香港で異例のヒット、オムニバス映画「十年」が描く未来

シネマレビュー

(C)Photographed by Andy Wong, provided by Ten Years Studio Limited

 香港の5人の若手監督による五つの短編からなるオムニバス。

 10年後の香港の日常はどうなっているのか。「一国二制度」の名の下、中国が香港に約束している「高度な自治」の行方は――。主に2025年を舞台にした「未来図」の形で、現在の香港社会が内包する問題を果敢に描き出した自主映画。

 15年末に現地で公開されると、自主映画としては異例のヒットを記録。香港のアカデミー賞といわれる香港電影金像奨で最優秀作品賞を受賞した作品だ。

 各話のタッチ、登場人物は異なるが、共通するのは、中国の力に押されている現実への不安が濃厚に投影されていること。政治的謀略の道具にされる者たち。中国の標準語「普通話」普及政策に翻弄ほんろうされる中年男、雨傘運動後を生きる若者……。映画が進み、ドラマが積み重なるにつれ、観客は自然と思考をめぐらせている自分に気づくだろう。多様性と自由について。そうしたものを奪われる痛みについて。痛みをもたらすものの正体について。描かれる数々の物語は香港はもちろん、あらゆる社会の人々にとっての警句となる。

(C)Photographed by Andy Wong, provided by Ten Years Studio Limited

 いたずらに恐怖をあおる映画ではない。プロデューサーでもある伍嘉良ンガーリョン監督による第5話「地元産の卵」で映し出されるのは、その地の人々の世代を超えたプライド。誰かの言いなりになる怖さと、自分で考えることの強さ。締めくくりのドラマは、それまでの4話を照らし返しながら見る者の心にしみていく。1時間48分。新宿・K’sシネマ。(恩田泰子)