実写版「美女と野獣」 まさにディズニー夢の世界

シネマレビュー

 今、ディズニーとは何か? と問われれば、これが答えかもしれない。どの場面を切り取っても、ほぼディズニーの世界。綻びのなさは見事というほかない。

 アニメーションとして初めてアカデミー作品賞にノミネートされた、1991年のディズニーの同名ミュージカルの実写版だ。ストーリーは、細部は違うがほぼ同じ。有名な主題歌をはじめ、アニメ版の楽曲はすべて使われ、新たに3曲が加わっている。

 魔女の呪いで野獣に姿を変えられた王子(ダン・スティーヴンス=写真右)が、美女ベル(エマ・ワトソン=同左)の愛によって人間に戻るまでの物語。元々はフランスの小説で、ジャン・コクトーによる46年の同名映画が知られている。ディズニー版はアニメも実写も、コクトー版のような怪奇幻想ムードは薄い。原作のロマンチックな部分を強調し、現代的な活劇を加えて換骨奪胎している。

 最大の見どころは、セットや衣装の豪華さだ。冒頭、ベルが朝の村を歩きながら歌う場面では、多くの村人たちの様々な動きをカメラがダイナミックに捉える。カメラが自在に動けるほど、巨大なセットが作られているのである。王子が暮らす氷に閉ざされた城の風景も、城の内部も、まさにスペクタクルだ。

 城では置き時計や燭台しょくだい、衣装ダンス、ティーポットなど、道具たちが歌い踊る。魔女に変身させられた王子の家来たちだが、彼らのミュージカル場面には、アニメでは出せない楽しさがある。動かないモノが動くという不思議さと、ユーモラスな味わいだ。

 美女と野獣が踊る場面で、アニメ版同様にカメラが天井まで動き、あの主題歌が流れると、やはり感激する。ワトソンの硬質で知的な美貌びぼうは愛を表現してもエロスを感じさせず、夢の世界を壊さない。

 全てがきれいすぎて物足りないとも思うが、無い物ねだりだろう。同性愛らしき人物が登場したり、道具から人間に戻った家来たちに有色人種がいたり、アニメ版になかった要素もある。現代的な価値観の表明だが、あえて表明するところにディズニーの本質的な保守性を感じた。

 2020年には、東京ディズニーランドに「美女と野獣」のアトラクションが完成予定という。この作品がアニメ版と現実のランドをつなぎ、ディズニーの世界はさらに広がっていくのだろう。ビル・コンドン監督。2時間10分。有楽町・TOHOシネマズ日劇など。(小梶勝男)