阿川佐和子さんと大石静さん “無敵の2人”が30代女子に喝!

インタビュー

 エッセイストで作家の阿川佐和子さんと脚本家の大石静さんが、赤裸々に語り合った対談本「オンナの奥義おうぎ 無敵のオバサンになるための33の扉」(文芸春秋)を出版しました。本書では、仕事、恋愛、占い、更年期、親の送り方、はたまた下着に至るまで、「オンナの生き方」を極める2人の様子がつづられています。「歳を取るってまんざら悪いことばかりじゃない」「まだ驚くことがいっぱいある」と、好奇心と行動力にあふれた“無敵の2人”にインタビュー、結婚や人間関係など悩める30代女子に喝を入れてもらいました。

還暦婚、夫には感謝

――「オンナの奥義」には、昨年5月に「還暦婚」をされた阿川さん、結婚をしながらも恋愛に燃えていた大石さん、お二人の本音トークが満載です。本の中でも触れられていますが、長く独身を守っていた阿川さんはなぜ「電撃婚」を選んだのでしょうか?

阿川さん 私たちみたいに介護が現実的な世代になると、夫婦でないと、いろいろな手続きができなくて面倒なところがあるんです。やっぱり籍に入っていないと「家族じゃない」と言われてしまうことが多くて。夫婦別姓主義でもないし。相手のことを「亭主です」って言うと、ものすごく簡単に説明できるんです。

「小さなけんかはするけど、お互い様です」阿川佐和子さん

――独身生活から一転、夫と暮らすのは大変ではありませんか?

阿川さん 確かに皿洗いを頼んでも、「洗った食器を置く場所がない」とか、しまうにしても「どこにしまえばいいのかわからない」とかって言われて、細かい面倒がないわけじゃないけれど、基本的には、私が一方的に夫の世話をするという関係ではないから。洗濯も母の送り迎えも、こちらが忙しいときはさりげなく助けてくれるので、感謝の気持ちの方が大きいかな。でも、母のことをいろいろと面倒見てくれて、本当に感謝しています。

30代で初めて味わった「求められている」感覚

――大石さんの30代の頃は、どんな気持ちで仕事をされてましたか?

大石さん 私は女優になりたかったけれど、全く相手にされなかったから、30歳の時に劇団「二兎社にとしゃ」を立ち上げて、自分で脚本を書いて、自分に役を与えようと考えたんです。必死でした。朝ドラのヒロインになりたいとか、有名になりたいとかではなく、「このままではイヤだ」っていう激しいエネルギーがあったような気がします。でも、劇団を旗揚げしたら、「君は演じるより書いたほうがいい」と言われて。初めて脚本を書いたテレビドラマが放送されたら、いろんな人が「脚本を書いてくれ」って電話をくれました。女優としては全く求められなかったけど、初めて「求められている」という感覚を味わって、これは絶対手放さない、命をかけていこうって思ったんです。

「女優を目指していた時、夫は一歩でも、半歩でも前へ出ろ、と言ってくれました」と大石さん

――NHKの連続ドラマ小説「ふたりっ子」(1996年)で向田邦子賞を受賞し、同じくNHKのドラマ「セカンドバージン」(2010年)では、鈴木京香さんと長谷川博己さんの熱愛シーンが大きな話題になりました。脚本家として成功する一方で、女優の仕事に未練は?

大石さん 二兎社は劇作家の永井愛さんと一緒に始めました。40歳になる時に退団公演をしましたが、当時は「劇団を捨てて行った」みたいに言われたりもしました。でも、いまや愛ちゃんは日本劇作家協会の会長を務めた演劇界の重鎮。お互い吹っ切れました。

「あたしの人生はどこへ……」

――阿川さんは「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)や「サワコの朝」(TBS系)などテレビ番組に出演し、93年から続く週刊文春での対談連載も担当。自身のインタビュアーとしての経験をまとめた「聞く力」(文芸春秋)がベストセラーにもなりました。

阿川さん 20代の頃はお見合いに明け暮れていました。30歳になる直前にテレビのレギュラーの仕事を始めて、インタビューや原稿を書く仕事が少しずつ増えていきました。仕事を始めたのも遅かったし、大石さんみたいに「これがやりたい」っていうものはなかった。何をやるにも「どうもすみません、こんな年ですけど新人です」から始まって。年下の人に怒られながら、教えてもらいながらやっていました。

大石さん 仕事に一直線って感じではなかったのね。

阿川さん 「あたしの人生はどこへいくんだろう」って思っていましたね。結婚するのが本来の終着点で、仕事は仮の姿、結婚するまでの「社会見学」と思っていて。どこかで王子様がさらってくれるのを待っていました。

子どもが欲しいなら早く行動を

――30代のころ、結婚や出産に悩むことはありませんでしたか?

大石さん 37、38歳くらいの時に、子どもが欲しいと強く思ったことがありましたね。想像妊娠して生理が止まっちゃったくらい。でもある時、そうした願望がパタッとなくなった。女性としての本能っていうのかしら。

阿川さん 毎日の仕事が本当に忙しくて考えられなかったな。この間もある雑誌の編集者に、20代で老後のことを心配している人がいると聞いたけど、考える時間があるのね。33、34歳くらいの時、取材に向かう途中の車の中で、締め切りの迫った原稿のことを考えていたらディレクターにどなられたの。それで腹をくくって、とりあえず目の前のことに集中する、って決めました。いつも、何かを終えたら次のことが必ず待っている状況だったから。

大石さん それは結構大変よね。

阿川さん たまにぽっかり時間が空いた時に、「子ども産みたいのに、どうしよう‥‥」と悩む。でも次の仕事があるから気持ちを切り替えないといけない。そうしているうちに卵がなくなっちゃった。だから、子どもが欲しいなら早いうちに決めたほうがいいですよ!

大石さん そうね、子供が欲しいなら、順番を間違えてもいいから早いほうがいい。

阿川さん 109歳になる叔母は、「なんでもいいから結婚して子ども産んで、あとは離婚してもいいから」って言っていました(笑)。

「この中で一番ステキ」な人を見つける

――働く30代女子は、忙しくて出会いがないという人が多いようです。

大石さん 出会いがないなんてこと信じられないわね。私の30代なんて、いくらでも出会いはあったけど。私、結婚して夫はいたけど、恋愛もしてたわよ。芝居やドラマの仕事をやっていると、周りに男性が多いじゃない? とりあえず、「この中ではこの人が一番ステキかな」って相対的にでも好きな人をきめていました。真面目に語ると、バカですけども。

阿川さん 大学時代に同じこと考えていました。男の同級生や先輩を見渡して、「加藤くんより、佐藤くんかな?」とかね。

大石さん それで何となくその人に向かってニコニコしていると、相手が「僕のこと好きなのかな?」と思ったりするから。なんとなく、相手に気持ちが通じていい流れになるのですよね。

「小さな後ろめたさ」を持つべき

――大石さんが外で恋愛をしていたら、家庭内でけんかになりませんか?

大石さん 夫にもその時々の女性がいて、お互い様だったんです。夫も私も、何があっても家に帰ってくる。それが一緒に生きていこうということだと思うので、それで十分ですね。

阿川さん 一朝一夕ではそういうふうにはならないと思いますよ。いろんな痛みとか苦悩とか支えとか繰り返しているうちにね。小さな後ろめたさを持っていると、相手に優しくなれる、と思います。

大石さん そうね、小さな後ろめたさ、みんな持ったほうがいいと思う。本のタイトルにも良さそう。

挑戦するおもしろさ

――阿川さんは昨年、TBS系ドラマ「陸王」で老舗足袋屋で働く女性の役を熱演されていましたね。

大石さん すごい女優ぶりで驚きました。表現すべきところをきちんとはずさず演技していて、良くも悪くも理のかなった芝居だと思いました。

「ドラマ作りはオーケストラ。独唱じゃないんです」と阿川さん

阿川さん 私はずっとインタビューや原稿を書く仕事をやってきたけど、基本的には一人仕事。あと、インタビュアーって常に当事者を外から見ている仕事なんですよ。なんとなく部外者って感じ。でも、今回こういうチャンスをいただけた。チームの中に入ったら、学園祭みたいで、一つの目的に向かってみんなが頑張っている。別世界の仕事ってあるんだなって思いましたね。貴重な経験でした。

大石さん 私がずっとドラマ作りにこだわるのは、そういうステキなところがあるからなんですよ。

新人のほうが幸せ

――新しいことを始める時、「うまくいかないのではないか」と不安にはなりませんか?

阿川さん 迷惑をかけたくないなとは思います。でも初めて何かをやれば、翌日にはできることが増えていくでしょ? ゴルフは51歳から始めたけど、だんだんできるようになっていくのが面白くて。

「台本がよくないとチームの士気が上がらない。チームワークの原点は台本。一人で書く文章とは違う楽しさがある」と大石さん

大石さん 新人のほうが幸せだと思います。昨日できなかったことが今日はできるようになったって、仕事仲間も世の中も見てくれる。阿川さんみたいに、60代になってそんなことができるなんて、本当に幸せ。私なんて脚本家としてベテランの域だから、よくできていて当たり前。新人なら「こんなステキなホン(脚本)を書いてきた」と思われても、「大石さんはそんなのできて当然」とほめられもしないもの。

女性特有のマウンティング?

――30代女子の悩みについて相談です。友人や会社の同僚のフェイスブックやインスタグラムを見て自分と比べてしまい、モヤモヤしてしまうことがあります。

阿川さん やめればいいんじゃない? やらないと気が済まないの?

大石さん 人に「ステキね」と思われないとダメなのね。

阿川さん この間、漫画家の滝波ユカリさんにインタビューしたけれど、女性同士は「マウンティング」といって、「自分の方が上」というのを競い合うんですって。例えば「そのブランドバッグ、すごくステキね。でも去年のものよね」とかいう会話で。

大石さん そんなに殺伐としているの? イヤだわ。

阿川さん 滝波さんによると、男性は年齢や勤めている会社などで格付けが決まるけれど、女性の格付けは属性とかセンスとかで変化しやすいと。結婚とか不倫とか出産とか子どもの教育とかで格付けし合うって。

インスタ疲れにはネタ投稿

――キラキラした日常をSNSにアップして「いいね!」の数を競ってしまいます。高価な靴やバッグの画像をアップして「コレ買っちゃった」とか。

阿川さん 「コレ買った」とかって恥ずかしいじゃない。つまり自慢でしょ?

大石さん インスタグラムって見ているといろんなものが上がってくるけど、他人の食事見ても面白くないわよ。

阿川さん 「コレ買った」なんて自慢するより、失敗した話のほうが面白いでしょうに。「今日とばかりにブランドのワンピースを買ってお出かけ。『ステキな模様ね』と言われたので背中を見たら、タグが付いていた!」とかにしたらどう? 今は自慢ばっかりだけど、自慢は芸にはならないでしょ。「私は私の人生よ」と思うのが一番ですよ。

(聞き手:読売新聞メディア局・山口千尋、撮影:金井尭子)

大石 静 (おおいし・しずか)

脚本家。1951年、東京都生まれ。「ふたりっ子」(NHK)で向田邦子賞、橋田賞を受賞、「セカンドバージン」(NHK)で、放送ウーマン賞、東京ドラマアウォード2011脚本賞を受賞。ほかにも、「ハンドク!!!」(TBS系)や「家売るオンナ」(日本テレビ系)などオリジナルの連続ドラマを中心にヒット作多数。

阿川 佐和子 (あがわ・さわこ)

エッセイスト、作家。1953年、東京都生まれ。「ああ言えばこう食う」(檀ふみさんとの共著、集英社)で、講談社エッセイ賞など受賞多数。2012年に「聞く力」(文芸春秋)が年間ベストセラー第1位に。テレビでは「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)や「サワコの朝」(TBS系)などにレギュラー出演。