いとうあさこさん 19歳の家出から始まった人生のタイミング

 バラエティーにトーク番組に多方面で活躍するタレントのいとうあさこさん。40歳目前で売れるまでは、アルバイトとの掛け持ち生活でした。仕事との向き合い方や恋愛観などを2回にわたって紹介します。

実はお嬢様育ち?! 名門校卒業して19歳で家出

––––インターネットのサイトでは、実はお嬢さま育ちで、中高は「女子御三家」のひとつと称される名門進学校「雙葉」の出身と書かれていますね。

 私は幼稚園時代が優秀だったらしく、小学校受験で入ったんです。そこが人生のピークだったのかなって(笑)。同じ学年で大学に行かなかったのは、私以外にはいないんじゃないかな? 19歳で家を飛び出してしまったんです。遅い反抗期が来たことと、シンガー・ソングライターの尾崎豊さんとの出会いが重なっちゃって。「大人の言うとおりに動かない自分はカッケー!」みたいに思ったんでしょうね。

––––家出してミュージカルを目指した?

 いやいや、まずは馬車馬のように必死でバイトです。当時、アルバイト雑誌が分厚くて、バイト先はいくらでも見つかりました。6時から夜10時ぐらいまで働いたりして、月60万円とか稼いでいたんです。そうすると「お金って余るんだな」と気づきだして。その頃、バイト先である男性と出会ってしまって。その彼に借金があったため、それを毎月返済してちょうどトントン、みたいな状況でした。

––––バイトの後に芸能界に入るわけですが、何かきっかけがあったんですか?

 小さい頃から、芸能界へのあこがれはあったんです。実は、小さい頃から伊東四朗さん、いかりや長介さんのような、悲劇と喜劇の両方をこなせる役者さんってすごいなと思っていて。ただし、そんな思いはうっすらと持っていただけで、家出したのは、それが理由ではありません。そして23歳ぐらいの時、当時の彼の借金返済も落ち着いてきたので、夜学の専門学校に行ったんです。

––––専門学校というと、お笑い芸人を育成する学校かと思ったのですが……。

 入学したのはミュージカルの専門学校でした。けれど、やりたかったのは、やっぱり喜劇だったんです。バラエティー番組の「ボキャブラ天国」(フジテレビ系)が大人気で、「ネタ見せ」と呼ばれるオーディションがあったので、参加してみたら、知らない芸人さんが100組ぐらいいて、そんな簡単に売れるわけじゃないんだと1日目にして理解しましたね(笑)。大好きなお二人は、お笑いの世界で頂点に上り詰めたから、悲劇を演じても素晴らしいんだ、それなら、ちょっとこの世界を突き詰めてみようかなと考えたのです。

––––少し寸劇っぽい、シチュエーションコントのようなものをやっていたんですか?

 そうです。いわゆるコントでした。私がネタを書いていたんですが、やっぱりセンスが少し古かったと思います。最初は厳しかったですね。今ほど女芸人の居場所みたいなものが認められていたわけでもなかったですし。「やっぱり女芸人なんてつまんねぇじゃん」みたいな雰囲気もあって。だから、自信も持てなかったのに、よくやめなかったなと思いますね。

40歳を過ぎて牛丼屋の深夜バイトが続けられるかが不安でした

––––そんな中で、ご自身で模索して、変えてきた部分もあるのですか?

 いや、ただ続けるだけでした。なぜやめなかったのかが、自分でも理由がわからない。ただ、どんなことでも、自分の勘が働かないと動かないという性格なんです。すべてのターニングポイントの行動は、自分に聞くというか、勘次第みたいな意識があるのは確かです。途中でやめなかったのは、勘が働いたためかもしれません。もちろん、やめて何かやりたいことがあったわけでもありませんしね。

 当時、むしろ心配だったのは、芸人をやりながら牛丼屋で深夜のバイトをしていたんですが、40歳を過ぎたら、重たい肉塊が運べなくなるだろうなってことです。若い時には、9キロもある肉の塊を2つ運んで、冷蔵庫に入れられたんですよ。体力的にそれができなくなると、このバイトは続けにくくなるなと。年下のバイトさんにしてみれば、むしろやりにくいだろうなという心配もありましたし。

––––続けられるかどうか悩んだのは、そっちですか(笑)。

 そうなんです。だから不思議です。なぜ芸人をやめなかったのか。

――今やテレビに映らない日がないぐらい人気者です。

 「人気がある」と言われても、自分ではわからないです。ネットで調べると、やっぱりアンチの人もいますしね。でも、本当にありがたいです。地方へ行くと、おばあちゃんたちが気軽に声をかけてくれるんです。テレビの印象とあまり差がないからなのか、それとも実際に話をすると見たままの印象だからなのかははっきりしませんが、「思ったとおり丸いね」とか気さくに接してくれます。過去に付き合った彼氏のお母さんと、いつも異常に仲良くなっちゃうのと一緒で、そういう受けの良さにはちょっと気づいています(笑)。

(聞き手:本田麻由美、写真:秋山哲也)

 

いとうあさこ

1970年、東京都生まれ。私立雙葉高校卒業後、1997年に専門学校の同級生と「ネギねこ調査隊」を結成。2001年に「進ぬ!電波少年」(日本テレビ系)の企画“電波少年的15少女漂流記”に参加。03年にコンビ解散後、ピン芸人「いとうあさこ」として活動を始めた。「エンタの神様」(同)では、ウクレレを弾きながらの自虐的な漫談。「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系)では、1980年代のアイドルの細かすぎて伝わらないモノマネ。「爆笑レッドカーペット」(同)では、南ちゃんのコスプレで自虐ネタを披露。「R-1ぐらんぷり2010」では、初の決勝進出を果たす。現在は、「ヒルナンデス!」「メレンゲの気持ち」「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)や「大竹まことゴールデンラジオ!」(文化放送)などにレギュラー出演中。