「マンハント」舞台は日本 香りは香港

シネマレビュー

「マンハント」(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

 ジョン・ウー、リンゴ・ラム、ツイ・ハーク。1990年代、香港で名を成した監督3人が、次々とハリウッドでデビューした。いずれも、ジャンクロード・バン・ダム主演のアクション映画の監督として。その後、米国で最も成功したのは誰か。器用でうまいラムでも、娯楽派のハークでもない。むしろ、武骨で泥臭い作風のウーだった。

 成功の理由は「スタイル」があったからだろう。滑り、回転しながら撃ち合うアクロバチックな銃撃戦。スローモーションの多用。画面を舞う白いハトの群れ。とにかく格好いい。ハリウッド進出から約四半世紀を経たこの作品でも、それは健在だ。

 中国で大ヒットした高倉健主演の「君よ憤怒ふんどの河をわたれ」と同じ西村寿行の小説が原作。大阪を中心に全編日本でロケし、撮影監督の石坂拓郎、美術監督の種田陽平ら日本人スタッフも参加している。

 大阪。日本の製薬会社の顧問を務める中国人弁護士(チャン・ハンユー=写真右)が目を覚ますと、隣には女の死体。殺人の疑いをかけられた彼を、大阪府警の敏腕刑事(福山雅治=同左)が追う。刑事は次第に事件の背景にある巨大な陰謀に気づきだす。真相を突き止めるため協力する2人を、謎の女殺し屋(ハ・ジウォン)らが襲う。

 冒頭から昭和風の歌謡曲が流れ、ヤクザがどなる。現代の日本とは思えない。風景は日本でも、世界観はウーが見た幻想のニッポン。福山が演じる刑事は格好をつけ過ぎでおかしく、弁護士を助けるホームレス役の倉田保昭は、日本人なのにセリフがカタコトに聞こえる。

 その中で100%、ウーのスタイルが展開する。水上バイクでの一騎打ちの迫力。至近距離で敵味方入り乱れて撃ち合い、殴り合い、斬り合う複雑な動きの面白さ。日本刀を操る刑事の手さばきの鮮やかさ。スローモーションと舞い飛ぶハト。手錠でつながった刑事と弁護士が2人同時に銃を撃つ場面など、やはりゾクゾクする。ウーのスタイルは今も、輝きを失っていない。

 一方で男たちの激情は暑苦しく、時代遅れにも思える。ウーは元々、香港の武侠ぶきょう映画(中国語圏の時代劇)で「陽剛路線」と呼ばれる男くさいバイオレンスの世界を確立した巨匠チャン・チェ監督の弟子だ。この泥臭さは、中国資本によって消えつつある、かつて隆盛を誇った「香港映画」の残り香なのかもしれない。1時間50分。TOHOシネマズ新宿など。(小梶勝男)