「人生の1本」となる映画を届けたい PPLの岡田愛由さん

Cover Story

 女性の心に響く映画を選び、「新宿ピカデリー」(東京)など全国の松竹系劇場で上映している「ピカデリープライムレーベル」(PPL)。上映作品を選んでいるのが岡田愛由まなゆさん(27)です。社会人になって5年目で社長に直談判し、カンヌまで映画の買い付けに行ったという彼女の仕事への思いを聞きました。

――PPLは、2015年に松竹系の劇場運営会社「松竹マルチプレックスシアターズ」が作った女性向けの新しい映画レーベルですね。

 幅広い世代のお客様、特にこれまでミニシアター系の映画を見たことがないような若い世代の女性たちにも、洋画を楽しんでほしいと思って始めたプロジェクトです。私と同世代の女性の心に届くように、私が映画のラインアップを選ぶ番組編成や運営を担当しています。もともと、新しい映画館が次々にできて競争が激しくなる中で、「新宿ピカデリー」がより女性に選ばれる心地よい場所になるために始まったんです。 

―― 映画館の生き残りをかけたプロジェクトの一環ですか。

 男性陣も含めて、会社を挙げて、多くの人が関わっているだけに、ロゴや宣伝も百貨店のように品が良くて、それが逆に、若いお客様には届いていないのではという思いがありました。それで、去年の下半期に、お客さんに一番近い立場にある私に映画を選ばせてほしいと、社長に直談判しました。

――直談判ですか!

 担当するからには、責任を持って、自分が納得してやりたいと思って。うちの会社は1フロアなので、相談しやすいんです。それで、社長に「ちょっといいですか」と時間を取ってもらって(笑)。

―― それで反応は?

 「そんなに思い入れがあるならやってみなさい」と言われて、今年の5月にカンヌに行って、来年以降のラインナップを決めてきました!

同世代の女性が共感する映画を選びたい

―― 会社の収支を左右する映画を決めるのは怖くなかったですか。

 そうとう勇気がいりましたね。私の周りには映画の目利きの大先輩や、試写を見ただけで興行収入がいくらになるかをほぼ正確に見抜く上司もいます。私にそんな力も経験もないと思っていて……。ただ、社長から「自分が行って決めてくるなら、自分がその映画の一番の応援団になれる作品を見つけてこい。絶対ヒットすると信じて突き進める映画を選んでこい」と言われたので、自分がそう思えるかを考えて選びました。

―― 岡田さんが一番ほれ込んだ映画は?

 来年秋に公開予定の「Modern Life is Rubbish(原題)」。キャリアウーマンのナタリーが売れないミュージシャンと出会うラブストーリーです。私と同じアラサーで、恋と仕事の間で悩み、「ナタリー、それわかるー」と共感できるシーンがいっぱいあって。同じように共感してくれる人が多いはず。どんなふうに宣伝したいかまで自分の頭の中で思い浮かんだので、突き進みました(笑)。

―― 映画が当たるかどうか、ヒットの法則ってあるんですか?

 キャストやストーリーなど、何がしか人の興味を引く「フック」を考えて選びますが、必ずそれで当たるかというとそうでもない。難しいです。PPLを通して、普段ミニシアター系の洋画を見ない層にも見てもらえる環境を作りたい。それで、いつか「PPLだから見てみようか」と言ってもらえるレーベルになるのが目標。みんなから「後は結果を出すだけ」と言われているので、背水の陣です(笑)。

―― もともと映画好きだったから、この仕事に?

 高校時代に台湾に1年留学して、日本の映画やドラマなどが向こうでも人気だと知りました。それでメディアに興味を持って、大学で映画を作るゼミに入り、松竹に入社しました。でも、特に映画通というわけでもないんですよ。旧作はあまり見ないですし……。高校生の時に見た「リトル・ミスサンシャイン」(2006年制作のアメリカ映画。ビューティー・コンテストに出る9歳の女の子が主役の心温まるコメディー)が大好きで、今でも嫌なことがあったら繰り返し見て、元気をもらっています。そんな「人生の1本」の映画に新宿ピカデリーで出会ってもらえたら、と思っています。

―― 落ち込むことは?

 頑張ったのに今ひとつお客さんに届かなかった時です。会社も若い私に任せるというリスクをとってくれたので、プラスになるよう頑張っていくしかないと腹をくくっています。落ち込んだ時には、松竹の先輩と飲みに行って、話を聞いてもらってスッキリという感じです。

―― 仕事をしていて良かったことは?

 一番うれしいのは、お客さんの反応が良かった時。初日に必ず劇場に行くのですけれど、お客さんの入りが良かったり、アンケートに「泣きました」「感動」と書いてあると、気持ちが届いた気がして、うれしい。PPLのツイッターも始めたんですが、そこで「PPLに期待してます」っていう投稿を見つけて、思わず自分のスマホで撮りました。宝物です。

岡田愛由(おかだ・まなゆ)
 1990年、愛知県生まれ。青山学院大学を卒業し、2013年4月に松竹に入社。同年7月に松竹マルチプレックスシアターズ(SMT)出向。新宿ピカデリーでマネジャーを務め、14年からSMT番組編成部番組編成室勤務。