「パーソナル・ショッパー」 セレブに成り代わる快感

シネマレビュー

「パーソナル・ショッパー」(C)2016 CG Cinema ―VORTEX SUTRA ―DETAILFILM ―SIRENA FILM ―ARTE France CINEMA ―ARTE Deutschland / WDR

 オカルトは、一般的には心霊現象を指すが、語源は「隠されたもの」だ。この作品は、二つの意味で「オカルト」を描いている。

 主人公の若い女性(クリステン・スチュワート=写真)は霊媒師。3か月前に死んだ双子の兄が、あの世から送ると約束したサインを待っている。いわゆるホラーではないが、心霊現象が度々描かれる。それが兄からのサインなのかどうか、彼女には分からない。

 一方で、彼女は忙しいセレブに代わって、衣服やアクセサリーを買って届ける「パーソナル・ショッパー」という仕事をしている。彼女はいつしか、セレブのドレスを着て、別人になりたいと思うようになる。それは職業上、固く禁じられた行為だった。だが、謎の人物によって、彼女の「隠されたもの」、すなわち秘めた欲望が刺激される。彼女が禁を犯し、セレブの服を着て性的な興奮を覚える場面は、実に官能的だ。

 二つの「オカルト」は影響し合っているのだが、物語としてはうまくかみ合っていない。彼女は殺人事件にも巻き込まれていくが、事件の経緯も、心霊現象の意味も、謎の人物の正体も、全てが曖昧なまま終わってしまう。

 だが、オカルトとは本来、見ようとすれば見えず、無視すれば意味ありげに顔を出す曖昧なものだろう。その意味で、オカルトの本質をこれほど誠実に知的に描いた作品は珍しい。鬼才オリヴィエ・アサイヤス監督らしい異色作だ。1時間45分。TOHOシネマズ六本木ヒルズなど。(小梶勝男)