ミュージカル『刀剣乱舞』で注目の太田基裕さん…2.5次元「誇りに思う」 

 “2.5次元ミュージカル”を見たことがありますか? マンガやアニメ、ゲームなどの2次元の世界を舞台化した作品の総称で、イケメン俳優たちの輝きオーラを浴びにいく女性が急増中です。2.5次元ミュージカルで活躍する俳優の一人が、太田基裕さん。女性に大人気のミュージカル『刀剣乱舞』に出演して話題を呼んだ太田さんに、俳優としての思いを聞きました。

――――太田さんの舞台デビュー作は、ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)。中学のテニス部が対決する青春ストーリーで、2.5次元ミュージカルの代表作と言われます。「2.5次元俳優」と呼ばれることについてどう思いますか?

 2009年のデビュー当時はそのような言葉は特になかったと思います。時代の流れでそう呼ばれ、今はメジャーなフレーズになっていますが、自分はそれほど意識してこなかったし、いまでも気になりません。

 でも最近、舞台俳優に世間が興味を示してきてくれているんだ、とさまざまな取材を通じて感じています。だから、そう言われることは誇りに思うし、ありがたいなとも思います。

――――デビュー作がミュージカルだったからか、歌う役が多いですね。演じる側としてはどうですか。

 そうですね。歌とダンスがある方がお客さんもワクワクしますし、普段舞台を見たことがない人でも見やすいと思います。演じる側としては、テニミュに出演したことで免疫が付いたというか、歌って踊ることの“気恥ずかしさ”はだいぶ軽減されました。ストレートプレーをやってきた俳優さんよりは、ミュージカルの“違和感”をすんなり受け入れられる態勢は整っています。

 免疫と言いましたが、あまり舞台経験がない人たちの登竜門的なところがテニミュにはあります。稽古や公演を通じて技術や経験を得て、その後、舞台俳優としてやっていく。自分もまさにその通りで、それまでダンスも歌も人前で披露したことがなかったから、プレッシャーは非常に大きかったですね。人間として成長することで、役者としても成長できるのではないかと思って、今までやってきました。

キャラクターの本質を見極めるのが大事

――――今年でデビューして9年目ということですが、ターニングポイントはいつでしたか?

 実は、たくさんあるんですよ。舞台をやる度に毎回いろんな壁にぶち当たっていて、それを稽古中にどう乗り越えていこうかといつも思って、やっています。でも強いて言うなら、2.5次元作品ではありませんが、「マグダラなマリア」(高級娼婦マリアを主人公にした耽美な世界観の舞台。キャストはすべて男性)シリーズでしょうか。テニミュ直後の出演で、テニミュを知っただけでもすごいことだと思っていた自分だったが、「自分の未熟さを思い知った」「いろんな演劇のスタイルがあるんだな」と思った作品でした。演出家さんにはだいぶしごかれましたが。

――――2.5次元作品には、原作のキャラクターのイメージがつきまといます。漫画なら絵、アニメなら声も。演じる側としては、どこまで原作キャラを意識していますか。

 テニミュでは非常に厳しくて、原作キャラの見た目だけではなく声も近づけることを求められます。自分もアニメの声優さんの声を聞いて練習しましたが、原作を読んでその人間の声質が大事なのではなく、“キャラの本質を見極めること”の方が大事なのではないかと思いました。違う人間が舞台で演じる意味と言うのは何かと考えたんです。「このキャラからほとばしるエネルギーってどこからきているのか」とかを考える。これは2.5次元かどうかという事は関係なく、お芝居全般に言えることだと思いますね。

――――ゲームを舞台にしたミュージカル『刀剣乱舞』~三百年の子守唄~では、千子村正せんごむらまさ役。日本刀を擬人化したゲームでの村正は、がっちりしたイメージでしたが。

 当初、絵を見せていただいた時に「いや、僕じゃないだろ」と思いました。だから逆に燃えたというか、だったら自分なりのものを作ってしまおうと。誠心誠意、役を演じれば伝わるのではないかと考えました。芯の部分さえブレなければいけるんじゃないか。それが“等身大の自分をキャラクターに吹き込む”ということにつながるのだと思います。

――――自分とあまりにも性格が違うキャラの時は、どうするのですか。

 自分と全然違うと、逆に挑戦しがいがあるというか、思いきれるというか。キャラの中に、どんなことでもいいので自分が共感・共有できるものを探します。自分の心に響く感覚がないと、演じていても心が寒く感じるんです。一見、全然自分と違うキャラでも、その中に自分らしさや、共感できるものを吹き込んで、自分とつなげるという作業です。それをどんなキャラに対してもしています。そのことで僕が演じている意味があるような気がします。

将来の自分がどうなっているのか楽しみ

――――憧れの俳優さんとか、この作品に出演したいなど、具体的な目標はありますか。

 実は……無いんです。「目標が無い人ってやばいな」とは思いますが、自分の中であえて作っていない。目の前のことで常に必死という事もありますね。5年後の自分は、自分でもどうなっているかわからないし、それを楽しみたい。今年で芸能生活9年目になるのですが、デビューの頃の自分から見たら「今まで俳優をやってこられて、ビックリしてる」と思う。これからも自分が追求したいこと、興味あることをコツコツやっていきたいです。

――――30歳になったそうですが、ライバルはいますか?

 特に具体的にはいないけど、裏返して言えばみんなライバルだと思います。この年になって、どんどん若い人がこの業界に入ってくるし、「先輩になった」感が最近、現場でも出てきましたね。「2.5次元俳優」を目指す人も出てきているし、その怖さを感じています。

――――ミュージカル『刀剣乱舞』での衣装は、裾に長いサイドスリットが入っていて美脚を披露していましたが、露出度の多い衣装はどうですか。

 「マグダラなマリア」では、アンナ・エーデルマンという金髪のグラマーな女性役だったので、露出が多い衣装でした。その時に感じたのですが、いろんなことが自分の中でしっくりきていれば、特段恥ずかしいことはないですね。千子村正役の時は、妖刀の設定なので妖しさや妖艶さを表現した衣装でした。稽古が始まる前にパンフレットなどの写真撮影があるのですが、最終稽古が終わって舞台で演じはじめると、変化していくというか、衣装が自分に馴染んでいく。そういうところが舞台って面白いと思いますね。

11月発売の「月刊太田基裕×小林裕和」より

――――昨年出演された「ジャージー・ボーイズ」は第24回読売演劇大賞最優秀作品賞を取り、今年2月の贈賞式後のパーティーでは、参加者の前で同作を再現したパフォーマンスを披露し、話題になりました。

 最優秀作品賞を取ったのは本当にうれしかった。レコード・プロデューサー役での出演だったので、贈賞式後のパフォーマンスではメンバーを紹介するMCをしたんですよ。初めての経験で、多くの舞台人の前で相当緊張しましたね。本格的なミュージカルの出演は「ジャージー・ボーイズ」が初めてだったけれど、役にスッと入りこむことができました。

――――2018年9月の再演が決まりましたね。

 再び演じることが出来るので、今からとても楽しみにしています。前回はチケットがなかなか取れなかったと聞いていますが、今回は全国ツアーもありますので、東京以外の方々にも見ていただけるチャンスが多くなると思います。演出家の藤田(俊太郎)さんはとてもおもしろい発想の持ち主なので、それが作品に吹き込まれています。中川(晃教)さんを筆頭に歌が素晴らしい方ばかりの出演なので、耳にも優しいし、刺激的ですよ。初演を経てつかんだものを色濃く出していきたいです。もっとハッピーに、お客さんに楽しんでもらえるものにしたいと思っています。

――――舞台以外でも写真集などで活躍されていますね。

 11月18日に写真家・小林裕和さんによる新世代の俳優シリーズとして写真集「月刊 太田基裕×小林裕和」が発売されます。新境地に挑戦ということでベトナムの世界遺産であるホイアンやフエで撮影してきました。ベトナムの民族衣装アオザイを着た中性的なカットも入っています。ぜひ皆さんに一味違う僕を見てほしいですね。

太田基裕(おおた・もとひろ)
 1987年1月19日生まれ。東京都出身。 2009年、ミュージカル『テニスの王子様』で初舞台。以降、舞台「弱虫ペダル」シリーズ、「メサイア」シリーズ、「Club SLAZY」シリーズ、超歌劇「幕末Rock」など人気舞台に多数出演。近年は「ジャージー・ボーイズ」など本格ミュージカルにも出演し、俳優としての幅を広げる。2017年はミュージカル「手紙」に主演。さらにミュージカル『刀剣乱舞』(千子村正役)、舞台「黒子のバスケ」(花宮真役)に出演し、好評を博す。9月28日から「劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『マスカレイドミラージュ』」(アインザッツ役)、11月1日からミュージカル「デパート!」(三越劇場)が控えている。