「彼女の人生は間違いじゃない」震災後の故郷を切々と描く

シネマレビュー

「彼女の人生は間違いじゃない」(c)2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

 6年前のあの日。家族を、家を、仕事を、そして古里を奪われた人々の今。監督は「ヴァイブレータ」や「さよなら歌舞伎町」を手がけた廣木隆一。故郷・福島を舞台とした自身初の小説を基に、東日本大震災後の人々を見つめた劇映画である。

 地元の市役所に勤めるみゆき(瀧内公美=写真)は震災で母を亡くし、仮設住宅に父(光石研)と暮らす。父は原発事故で自宅も農地も失い、パチンコ浸り。彼女は週末、高速バスで東京の派遣型風俗店のアルバイトへ。

 店のスタッフ(高良こうら健吾)との人間らしい交流はあるものの、性を切り売りする仕事に救いなどあるはずもない。再会したかつての恋人と肌を重ね、自分の気持ちを確かめようとしても、失われた愛は取り戻せないようだ。心の隙間はいつか、全身を侵す痛みと悲しみに変わっていく。瀧内の力強いまなざしは鏡のように、今、この瞬間の感情を映し出す。過去にはピンク映画も作り、人間の愛欲や心の衝動を描いてきた廣木らしい見せ方である。

 答えを見いだせないのは彼女のみではない。父は亡き妻への思いと農業への未練を断ち切れない。復興に情熱を燃やす市役所の新田(柄本時生)も、震災を境に家族がバラバラに。みゆきの隣人の元原発職員は周りから中傷され、その妻は自殺さえ試みる。「私、なにか悪いことでもしたんでしょうか?」。彼の問いに、誰が答えられるだろう。

 みゆきがうつろな顔でもたれる高速バスの窓外には高圧鉄塔が並び、かつての自宅が残された避難指示区域は無人の街と化している。新田は被災地の現状を卒論に書くという東京の女子大生からデリカシーのない質問攻めに遭う。東京で消費される電力のために土地を汚され、心を土足で踏み荒らされる。福島の人々の悲しみと怒りを、廣木は何げない映像で切々と訴えていく。今、この国が抱える矛盾を問いながら。

 どんな悲劇に見舞われても、命ある限り人生は続く。心のどこが欠けてしまったのか、どう生きればよいのか、答えは見つからぬまま。だが、もがき続ける登場人物それぞれに、やがて変化の兆しが見えてくる。ありふれた日常の光景に救いを予感させるラストシーンは、観客に優しく語りかけるようだ。そう。「あなたの人生は間違いじゃない」と。R15指定。1時間59分。ヒューマントラストシネマ渋谷など。(武田裕芸)