米国のアニメーション・スタジオ、ディズニー/ピクサーの最新作「リメンバー・ミー」(3月16日公開)で日本版声優を担当する女優・松雪泰子さん。先祖たちが暮らす「死者の国」に迷い込んだ少年ミゲルの冒険劇で、松雪さんはミゲルの高祖母イメルダの声を熱演しています。第90回米アカデミー賞で長編アニメーション賞と主題歌賞を獲得した本作のテーマは「家族の絆」。松雪さんに家族への思いを聞きました。
――映画では、ミュージシャンを夢見ながら、厳格な「家族の掟」で音楽を聞くことも奏でることも禁じられたミゲルが、「死者の国」に迷い込んで「ひいひいおばあちゃん」であるイメルダと出会います。どんな思いでイメルダを演じましたか?
音楽を禁止するという「家族の掟」を作ったのが、生前のイメルダです。彼女は強くて威厳があり、それでいて愛情深い女性です。さらにユーモアもあってチャーミングさも持ち合わせています。声の表現を変えることで、彼女の持ついろんな色を引き出せたらいいなと思いました。
――「死者の国」は、テーマパークのようにカラフルで美しい世界。そこで、キャラクターたちが歌ったり踊ったりするシーンが壮観です。歌のシーンはかなり練習されたのでは?
収録の2か月前ぐらい前に準備を始めました。メキシコの歌は音階が独特なので、レッスンとレコーディングテストを繰り返した後に本番の収録に臨みました。この作品では、ただ歌うだけでなく、イメルダのダイナミックなエネルギーを歌に乗せて表現したいと思いました。

――映画を見て家族のことを見つめ直したくなりました。松雪さんはいかがでしたか。
やはり、自分のルーツを大切することは大事だとあらためて感じましたね。印象的だったのは、「2度目の死」という考えです。死者の国の住人たちは、生きている家族の記憶から忘れ去られると、死者の国からも消えてしまうんです。一人の人間が生きている時間なんて、長いようで短いですよね。だからこそ、今こうして生きている時間、この世に存在している時間を大切にしなければとあらためて思いましたし、生きている私たちは先祖への思いを大切にしなければと思いました。
育児との両立、頑張り過ぎない
――1児の母として、仕事と子育ての両立をどう乗り切っていますか。
両立する上で大切なのは「頑張り過ぎない」ことではないでしょうか。私も最初は、仕事も育児も完璧にやろうと一生懸命でした。でも、そういう思いが強過ぎると、やっぱりどこかで息切れしてしまいます。ママだって一人の人間だから、息抜きをしたりストレスを解消したりする時間が必要です。そんな時、夫が手を貸してくれるのが一番いいのでしょうけれど、そうはいかない場合にも、なんとか時間をやり繰りして友達とランチをしたりして、ストレスを解消していました。
子どもがある程度大きくなってからは、自分の現状をオープンに話して、「今は忙しいから、協力して」と。自分がすべてを抱え込んでしまうのではなく、子どもに「ママと一緒に頑張ろう」って声をかけるんです。すると、子どもも家事を手伝ってくれ、よく協力してくれました。

――ミゲルはミュージシャンになりたいのに、両親や祖父母から家業の靴作りを継ぐように言われ、家を飛び出してしまいます。松雪さんが芸能界を志した時、ご家族の反応は?
芸能界に入る時、両親やきょうだいは私の背中を押してくれたし、上京して離れて暮らすようになってからも、ずっと私のことを見守ってくれました。子育ても助けてもらったし、家族の支えがなければ、女優としても母親としても、ここまでやってこられなかったと思います。
ドライブでストレス解消
――健康維持やストレス解消のために何かやっていますか?
ピラティスを続けています。やはり、定期的に運動して心身をリフレッシュさせることは大切だと思います。それから、ドライブ。クルマの運転が好きなんです。運転するだけでストレス解消になります。
――女優として取り組んでみたいことはありますか?
体を使って表現することが好きなので、アクションものをやってみたいですね。今まで、激しいアクションものはあまりなかったので、ぜひチャレンジしてみたいです。
(聞き手:読売新聞メディア局・田中昌義、撮影:金井尭子)
「リメンバー・ミー」3月16日(金)より全国ロードショー
【ストーリー】ミュージシャンを夢見るギターの天才少年ミゲル。だが、彼の一族は代々、音楽を禁じられていた。ある日、ミゲルは先祖たちが暮らすカラフルな“死者の国”に迷い込んでしまった。日の出までに元の世界に戻らないと、ミゲルの体は消えてしまう! そんな彼に手を差し伸べたのは、陽気だけど孤独なガイコツ、ヘクター。やがて二人がたどり着く、ミゲルの家族の驚くべき“秘密”とは? すべての謎を解く鍵は、伝説の歌手が遺した名曲“リメンバー・ミー”に隠されていた…。
監督:リー・アンクリッチ 共同監督:エイドリアン・モリーナ 製作:ダーラ・K・アンダーソン 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 日本版声優:石橋陽彩、藤木直人、橋本さとし、松雪泰子、横山だいすけ ほか