古川雄輝さん、黒谷友香さん 親子役で共演、「僕街」ドラマ化

インタビュー

古川雄輝さん(左)と黒谷友香さん

 マンガ大賞に3年連続ランクインした大ヒットコミックス「僕だけがいない街」。自分だけ時間が逆行してしまう “リバイバル(再上映)”という現象に悩まされる売れないマンガ家が、18年前の殺人事件と対峙たいじするサスペンスです。12月15日からNetflixオリジナルドラマ版の配信がスタートしたのを機に、主演の古川雄輝さんと共演の黒谷友香さんに、作品に対する思いや役作りについて聞きました。

完結後、初の映像化で原作の世界を忠実に再現

――「僕だけがいない街」は、三部けいさんのマンガで、2016年に完結しました。

 古川さん 今までテレビアニメと映画がありましたが、それぞれエンディングが違っています。一方、今回のNetflix版は、原作が完結したあとに作られた初めての映像作品です。だから、一番原作に近いだけでなく、12話かけてストーリーを丁寧に描いているので、一番再現率が高いと思っています。

――古川さんは主人公の藤沼悟役ですが、役作りはどのように?

 古川さん 基本的に原作に忠実に作ったので、原作をしっかり読み込むことから始めました。ナレーションが作中に結構あって、テレビアニメ版のナレーションを少しだけ参考にしました。というのも、マンガのキャラクターの声は読んでいる人それぞれの想像じゃないですか。それに対して、アニメを見た人は、アニメの声を想像すると思うんです。でも真似まねするのではなく、なんとなく参考にする程度です。マンガの実写化作品に出演した経験はほかにもありますが、今回は「あの時、主人公はこうしてたな」など、マンガの描写一つひとつを参考にして、台本と照らし合わせ、監督と話し合いながら演じました。

――黒谷さんは、悟の母親役の佐知子役ですね。

 黒谷さん 役が決まってから、まず台本を読み、マンガも同時に読んで、そしてアニメ版も見ることで、作品の世界観を理解しました。その後、実写版映画も見ましたが、今回のドラマは一番エンディングが原作に忠実だからよかったな、と。アニメ版を好きだった人も納得してもらえるのではないかと思います。

なにげない日常がいとおしい

――悟は、時が巻き戻る “リバイバル(再上映)”という特殊な現象に悩まされています。事件が起きる1988年と2006年を行き来して何度も同じ場面を繰り返す演技をするのは大変だったのでは?

 古川さん 余計なことをせず、なるべく普通に演じようと心がけていました。もちろん事件は起こるのですが、リバイバル現象が起こることだけが、唯一の非現実的なものだと考えて、普通に演じることで、リバイバル後の演技とのコントラストをつけたかったのです。悟は人生の悩みや夢がある普通の人間、ということを頭に入れつつ、演じました。

――子ども時代の悟を内川蓮生れおくん、成長してからを古川さんが演じています。黒谷さんは、2人の息子との共演になりましたね。

 黒谷さん 撮影は北海道・苫小牧でクランクインして、悟の子ども時代から始まったので、佐知子の役作りの基本的なものは、苫小牧ロケの間に出来上がっていました。子ども時代があってこその古川さん演じる悟の姿なので、子ども時代の撮影が先でよかったな、と思っています。実は、古川さんにお会いしたのは撮影後半になってから。蓮生くん演じる悟が成長した感じがあり、自然でしたね。佐知子に関しては、年代で髪形が違うので、分かりやすかったです。メイクしながら、「あっ、今、こっちの時代か」と再確認することもありましたね。

――悟の成長に伴って、母と息子の距離感はどう変わりましたか。

 黒谷さん 悟が小さい頃は、すごく「悟と一緒にいるわ~」っていう感じが強かったのですけど、大きくなってからは「お母さん、もういいよ」というみたいな、少し遠くなった感じがあって、ちょっと寂しかったです。

――苫小牧での撮影はどうでしたか。

 古川さん 北海道での撮影は基本、悟が子どもの時代のシーンだったので、僕の撮影はなかったのですが、2日だけ苫小牧を訪れました。悟がどのようなところで生まれ育ったかなどを見に行きたかったんです。原作の世界観がそっくりそのままそこに存在していて、マンガのイメージがリンクしやすかった。悟はこういう場所に住んでいたんだと想像しやすかったので、非常に演技の参考になりました。

カエルがいる池に飛び込んで……

――作品中で印象的なシーンを教えてください。

 古川さん 29歳の悟がリバイバル現象の後、18年前の小学5年生時に戻り、母の作ってくれたハンバーグを夕飯で一緒に食べているシーンですね。僕はこのシーンには出ていませんが、母親となにげなく過ごしていた時間がいかに幸せで貴重だったかに気づき、母の無償の愛を堪能しているところです。このシーンは大人が見たら誰もが共感できる印象的なシーンだと思いますし、「母親の飯がまた食べたい」っていう気持ちになりました。

――ご自身が出演しているシーンではどうですか。

 古川さん 作中後半に、水の中に飛び込むシーンです。設定は夏ですけど、実際の撮影は4月で、富士山の麓にあるカエルだらけの池だったんですよ。

 黒谷さん カエルがいたのね……。そういえば、ゲコゲコ鳴いてた。(笑)

 古川さん すご~く寒くて(笑)。僕と(八代学役の)戸次(重幸)さんとで「いっせーの」で入ったんです。僕は2回、戸次さんは3回入ったと思うんですけど、1回目は「がんばろう!」って言ってくれて、僕も「一緒にがんばりましょう!」って言って。けれど、2回目以降、お互いもう入りたくなくて……。寒くてすごく大変だったので、印象に残っています。

――体を張ったシーンでは、ピザの配達中にバイクに乗ったままトラックを止めようとするシーンがありますが……。

 古川さん 一部吹き替えの部分はありますが、自分でも結構な部分はやっています。あれも非日常的な撮影なので、やっていて面白かったです。岡山駅の近くの道路を封鎖して4日間くらいかけて撮影したんですよ。岡山のみなさんに協力していただいたということもあって、臨場感あふれる良いシーンが撮れました。

悟はちょっと遅い反抗期?

――黒谷さんの印象深いシーンは何でしょうか。

 黒谷さん 先ほど古川さんが挙げた悟と一緒にハンバーグを食べるシーン以外だと、佐知子は悟が子供のときも大人の時もカレーを作っているんです。料理つながりのシーンが結構重要でしたよね、お母さん的には。ハンバーグのシーンで、リバイバル後の小学5年生の悟が「母親の作る食事をもう一回食べられるんだ」と内心喜ぶように、なにげなくやっていたことが幸せなんだなと思いますよ。

――成長した悟にカレーを食べさせた時はどうですか。

 黒谷さん もう全然「おいしい」って言わないから! 「もうどうなのよ!」ってみたいな感じで佐知子が言うと、「うん、おいしいよ」(小声)みたいな反応だから、母親はさみしいんですよ。

 古川さん 「おいしいよ」とも言ってないですね。「うめーよ」ですね。(笑)

 黒谷さん 言わせないと、言ってくれないんですよ……。でもそれでいいんです、ちゃんと成長してくれている証拠なので。

 古川さん 悟は、ちょっと遅めの反抗期みたいになってるんですよね。

 黒谷さん そうですよね。

 古川さん 設定29歳なのに、ちょっとお母さんに「うめーよ」なんて……。

 黒谷さん それがまたかわいらしい。

――古川さんは(取材時)同じ29歳として、悟の反応ってどうですか。

 古川さん 母親が飯作ってくれたら、「うまい、うまい」って言いながら食べますけどね、29歳なんで。15歳くらいだったら、「うめーよ」って言いながらちょっと同じリアクションを取ってますけど。(笑)

 黒谷さん そしたら、「ありがとー」って言うわ。(笑)

――ご自身と役との共通点はありますか?

 古川さん 主人公は漫画家になりたくて、でも連載も持てずにもがいていて、というように、「目標があるけど、うまくいっていない」ということは、僕もそうですけど、みんな多かれ少なかれあると思うんです。そういうところは、「似てる」わけじゃないけど、共感しやすい部分ではありますね。

 黒谷さん (下山天)監督は、マンガを読んで「(佐知子役は)黒谷さんだ!と思った」とおっしゃってくれたんですけど、私は自分のことだから、「えっ? どこがだろう……」みたいなところも最初ありました。でも演じているうちに、すごく役に助けられているって感じが出てきて、「あっ、こういう自分、良いな……」って思えました。役に成長させてもらったなという感じでした。

――客観的に見て、この親子関係をどう思いますか。

 古川さん 僕の母はもう亡くなっているので、僕からするとうらやましくてしょうがないというか。29歳になるまで、息子の面倒を見ることができて、悟は漫画家を目指している途中かもしれないですけど、親子でまだ飯作ってくれてて、っていうのを見ると、僕からすると「あぁ、いいなぁ」って思いますね。

 黒谷さん 理想像っていうか、人生をリバイバルするっていうことで、出来上がった現実が良い方に変わっていくので、理想的じゃないですか。もし良い方向じゃなかったら、親子関係が悪くなっていたり、距離があったりしたかもしれないけど。ずっと距離が近いままでいられたから、良い親子かなとは思いますね。

――もしご自身がリバイバルするとしたら、いつに戻りたいですか?

 古川さん 主人公と同じ小5!

 黒谷さん なんで、なんで?

 古川さん 小学生のころからもっと楽しい人生をほんと送りたかった……。

 黒谷さん あー、わかるー。(笑)

 古川さん 僕は海外にいましたから、日本がイイですね。もっと社交的で、クラスの人気者みたいな学校生活を送りかったです。僕はシャイで、人前に出たくなかったですし、友達も少なかった。作文とかで人前に立って読むのがイヤなくらいな感じだったんで、その逆の人生を小5からやり直したいですね。(笑)

――そうしたら、現在の俳優としての人生はあると思いますか?

 古川さん もしかしたら俳優をやってないかもしれないですね。(笑)

――黒谷さんはどうですか。

 黒谷さん リバイバルするとしたら、生まれた時。赤ちゃんになりたい(笑)。でも行動も思考も全部大人なの。いきなり立ち上がったりして、周囲の大人を驚かせたいですね。(笑)

古川 雄輝(ふるかわ・ゆうき)

1987年12月18日生まれ。東京都出身。家族と共に7歳からカナダへ移住。以後、11年間海外で過ごす。帰国後、慶応義塾大学に入学。在学中にミスター慶応に選出される。デビュー後、2013年、主演ドラマ「イタズラなKiss~Love in TOKYO」(フジテレビ系)が日本だけでなく中国でも放送され話題に。主な出演作は、NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」などのドラマのほか、映画や舞台でも活躍中。18年公開予定に、映画「風の色」に主演、他に「曇天に笑う」「となりの怪物くん」に出演。

黒谷 友香(くろたに・ともか)

1975年12月11日生まれ。大阪府出身。モデルを経て、映画「BOXER JOE」(95年)で女優として本格的に活動を始める。その後、CM・ドラマ・映画・雑誌など多方面で活躍。主な出演作は、映画「ホームレス中学生」「極道の妻たちNeo」、ドラマ「ハンチョウ~神南署安積班~(シリーズ)」(TBS系)「子連れ信兵衛2」(NHK)ほか多数。