今年で結成20年を迎えるお笑いグループ「ロバート」の秋山竜次さん。様々な職業人になりきる「クリエイターズ・ファイル」も話題です。ゲスト出演した「ダウンタウンDXDX 春の2時間スペシャル」(日本テレビ系列、29日21時から放送予定)では、6年間にわたってやり続けている俳優・梅宮辰夫さんの顔芸の進化を披露。仕事にかける思いを聞きました。
「梅芸」進化の裏に、大御所の教え
――番組で、梅宮辰夫さんの顔芸を披露されていました。
僕は梅の芸と書いて「梅芸(ばいげい)」と読んでいますけれども、お面に色をつけて、Tシャツに印刷して……と進化をVTRにまとめてもらって感慨深かったですね。最初に梅宮さんと会った時に「自分の写真を勝手に使っていいけれど、だったら、ちゃんと芸にしなさい」とおっしゃっていたので、中途半端にはやめられないなと。あんな大スターの写真を使っているわけですから、一瞬でハハハで終わっちゃダメやなと。とことん使いこなそうと思って、広げた感じですかね。
――もともとは体形が梅宮さん似だったんですよね。
劇場で着替えている時に、先輩たちから「おまえの体はなんでそんなに大御所感があるんだ」と言われて。20代に似合わない風格、かっぷくなんでしょうかね。最初はなんとも思わなかったけれど、松方弘樹さんと梅宮辰夫さんの釣り番組を見たら、まじで体が同じなんだ俺は、と。ニブンノゴ!の宮地(謙典)さんが「体のまねなんてできないの?」とホワッと言ってくれたのを覚えていて、なんかできるかなと自分でお面を作ったのが始まりです。
結成20年、熟女がファンに
――今年でロバート結成20年です。
感慨ありますね。ずっとコントをやらせてもらって、3人組で解散することもなく、よく続いたなと思います。秘訣は、芸歴12、13年目ぐらいから、山本博と馬場裕之が芸人という感覚でなくなってきたことですかね。僕が全部ネタを作るんで、最初は「なんでおまえたちやらないんだ」ともめましたけど、料理人とボクサーと一緒にやっていると思うと楽になった。文化人とスポーツ選手と組んでいる感じですかね(笑)。
――20年記念を考えていますか?
年末ごろに単独ライブをやりたいですね。若手の時みたいにキャーキャー言ってくれるファンだけじゃなくて、若い時に見てくれていた方がお子さん連れてもう一回笑いに来たというのがうれしい。熟女好きを公言しているので、不思議とプリクラ貼ったにぎやかなファンレターじゃなくて、便箋に達筆な文字で書かれて、スナップ写真入りの手紙が送られてくるんです。
「楽しいから続ける」クリエイターズ・ファイル
――さまざまな職業人になりきる「クリエイターズ・ファイル」も人気ですね。
もともとファッションデザイナーは2004年ごろの単独ライブで見せていて、子役もネタの中でやっていました。それから10年ほどしてパッケージを変えて見せたら「あれ、面白いね」と、ここ2年ほどで注目度が上がってきた。出すのが早すぎたのかもしれないし、芸歴を積んだ今だから見せ方とか伝え方がわかるようになったのかもしれない。面白いですよね。
――どの職業を取り上げるのかは、どうやって決めるのですか。
コントと同じように、自分でキャラを決めています。動画もありますが、メインは本屋さんに置くフリーペーパーなので、写真の撮り方とかインタビューがやりやすいやつを考えていますけどね。あんまり有名じゃない職業の方が面白いかなと。表紙のカットがしっくりくるだろうなというのも大事ですよね。シンクロの水着を着て監督になってみるとか、資料館にある粗い写真の明治時代の人物になって動いてみるとか。
――なりきる職業のリサーチはするのでしょうか?
まったくリサーチしないですね。といっても、イメージはゼロではないじゃないですか。なんとなく、ウェディングプランナーだったら、インカムつけてるな、とか、動きやすいように髪形はロングじゃないな、とか。決めつけですけど、中学生ぐらいの娘さんがいるシングルマザーで、働いて帰ると家で娘がご飯作って待っているみたいな。衣装やしゃべり方のテンションの高さとか、やっているうちに、あっ、しぼれてきた、いそう、これいそう、このラインやな、とか。そういう感じに思えてくるんですよ。
――完成した誌面では、本当にその職業の人が話したように作り込まれています。
最初の1年ぐらいは何の反応もなかったので、どうせ滑ってもいいやと趣味っぽい感じで好き勝手やっていたんです。スタイリスト、メイク、動画編集、制作、すべて素晴らしいチームで、ロケ地を見つけてきたり、専門のカメラマンさんを頼んだり、一緒に作るのが楽しいんですよね。話題になって注目されても、最初に面白いと思ってもらったのは、好き勝手やっているとこなんで、そのテイストを変えないのも大事ですよね。月1回の連載なので、楽しくなくて、ちょっと重いなと感じるようになったら、続けないです。
ゴールは梅宮さんの「顔」になる
――子どもの頃からお笑いを目指していたのですか。
全然ですね。運動会や文化祭で出し物をしたり、卒業生を送る会で全身スパッツ姿のスパッツ学園というのを考えたり、ふざけるのは好きでしたけど、職業としては考えてなかった。北九州出身で、学生時代はずっと彼女がいなかったので、東京でおしゃれになってイケてる彼女を連れて歩きたいと何も考えずに上京したのですが、こっちにきて何か月かしたら、お笑い雑誌を手に取っていましたね。
――結婚されて、お子さんもいますが、芸については何か言われていますか。
子どもはまだ4歳なんで、もうちょっと大きくなると、何をしているかわかってくれるだろうけど、ハダカになっていることが多いですからね(笑)。今はプライベートで着るTシャツの裏にも30枚ぐらい梅宮さんを印刷しているんですよ。特に誰に見せる必要もなくても、常に梅宮さんを着てる。一番衝撃的なのは、嫁が洗濯してくれてベランダにTシャツを干すと、梅宮さんがずらーっと。異様な光景ですよね。
――梅芸は今後も進化するのでしょうか。
もうひと展開何かやりたいですね。梅宮さんの顔をタトゥーにするとか、プロジェクションマッピングで顔に梅宮さんを映すとか。そうなったら、お面やTシャツを忘れても梅宮さんになれるわけで、いよいよゴールですかね。(聞き手・大森亜紀)