“ヒロインの破壊”が成功のカギ 「はいからさんが通る」原作者が語る

 大正時代の女学生の恋愛模様を描いた人気少女マンガ「はいからさんが通る」が今年、作品完結40周年を迎えて、前・後編の新作劇場版アニメーションとして公開されることになりました。

 矢絣やがすりの着物に、えび茶のはかま。編み上げブーツに、髪にはリボン――。大学の卒業式シーズンにおなじみのファッションですが、その普及に大きな影響を与えたと言われているのが、「はいからさんが通る」です。1975~77年にかけて「週刊少女フレンド」に連載された大和和紀さんの作品で、21世紀になった今でも、世代を超えて読み続けられています。

 大正時代を舞台にしたキャラクターたちのファッションは当時も話題になりましたが、大和さんは先日開いた記者会見で、「『時代物はウケない』とわかってはいたが、えび茶色の袴が描きたくて編集部を説き伏せたのです」と、当時の裏話を明かしました。

 ヒロインの花村紅緒は17歳の女学生。祖父の代から決められた許婚・伊集院忍少尉との結婚にとまどい、反発していましたが、徐々に少尉に魅かれていきます。作品後半では、紅緒が“職業婦人”として雑誌記者になり、周囲の協力も得て、たくましく生きていく様が描かれています。

 「大正時代は、太平洋戦争に向かっていく気重な時代だったと思うけれど、作品ではそんな社会状況の中で明るく生きている女性を描きたかった。『読んで元気になってほしい』という思いを伝えたかったのです」と大和さんは言います。

 通常の少女マンガとは違い、ヒロインである紅緒のはちゃめちゃなギャグシーンがあったり、 酒乱の設定をしたりなど、当時としては異彩を放っていたようですが、「この作品の骨子は(少女マンガの)“王道”。だから、どんなにギャグで壊しても大丈夫だと思った」のだとか。

コミックス「はいからさんが通る」のヒロイン・花村紅緒   (C)大和和紀『はいからさんが通る』/講談社

 これまで、テレビアニメや劇場実写映画、テレビドラマと、様々なフォーマットで展開されてきた作品ですが、新作アニメ映画では、キャラクターの絵が原作と異なり、現代風にアレンジされています。

 キャラクターの絵柄が発表された際、ツイッターなどのSNSでは「絵が(原作と)違いすぎる」といったリアクションが噴き出しましたが、新しいファンには「キレイ」「かわいい」とおおむね好評のようです。

 「そもそもアニメの絵とマンガの絵は違います。私は現代的な絵が良いと思いました。古い絵柄だと“重い”と思いますよ。ただ、『キャラクターやストーリーのイメージを崩さないでほしい』とは要望を出しています」と大和さん。

 映画だけでなく、今年9月からは弥生美術館(東京・文京区)で原画展の開催が予定されていたり、10月には宝塚歌劇で舞台化されたりと、「はいからさんが通る」は完結から40年の時を経て再び話題を集めています。

 「笑いながら描いて、読者も笑いながら読んでくれて、楽しかった」と、大和さんは連載当時を振り返ります。「はいからさんが通る」が醸す、大正ロマンの香り。大和さんは「原作ファンだけでなく、初めて作品に触れる若い読者にも楽しんでもらえるようにしたい」と抱負を語っていました。(杉山智代乃)

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 アニメーション映画「はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~」は11月11日より新宿ピカデリーほか全国の劇場で公開。「はいからさんが通る 後編 ~東京大浪漫~」は、2018年公開予定。

 宝塚歌劇ミュージカル浪漫 「はいからさんが通る」は大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで10月7日~15日、東京・日本青年館ホールで10月24日~30日に上演。

 「はいからさんが通る」 展 ~大正♡乙女らいふ×大和和紀ワールド!~ は東京・弥生美術館で 9月29日~12月24日に開催される。