小西美穂さん、できない自分を見つめて生まれた「ほんわか」会話術 

日本テレビキャスター 小西美穂

 日本テレビの解説委員で「news every.」(月~金曜午後3時50分~)に出演する小西美穂さんが、初めての著書「3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を出版しました。延べ約1700人にも上る著名人のインタビューの中から生まれた会話術には、小西さんの仕事に対する思いと、働く女性としてのスキルが詰まっています。

著名人と生放送一本勝負、手探りで

 ――今回の本は、BS日テレ「深層NEWS」(月~金曜午後10時~)で生放送のキャスターを3年3か月務めた経験から生まれたと聞きました。

 各界で活躍される方を日替わりでゲストに来ていただく生放送の番組で、インタビューした人は延べで約1700人にもなりました。「そういう仕事をした女性はあまりいないから、本を書いたら」と出版社から言ってもらったのがきっかけです。私自身、そんな自分の体験をまとめたいという思いもありました。キャスターというと、もともとコミュニケーション力があって、苦もなく会話ができると思われているようなのですが、いえいえ、そんなことはない。たっぷり失敗して、苦労しましたので(笑)。

 ――秒単位で進行する生放送番組で話を引き出すのは大変ですよね。

 身の丈よりも難しくて大きな仕事が来たということだと思います。放送開始2日目のゲストが安倍総理で、歌舞伎の松本幸四郎さん(九代目)や読売巨人軍監督だった原辰徳さんなど、普段は会えないようなゲストに会えるのは光栄だったのですが、生放送の一本勝負。衆人環視の中で、その人の魅力を引き出さなきゃいけない。森羅万象さまざまなテーマを扱ったので、苦手な分野もありましたし、毎日分厚い資料を持って帰って、さあどうしようっていう感じでしたね。

 ――ゲストは話し好きばかり、というわけではないでしょう?

 気難しい方もいらっしゃいますし、道を究めた方にこんなことを聞いて失礼じゃないかな、と探り探りでやっていきましたよね。限られた時間の中でいかにその人の個性を引き出すか、私はスター選手じゃないので、準備しないと自信がないんです。でも、準備して段取りしすぎると、その場で面白い話が出てもスルーしてしまう。難しいです。

落ち込む自分を励ます「前向きになれる改善ノート」

 ――日々の体験をノートにまとめていらしたとか。

 2種類のノートを作ったんです。一つは、ダメだったところを書く反省ノート。番組が終わった後に、スタッフと一緒に番組を振り返ると「あそこでなぜ突っ込まなかったのか」とダメだった点を指摘される。落ち込みます。でも、同じ失敗を繰り返さないようにするには、失敗談の塊でも書いておかなきゃいけない。

 それとは別に、前向きなノウハウを集めたノートも作りました。後から見返してダメな点ばかりが並んでいると、読んでいてつらくなるじゃないですか。何度も見返して、自分の血肉にするために、こうしたらうまくいくんじゃないか、という改善点を書いたんです。討論番組を仕切る先輩キャスターや、座談の達人の大物議員、落語家さんやタレントさんまで、いろんな人と会ったり、対談番組を見聞きしたりした時に、「うまいなぁ」「こうやったらいいのか」という言い回しやフレーズ、間合いなど、参考になることを書き記しておきました。

 ――本はその改善ノートが基になっているんですね。「名刺を渡す時には、短い言葉を添える」とか、「話の糸口を作る時には、相手がうなずきやすい話題から」など具体的で、体験に裏打ちされたアドバイスです。

 マニュアルがあるわけではないので、完全に自己流、小西流です。毎日違う人とお目にかかると「この人、話しやすいなぁ」と、違いが見えてくるんですよ。名刺を渡した時に「美穂さん、いい名前ですね」と言われると、会ったばかりなのに、ほんわかした気持ちになる。本当にちょっとしたコツや心がけなんですけどね。

キーワードは「ほんわか」 、重宝される「聞き上手」

――小西流コミュニケーションのキーワードが「ほんわか」です。

 関西に「大阪ほんわかテレビ」(読売テレビ)という長寿番組があります。家族みんなで笑える情報バラエティーで、その温かい空気感が、私が思う理想のコミュニケーションなんです。初対面だと誰でも「この人、どんな人なんだろう」という心配や緊張がありますよね。それをちょっとした言葉のかけかたや自分の態度で取り除き、気持ちをゆるっと解きほぐして、話しやすい雰囲気を作る。互いに気持ちよく会話を交わせると、「また会いたい」と思われますよね。

 ――それが「3秒で心を開き、10分で信頼させる」ことなんですね。人と話が弾まなくて困ったり、雑談が続かなったり、コミュニケーションに悩む働く女性も多いと思います。

 行きつけの美容院の美容師から「子どものお迎えで保育士さんとどんな会話を交わしたらいいかわからない」と打ち明けられました。「目上の人との雑談でどんな話をしたらいいかわからない」「言いにくいことを相手に伝える時にどう言えばいいか」という悩みも聞きます。

 今はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で直接会わなくてもコミュニケーションができるだけに、面と向かって話すのが苦手な人が増えているのかもしれません。だからこそ、人と対面で会話を深める価値はむしろ高まっていて、人の話を受け止められる聞き上手は重宝されます。女性が働くうえでも、人生においても、相手との距離を縮めるコツは知っておいて損はないと思います。

ベッカムの視線の先に陣取る戦略で笑顔ゲット

 ――小西さんは報道記者として関西で仕事をし、ロンドンに赴任してサッカーのベッカム選手を追いかけたんですよね。

 根っからの関西人で、なにわのたたきあげの記者です。自分にしかできない仕事をしたいと、ずっと思ってきました。ロンドンに行った時に、スーパースターのベッカムに自分のことを覚えてもらうにはどうしたらいいかを考えて、会見の時にベストポジションの真正面じゃなくて、あえて必ず少し斜め前に座って、ベッカムが視線を外した時の視野に入るようにしたんです。「ベッカム、きょう私の方見た!」と周りに言うと、「また言ってるよ、小西が~」(笑)という反応でした。でも、終わりの方はバッチリ私が持つカメラを見て話してくれましたよ!

 ――なぜ記者という仕事を?

 子どもの時にテレビ番組の「兼高かおる世界の旅」を楽しみに見ていて、特派員になって世界を見たいと思いました。また、大学時代には、日本に上陸したばかりのラクロスに出会い、全日本代表選手になったこともあって、それを広めたいというのもあったんですけれど。読売テレビに入って、関西に育ててもらったという思いはあります。

「自分大会」友達のダメだしで「おしゃれな女」に

 ――ところで、パートナーは10歳年下なんですよね。

 40歳になったころ、いい相手と巡り合うにはどうしたらいいかと考えて、いろんな角度から自分を見直そうと、女友達と一緒に「自分大会」を始めたんです。いろんなエキスパートから意見を聞いて、どれだけ自分を磨けるかという。その「自分大会」を1年ほどやった後に彼と知り合って。

 ――自分大会って、どんなものですか?

 自分による自分のための自分大会(笑)。女友達が「応援する」と面白がって協力してくれて。スタイリストの友達を家に呼んで、クローゼットを全部見てもらったら、「はい、これは時代遅れ」「黒ばっかりでつまらない」と、どんどん捨てられる。美容部員の経験のある友達が私の化粧道具をチェックして「こんなラメは若い人にしか似合いません」と買ったばかりのアイシャドウをゴミ箱に……。きついことをバンバン言われて、これまた苦行ですよ(笑)。

 でも、アドバイスをとりあえずはやってみる、人の話を素直に聞くと決めました。年を取るとつい頑固になっちゃうでしょう。そうならないように試してみたら、周りからもちょっと変わってきたねと言われて、うれしくなって。パンツしかはかなかった私がスカートもはき、友達とパワースポット巡りをしたり、香水や下着のアドバイスも受けたんですよ。知り合った後で、彼に「私の第一印象どうだった?」って聞いたら、「おしゃれで感じのいい人だと思った」(笑)。

 ――テレビの画面からは見えない努力があったんですね(笑)。現在の仕事はニュース番組の解説者がメインです。

 視聴者との距離感を大事にした番組なので、目の前にいる仲の良い友達に話しかけるように、わかりやすい解説を心がけています。「今日はどんな解説をするのだろう」と楽しみにしてもらえるようになるまで、日々を積み重ねていきたいですね。

仕事のお供
スマートフォンのカバーやポーチもヒョウ柄。「好きなんです、関西人だから(笑)。ポーチはもう一つ持ってます」。

小西美穂(こにし・みほ)
日本テレビ解説委員・キャスター。1969年、兵庫県生まれ。関西学院大学卒業。1992年、読売テレビ入社、報道記者として阪神・淡路大震災などの取材や、ベストセラー「だから、あなたも生きぬいて」(講談社)のきっかけになった大平光代弁護士の密着ドキュメンタリー番組などを制作。2001年から3年間ロンドン特派員。帰国後、政治部記者を経て、06年日本テレビ入社。報道キャスターに。