ラピュタのパン、千と千尋のおにぎり、ジブリの食をたどる

展示室入り口の様子 (c)Studio Ghibli (c)Museo d’Arte Ghibli

 食べものがおいしそうで、それを食べる人たちの気持ちやキャラクターが伝わってくる。そんな印象的な食事シーンが、スタジオジブリ作品にはいろいろある。記憶に残る場面はどのように生まれるのか。原画や制作資料を通してひもとく企画展示「食べるを描く。」が東京の三鷹の森ジブリ美術館で行われている。

食事場面で見るジブリ企画展「食べるを描く。」 

展示室内には原画や制作資料の展示パネルが並ぶ(c)Studio Ghibli 
(c)Museo d’Arte Ghibli

 「天空の城ラピュタ」の目玉焼きのせパン、「ハウルの動く城」のベーコンエッグ、「崖の上のポニョ」のハムとゆで卵のせ即席ラーメン、それから、それから……。展示室入り口には、印象的な食事シーンのスチールと、映画に登場する食べものの「食品サンプル」が並ぶガラスケース。「千と千尋の神隠し」の〈神さまの食べもの〉のように不思議なメニューもあるが、並んでいる食べものの多くは身近に感じられるもの。それらがなぜ強い印象を残すのか。今回の展示では、さまざまなジブリ作品の絵コンテや原画といった制作資料を軸に、食べものをどんな線と色で表現し、どんな状況でどう食べさせているかを、解説つきでパネルにまとめて紹介している。
 例えば、「紅の豚」でヒロインの一人、フィオがレモネードを飲む場面のパネルを見ると、小さな瓶に入ったレモネードを描くためにさまざまな色の塗りわけが指示されている。また、水面の動きなど作画について、監督からの修正指示も入っていて、細やかな描写によって「おいしそう」と思わせるシーンが生まれているのがわかる。

「再現」されたタイガーモス号の厨房

 「千と千尋の神隠し」で主人公の千尋が、ハクという少年からもらったおにぎりを食べる場面については、食べ方と感情の変化が密接に結びついていることを原画を通して示し、物語表現の力と忘れられないシーンは表裏一体であることを浮かびあがらせる。
 また、「となりのトトロ」のサツキとメイの家の台所、「天空の城ラピュタ」のタイガーモス号の厨房ちゅうぼうを実物大で「再現」した展示も。ジブリのアニメーションの魅力をさまざまな形で再発見できる場だ。(恩田泰子)

 「食べるを描く。」は来年5月までの予定。三鷹の森ジブリ美術館の入場は日時指定の予約制。チケットはローソンのみで販売。問い合わせは(電)0570・055777(ごあんないダイヤル)。

宮崎吾朗監督に聞く…メニュー、絵、食べ方すべてに意味

 「食べるを描く。」の企画・監修は、「ゲド戦記」「コクリコ坂から」の宮崎吾朗監督。これまでにも数々の企画展示を手がけてきた同監督に狙いを聞いた。

 実は、原画などを今回のような形で並べて「こういうふうに動かしています」という展示をしたのは初めて。(一般の人にとっては)なかなかどう見ていいのかわからないところがあって展示になりにくい部分があったので。ただ、食べるということに絞っていろいろな作品を見ていくと、共通点や違い、何に注意しているかも見えてくる。僕にとってもすごく勉強になりました。
 なぜおいしそうに見えるか。それはシチュエーションや話の文脈とも関係があるし、食べものも選ばなきゃいけない。千尋がハクからもらうのはおにぎり、それも白い塩むすびというところに意味があって、それはハクのまじりけのない心の象徴。宮崎(駿)監督は、やっぱり食べものに意味づけするのが上手。目玉焼きがよく作品に出てきますが、誰もが知っている、共通体験として持っているものを使うと、みんなが見ておいしそうと思うわけで。
 さらにそれを線と色でどう表現し、どう食べさせるか。演出、作画、色彩設計と、いろいろな技術が組み合わさって印象的になる。誇張しつつ単純化するセルアニメーションの技術が、食べるという行為に集約されている。
 食事シーンが豊かに描けていると作品世界が広がる。「ここには人が生きていて、生活がある」というのを伝える一番いい方法。人が心を通わす時に食事を共にする、分け合うというのは僕らにも体験としてあるわけですし。
 全作品から展示を、と思いましたが、場所が限られているので、「これ、みんな知ってますよね」というものを中心に据えつつ、「ホーホケキョ となりの山田くん」とか、「これはすごいんです」というのを入れておこうと。
 食品サンプルは僕自身、ジブリのごはんが並んでいるのを見てみたいから、みんなも見たいに違いないって。サツキとメイの家の台所など「(映画では)こうだったね」って話したり遊んだりできる場所も作りました。