「メアリと魔女の花」ブレーキなしの躍動感

シネマレビュー

(C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会

ジブリから独立、米林監督の長編アニメ

  「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の米林宏昌監督による長編アニメーション3作目。約20年在籍したスタジオジブリ退社後初の監督作で「魔女」をめぐるファンタジー。

 宮崎駿監督「魔女の宅急便」をはじめ、ジブリ作品と比較されるのはほとんど宿命。予告編が公開されるや「ジブリっぽさ」を揶揄する声もあがったが、この映画、空虚な亜流ではない。監督は、自身が今語るべき物語を臆せず、緩急自在の表現で描いていく。
 主人公のメアリ(声・杉咲花)はとっても元気な女の子だが、田舎の村に越してきたばかり。何だか空回りして身の置き所がない。変わりたい。そう思っていたメアリは、森で見つけた魔女の花「夜間飛行」の力でつかの間、魔法が使えるように。魔法世界の大学で有望な魔女ともてはやされるが、村の少年ピーター(同・神木隆之介)を巻き込んだ大事件が起きる。

(C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会

 ほうきで雲海を突き抜けた先には魔法世界。奇妙な住人たちが織りなす、カラフルで奇想天外な情景はまさに目へのごちそう。ただ、物語が大きく動くのはその後、魔法大学の校長(同・天海祐希)と魔法科学者(同・小日向文世)の野望が明らかになってから。2人は魔女の花の強大な力を利用してかつて犯した過ちを繰り返そうとする。それに対してメアリは魔法ではなく己の力で立ち向かわねばならないと悟る。
 この映画は、それぞれを描く映像の力を拮抗させていく。校長たちが身を置く不思議な世界も魅惑的だが、それ以上に、メアリのひたむきな姿をいとおしく描く。躍動的なヒロイン、そして彼女と共にある動物たちの確かな存在感に、見る者の身体感覚を思わず共鳴させるのである。
 米林監督は、生身で実感できるダイナミックな表現をブレーキをかけず思い切り貫く。だからこそ、この映画は絵空事で終わらぬ力を帯び、現実世界の鏡となる。魔法に頼らずに前へ進もうとするメアリは、ジブリを離れて歩み出した同監督にも無論重なる。1人の力だけで戦うのではないという点でも。
 メアリも物語も激動するが折に触れ、一息つける漫画的描写も。その点にも監督の豊かな身体感覚を感じる。何を美しいと思うか。何を伝えていきたいか。作り手の思いがあふれんばかりの新たな始まりの一本だ。1時間43分。日比谷・TOHOシネマズスカラ座など。(恩田泰子)