「ボンジュール、アン」大人の女性の人生の寄り道

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エレノア・コッポラ監督(右)とダイアン・レイン。「アン役はダイアンにお願いすると最初から決めていたわ」とコッポラ監督=栗原怜里撮影

81歳のエレノア・コッポラ監督の初長編劇映画

 7月7日公開の「ボンジュール、アン」は大人の女性の“寄り道”の物語だ。監督は米国のエレノア・コッポラ。巨匠フランシス・フォード・コッポラの妻で、彼の代表作「地獄の黙示録」の製作現場を紹介した「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」(1991年)などドキュメンタリーを手がけてきた。現在81歳。本作が初の長編劇映画だ。

 「これからどうするの?」。米国人のアン(ダイアン・レイン)は悩んでいた。娘は手を離れ、映画プロデューサーの夫マイケルは仕事一筋。だが、ひょんなことから夫の仕事仲間のフランス人男性ジャックとカンヌからパリへ自動車で旅することに。景色がよければ休憩し、おいしい食事に舌鼓――。7時間で着くはずが、なんと行程は1泊2日に延びてしまう。 洒脱しゃだつで機知に富むジャックとの旅を楽しむうちに、アンは本当にやりたかったことを思い出していく。

モデルは夫、「人生はその瞬間瞬間が美しい」

 「スローダウンした人生を生きましょうと伝えたかったの。多忙な時代だけど、ゆとりを持って自然を楽しみましょう。テラスでワインを飲んだり、午後にはアイスクリームを食べたり、余裕を持って人生を楽しみましょうよって。人生はレースじゃないんだから」

 マイケルは夫フランシスがモデル。物語の骨格は、2009年に自身がフランス人男性と旅をした経験に基づいているという。彼が自然と戯れ、食を楽しむ生き方に感銘を受けたという。「例えば米国の撮影隊の昼食時間は30分。でも、フランスは規則で1時間取らなきゃいけないのよ」

 当時の彼女は70歳代だったが、アンは50歳代の設定だ。「50歳代は子育てが終わったいわゆる女の変化期。人生の次の章をどう生きていくか問われる時期の女性を描くほうが面白い。それと、若者向けの映画はたくさんあるけど、中高年向けは少ないでしょう? だから40歳以上の人が楽しめるような映画を作ったの」。立ち往生した女性を軽やかに演じたレインを「これ以上ないほど良いキャスティングだった」と評価する。

 1936年米国カリフォルニア州生まれ。デザイナーとしても活躍し、刺しゅう画などを制作してきた。息子と娘も映画人だ。

 「私の人生はビジュアルを求め続けた旅。衣装デザインや彫刻、写真といろんなことをやってきた。長編映画もその一つ」。劇中、アンが風景や料理、刺しゅう画のディテールを盛んにカメラで撮影するのは「どんな所にも美しいものがあると示すため」と言う。「美に気づけるかどうかはその人次第。人生はその瞬間瞬間が美しいのよ」(武田裕芸)