中村歌昇さんに聞く新歌舞伎の楽しみ方「映画を見る感覚で」

インタビュー

 歌舞伎俳優の中村歌昇さんが、11月3日から国立劇場(東京・半蔵門)で始まる新歌舞伎の公演に出演します。演目は、徳川家と豊臣家が戦った「大坂夏の陣」(1615年)の逸話を題材とする名作「坂崎出羽守さかざきでわのかみ」。歌舞伎界期待の若手・歌昇さんが、新歌舞伎の楽しみ方について語ってくれました。

男の葛藤が見どころ「坂崎出羽守」

 新歌舞伎とは、歌舞伎の手法を用いて近代的な思想や人間像を描いたもの。「坂崎出羽守」は、小説家・劇作家の山本有三(1887~1974年)が1921年に創作した作品です。

 大坂夏の陣で大坂城が猛火に包まれ、徳川家康は城内にいる孫の千姫を救出した者に、千姫を嫁がせると持ちかけます。その言葉を信じて千姫を救い出したのが、津和野城主・坂崎出羽守。ところが、千姫が坂崎を嫌がったため、家康は千姫を桑名城主の嫡男・本田平八郎に嫁がせようとします。「坂崎はとても不器用な人物ですが、この作品では、坂崎の男としてのプライドや葛藤が描かれています」と歌昇さんは話します。

主人を思う家臣を演じる

 歌昇さんが演じるのは、坂崎出羽守の家臣・松川源六郎。「坂崎は千姫を助けに行く際、顔にやけどを負います。一緒にいた源六郎も、目に傷を負ってしまいます。坂崎は、醜い源六郎の姿を見て、『自分もこんな姿なのだ』と思わされる。坂崎にとって、源六郎は鏡のような存在なんです」

  

初めての人も楽しめる新歌舞伎

 主人の気持ちが痛いほどわかる源六郎は、坂崎に血書というお願いの手紙を渡します。舞台では源六郎の複雑な心境が描かれますが、「それが新歌舞伎のおもしろさ」と歌昇さんは強調します。

 「歌舞伎は、衣装や型などが注目されることが多く、ある意味、様式美の世界。これに対して新歌舞伎は、登場人物の心情を映し出している。セリフが口語でわかりやすく、現代のお芝居に近い。歌舞伎を見たことがない人も、映画を見るような感覚で楽しめます」と歌昇さん。

傑作との2本立て、「通し」上演で料金もリーズナブル

 今回の公演は、「沓掛時次郎くつかけときじろう」との2本立てです。沓掛時次郎は、「股旅もの」で大衆文学に一時代を画した長谷川伸(1884~1963年)の代表作。歌昇さんによると、主人公・時次郎の「昔ながらの男気」が見どころだそうです。

 東京・東銀座の歌舞伎座などでは、複数の演目の名場面を取り合わせた「見取(みど)り」と呼ばれる上演形態が多いのですが、国立劇場では、作品の全体像を知ってもらうため、全編「通し」で上演するスタイルが多いそうです。3等席なら、通しで見ても1800円と映画とほぼ同料金です。

子供が誇らしいと思う父親に

 現在28歳。次代の歌舞伎界を担う若手として期待されている歌昇さんですが、「歌舞伎役者としてはまだまだ半人前。30、40代になって花形と呼ばれる世界ですから」と話します。3年前からは、弟の中村種之助さんと一緒に「双蝶会」という勉強会を開き、中村吉右衛門さんから指導を受けているそうです。「歌舞伎の世界は一つ一つの積み重ね。毎日コツコツとやっていきたい」

 2016年には長男が生まれ、「一人の男として、一家の主として家を支えなければならない」との思いを強くしたと話します。「僕も親の背中を見て育ってきた。親は子供の鏡になる。子供に誇らしいと思ってもらえるような父親になりたい」。きりりとしたたたずまいに、伝統を受け継ぐ決意を感じました。(取材・山口千尋)

11月歌舞伎公演「坂崎出羽守」、「沓掛時次郎」

【出演】中村梅玉、中村魁春、尾上松緑、中村歌昇ほか
【公演期間】2017年11月3日(金)~26日(日)
【開演時間】正午(終演・午後4時15分予定)
※10日、17日は午後4時開演
【チケット料金】特別席=1万2500円(学生8800円)、1等A席=9800円(同6900円)、1等B席=6400円(同4500円)、2等A席=4900円(同3400円)、2等B席=2700円(同1900円)、3等席=1800円(同1300円)
※いずれも税込み。

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