アートなケーキがSNSで話題!セレブにも人気の鈴木ありささん

ケーキデザイナー 鈴木ありさ

 ブルーと白の6段の土台にイチョウや鶴が舞う片岡愛之助さんと藤原紀香さんのウェディングケーキに、お気に入りのフィギュアが並ぶ渡辺直美さんのバースデーケーキ。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でも話題になった華やかなケーキを作ったのは、ケーキデザイナーの鈴木ありささん。ニューヨークで修業を重ね、アートな作品を作り上げる鈴木さんの思いを聞きました。

―――― 鈴木さんの肩書は「スペシャルティ・ケーキデザイナー」と書いてありますが、どういう職業ですか?

 日本ではまだなじみのない言葉かもしれませんが、ただお菓子を作るだけでなく、誕生日や結婚式やパーティーなど、お客さまの要望に応じて、“世界で一つだけのケーキ”をデザインして作る仕事です。アメリカでは職業として確立されています。

―――― 小さいころから“ケーキ好き”だったのですか?

 どちらかというとケーキを食べなかった方かも。ただ、アメリカに留学経験のある母が、凝ったものではありませんが、シンプルなベイクドケーキを頻繁に作ってくれました。うれしかったし、友人はいまでも私のお誕生会の時のケーキのことをよく覚えているそうです。私も趣味で家族のために作ったり、学校に持っていって友人にあげたりしていました。けれど、ケーキ製作が仕事になるとは、子供の頃は思ってもみなかったです。

片岡愛之助さんと藤原紀香さんのウェディングケーキ

―――― いつからケーキ作りを職業にしようと思ったのですか? 

 大学1年の終わりに友人を訪ねてボストンへ遊びに行き、ウェディングケーキやパーティーで出すケーキをデコレーションするビジネスがアメリカにあることを知って、「これだ」と思ったのです。

 絵が好きで、玉川大学芸術学部に入学していました。様々なアートに出会い、好きになったものもあったのですが、どれもピンとこない。そんな時に知ったケーキデザイナーという職業が非常に魅力的で「なりたい」という気持ちが大きくなり、留学を考え始めました。

―――― 菓子の留学というとフランスのイメージがありますが、留学先はニューヨークにある料理大学「カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ」の製菓学科。“料理業界のハーバード大学”とも呼ばれるところです。

 お菓子を学ぶと言うと、だいたいフランスに行くのですね。でも思った以上に母の影響は大きかったようで、アメリカへの留学しか考えませんでした。ただ、日本人の同世代でこの学校に行った人があまりいなくて、ハードルが高かったのは事実です。やっと入学できたのは大学時代の友人たちが卒業した年でした。父の知り合いの方に偶然OBがいらして、いろいろな情報と後押しをしていただきました。

―――― 勉強は大変でしたか?

 座学や実技、レストランマネジメントなど多岐にわたる授業があったのですが、印象に残っているのは、1年生と2年生の間に学生寮を出て、5か月間インターンシップに出ることでした。“自分が就職したいところに仮就職”するという雰囲気でした。

大きなイベントに出すケーキの試作をする鈴木さん。「チョコレートケーキをベースに作ってみようと思ってます」

―――― そのインターンシップ先が、ニューヨーク・タイムズ紙で、「ウェディングケーキ界のマノロ・ブラニク(高級靴の有名ブランド)」と評された有名なケーキデザイナーのロン・ベン・イスラエル氏です。

 そうです。無給でしたが、ロンの下で働きたかったので、一か八かでトライアルを受けたら合格しました。一日中、小さな花を作っていたのですが、そのおかげで技術も上達しましたし、注文してきたクライアントとロンが話している姿や、スタッフが大きなケーキを作っていくやり方を見ることができたのが収穫でした。現在、自分のスタジオを運営するに当たっても、非常に役立っています。

 そして、私の後にインターンとして入ってきたシャーロット・ネヴィルという女性と意気投合し、卒業後、彼女の起業した会社のケーキデザイナーとして働くことになりました。

―――― その会社で2年間、ケーキデザイナーとして働いたのですね。

 シャーロットは元GAPの北米ヘッドデザイナーで、ファッション業界に非常に顔が広い人でしたが、大きな仕事を受けても一人で困っているところだったので、それを手伝うという形で働き始めました。400人前のケーキを手伝ったのが最初の仕事です。

「ヴォーグ・ファッションズ・ナイト・アウト 2017」にて、モザイクアートをトミーヒルフィガー表参道店で展示した

–––– 数々のセレブのためのケーキを製作したそうですが、印象に残る仕事は?

 (ファッション誌、米国版「ヴォーグ」編集長)アナ・ウィンターさんが顧客の一人でした。繊細な色使いやデザインを気に入ってもらえたからです。彼女が自分の別宅で、親友の誕生日パーティーを開いた際に、ケーキを届けました。パーティーのテーマは“1920年代”で、ファッション業界のトップが多く集まり、まるで映画の中に入ったような気持ちでした。以前からアメリカ映画の中で見た憧れのウェディングやパーティーのような世界を間近で見ることができ、携われたのが本当にうれしかったし、楽しかったですね。

–––– その後、帰国して「Alisa Suzuki Cakes」を設立するのが2014年です。

 日本でキャリアを積むためと、体調を崩した家族を見舞うために帰国したのですが、以前から私のブログを見てくださっていた方々からケーキのオーダーが入り、思った以上に忙しい毎日を過ごしています。

 ただ、日本でちょっと悔しいのが、ケーキに関しては、昔よりはオリジナリティーが出てきたのだけど、ことウェディングとなると披露宴会場に生のウェディングケーキの持ち込みが難しいことですね。持ち込みなどで追加料金が発生すると“そこまで持ち込みにこだわるのか”ということになりがちなのです。だから“食べられない(フェイク)ケーキ”を作ることになってしまうのです。

–––– 昨年、日本メンズファッション協会主催の第13回ベストデビュタント賞を受賞されました。これからの目標は何ですか?

 日本でケーキデザインという文化を広めていきたい。近い将来、アメリカに戻ろうとは思っていますが、それまでに日本で何ができるのかを考えたいです。ケーキ教室という形ではないのですが、現在、動画配信を企画していて、目で見て学べる環境を整えたいと思っています。

 ただの職人ではなく、お客さまと直接話して、一からデザインしたものを形にするということが、ケーキデザイナーとして一番の楽しみだと思います。お客さまからのイメージやリクエストを聞いて、私なりにイメージをふくらませてイラストを書き、ケーキを通して空間を作り上げていく。ケーキで人を楽しませるエンターテイナーになりたいと思っています。一目見たら「私のデザインしたケーキ」と分かるようなものを作っていきたいですね。

(聞き手:杉山智代乃、撮影:米田育広)

仕事のお供
 ケーキ作りには欠かせないナイフ類やスケッパー。ほとんどがアメリカで買い揃えたもので、用途に応じて何種類も使い分けます。

鈴木ありさ(すずき・ありさ)
 1987年東京都生まれ。2010年から約2年、料理業界のハーバード大学と呼ばれるニューヨークのカリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(通称CIA)製菓学科に学ぶ。学校代表で参加した国際コンペで最優秀賞と特別賞を受賞。2012年、知人が起業した会社のケーキデザイナーとなり、数々のセレブのためのケーキを製作。帰国後、自身のスタジオ「Alisa Suzuki Cakes」を設立。今年7月、「ALISA SUZUKIのスペシャルティ・ケーキとデコレーション」(産業編集センター)を出版。Facebook: @alisasuzukicakes  Instagram: @aliciasprinkles
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ALISA SUZUKIのスペシャルティ・ケーキとデコレーション [ 鈴木 ありさ ]
価格:1620円(税込、送料無料) (2017/9/20時点)