「ワンダーストラック」世界の不思議に触れる子供

シネマレビュー

「ワンダーストラック」PHOTO : Mary Cybulski

 みんなドブの中にいるが、そこから星を眺めるやつもいる――。

 トッド・ヘインズ監督による本作には、オスカー・ワイルドの言葉が印象的に使われている。

 ニューヨークに来て、遠くで輝く星のような希望に手を伸ばす、1人の少年と1人の少女をめぐる物語。共に12歳。耳が聞こえない点も同じだが、1977年と27年、50年の時に隔てられている。

 77年、ミネソタから来たベン(オークス・フェグリー)は、落雷事故で聴力を失ったばかり。まだ見ぬ父を捜し、自分は何者か、知ろうとしている。27年、生まれた時から耳が聞こえないローズ(ミリセント・シモンズ)は、居場所を求めてニュージャージーから来る。彼らはそれぞれアメリカ自然史博物館にたどりつき、世界のさまざまな不思議に触れる。

 二つの時代を行き来しながら映画は進む。77年の物語=写真=はカラフルな混沌こんとん、27年は白黒無声映画の魅力をたたえていて、眼福。未知の世界へ飛び込む子供たちの果敢な姿にも心打たれる。しかしなぜ、一つの映画の中に二つの物語があるのか。いつか一つになるのか。ヘインズは映像と音楽の力で、原作者ブライアン・セルズニック自身による脚本の構造的魅力を増幅させ観客をとりこにする。

 やがて邂逅かいこうの時は来る。奇跡は、空のかなたからではなく、地面を歩いてやって来る。その正体を知った時、観客は、ひたむきに生きることの意味に触れる。1時間57分。角川シネマ有楽町など。公開中。(恩田泰子)