次のことを考えているし、支離滅裂なことを言っているようでいて、自分の頭の中ではちゃんとつじつまが合っている。そういうテンションの高い役を演じるのは大変だろうなって、ちょっと心配だったんです。ところが、蓋を開けてみたら、竹内さんの演技は見事にそのテンションに到達していましたね。

 貫地谷さんの演じた和都は、よくシャーロックの足を引っ張ってしまうけれど、優しくて正義感にあふれている。しかし、ある事件のせいで心に傷を負っています。竹内さんの演じるシャーロックと、貫地谷さんの演じる和都は、対照的な役柄だけれど、すごくバランスのとれたコンビで、大成功だったのではないかと思っています。

――シャーロックは、知識と頭脳こそが自分の武器だと信じて行動し、他人には素直に心を開かない女性です。このようなタイプの女性をどう思いますか?

 ただの独り善がりは良くないけれど、男性であれ女性であれ、目標と信念を持って行動する人は魅力的だと思います。シャーロックの場合は、度が過ぎているところがありますが。でも、シャーロックのように「彼女には太刀打ちできないな」と男性に思わせるのも、女性としての魅力の一つなのかもしれませんね。

――今回の作品は、Huluと、世界有数のケーブルテレビ放送局「HBOアジア」の共同製作で、世界19か国で同日放送されます。

 この作品が海外の人たちにどう受け取られるか、すごく興味があります。ただ、海外ではまだ、日本のイメージについて勘違いしている人が多いんですよ。悲しいことに、日本といえば、いまだに「ゲイシャ・ハラキリ・フジヤマ」だと思っている人たちがたくさんいます。だから、世界中の誰もが知っているシャーロック・ホームズを題材にした今回の作品を通じて、現代の日本の姿を正しく伝えられたらいいなと思っています。

あっという間に40代

――1998年に俳優としてデビューして、今年で20年ですね。

 20年は早かったですね。学生の頃、40代の人に「あっという間に40代になるから、今から一生懸命やらないといけないよ」と言われたことがあったんですが、当時は、その言葉にリアリティーを感じることができませんでした。でも確かに、あっという間に40代になったなと。

 23歳で役者の仕事を始めて、20代の頃はただ、がむしゃらに目の前の仕事をやりました。32歳の時、「里見八犬伝」というテレビドラマで、「八犬士」と呼ばれる8人の若者のうちの一人を演じたのですが、8人の役者の中で、俺と照英さんが同い年で最年長だったんですよ。それまでは仕事をしていても、「自分はまだ下っ端だ」という感覚でした。ところが、いつのまにか、自分より年下の世代の役者がこんなにいる。「これはヤベエな」と思ったんです。その時に「自分は役者として経験を積んできたんだ」という自覚が芽生えて、海外での仕事にも目を向けるようになりました。そして、30代後半で「役者としてもう一歩、前に踏み出そう」と思うようになって、今日に至っているという感じですね。

――どんな役者でありたいと思いますか?

 俺は、緒形拳さんという役者が大好きでした。その緒形さんが生前、「芝居っていうのは、全部ウソなんだ。全部インチキなんだ。だから、ウソをる時は本気で演れ」とおっしゃったことがあったんです。緒形さんみたいにはなれないかもしれないけれど、この言葉を大切にして、これからも演じていきたいですね。
(聞き手:読売新聞メディア局・田中昌義、撮影:金井尭子)

小澤 征悦(おざわ・ゆきよし)
俳優

 1974年生まれ、米カリフォルニア州出身。98年のNHK大河ドラマ「徳川慶喜」の沖田総司役でデビュー。主な出演作は、映画「豚の報い」(99年)、「クライマーズ・ハイ」(2008年)、「相棒―劇場版Ⅱ―」(10年)、「64―ロクヨン―(前編・後編)」(16年)、NHK大河ドラマ「篤姫」(08年)、テレビ朝日系「TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部」(14年)、日本テレビ系「Dr.ナースエイド」(同)、日本テレビ系「もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~」(18年)など。

『ミス・シャーロック』
【ストーリー】元外科医師の橘和都(貫地谷しほり)は、医療ボランティア先のシリアから帰国した日に、かつての恩師が目の前で衝撃的な死を迎える事件に遭遇する。その事件の捜査中に一人の女性と出会う。名前はシャーロック(竹内結子)。彼女は、警視庁捜査一課の礼紋警部(滝藤賢一)、柴田巡査部長(中村倫也)も手を焼く難解な事件を、天才的な洞察力を以って解決に導く捜査コンサルタントだった。その傍若無人な物言いに抵抗を感じながらも、和都はシャーロックの人並み外れた推理力に心から感服する。2人は奇妙な共同生活を始め、コンビとして事件の捜査に関わるようになる。

2018年4月27日(金)Hulu配信/世界19か国、同日放送[全8話]
【出演】竹内結子、貫地谷しほり、滝藤賢一、中村倫也、大谷亮平、小澤征悦、斉藤由貴、伊藤蘭 ほか