「働く女性が自信を持てる」バッグを作る 幸田フミさん

 「FUMIKODA」と自分の名前をつけたバッグのブランドを昨年作った幸田フミさん。ITコンサルティング会社の社長で、15歳の息子の母でもあります。働く女性の実感を詰め込んだバッグへの思いと、ファッションとITと業種をまたいで仕事をするワークスタイルを聞きました。

––––昨年9月に、完成したバッグをパリの展示会で披露したと聞きました。どうして、バッグを作ろうと?

 もともと自分のために作ろうと思ったのがきっかけです。今年で会社を興して14年目ですが、日々パソコンと書類を持ち歩く時にふさわしいバッグがなくて。軽くて肩にかけられて、仕事先の会議室で床に置いても倒れない。それで、会食の席に持っていける華やかさもある。その全部のニーズを備えたバッグがほしかった。人に作ってもらうより、自分で作った方が早いじゃないかと思ったんですね。

––––本業はIT関連のコンサルティング会社ですよね。

 仕事を始めたのはニューヨークです。1996年からマーケティング会社で、デザイナーという立場で、ファッションブランドやモデル事務所のホームページを作っていました。そして、日本に戻って電撃的に結婚して、離婚して、息子を出産しました。
 会社を興したのは、子育てしながら働ける場がなかったから。当時のIT業界は夜遅くまで仕事をするのが当たり前で、就職は無理だと思った。NYで仕事をした時のつながりから、顧客を紹介してもらい、いきなりフリーで起業したんです。最初はウェブのデザインから始まって、SNSを生かしたマーケティング、セキュリティー対策まで、時代に合わせて業務内容が変わってきましたね。

––––子育ては一人で?

 神戸の実家で自宅起業のような形で会社を始めましたが、顧客の大半が東京だったので、退職した親も一緒に神戸から東京へ家族移住しました。私がかよわい大黒柱だったんです(笑)。

デザインのアイデアはノートに書く

––––IT関連の本を出版して、ライターとしての顔もあります。

 2010年から事務所で「中目黒サロン」というのを開いていました。海外のIT事情や最新技術、機器に詳しい仲間が集まって、お酒を飲みながらわいわい話すというだけで、サロンと言っても全然華やかさはないんですが(笑)。人が人を呼んで、仲間の輪が広がり、出版社の編集者と知り合いになりました。女性の視点でITを使いこなす視点が面白いと言われて、本を出すことになって。サロンでのつながりがバッグ作りにも役立ちました。

––––バッグを作るのはITの世界とは勝手が違いましたか。

 素材のことも業界のこともよく知らなかったので、インターネットで調べたり、人づてに聞いたり。メール1本で世界とつながる世界から、足を運ばないと話を聞いてもらえないメーカーや職人さんたちとの付き合いが始まりました。実績がないから何回も門前払いです。
 でも、私の中では作りたいバッグの明確なイメージがありました。バッグが倒れないよう折り紙で何度も試作してバランスを考えて。納得のいく形や素材を探すうちに、動物の皮を使わないアニマルフリーで高級感がある人工皮革を見つけたんです。試行錯誤しているうちに、一緒に挑戦してくれるメーカーや工房を見つけ、完成したバッグを見て、バッグメーカーの人が「自分たちでは考えつかなかった」と言ってもらえたのがうれしかったですね。

タッセル付きのキーリング。さりげなくGPS連携機能付きのチップをいれてある

––––バッグのデザインの一部に、福井県の眼鏡フレームの素材や、富山県の高岡銅器の技術で作ったフラップなど、伝統工芸を取り入れています。

 これも知り合いから日本の伝統工芸について聞いたのがきっかけでした。例えば銅器は仏具で培った素晴らしい技術があるのに、日常で使う機会が減って、後継者世代が新たな使い道を模索しています。そんな志のある経営者と知り合い、この技術を日常で使わないのはもったいないと思った。それで、バッグのフラップ(ふた)に、眼鏡フレームの素材をあしらったり、真ちゅうの飾りを付けたりしたんです。軽さを追求するために、内部を空洞にするなど、面倒な加工もお願いしたのですが、挑戦してもらえました。世界の働く女性が日本のいいものを集めたかばんを持って歩いていたら、かっこいいなと思って、やりがいも感じています。

–––いくつもの仕事を持って、自分の時間はありますか?

 よく寝ます。8時間は必ず寝る。寝るのが一番好きです。それと10年以上、俳句を習っています。仕事では出会わないような人たちとの出会いが楽しくて。世界の働く女性が持つバッグと言えばフミコダといわれるよう、自分のイメージ通りの仕事をしていきたい。デザインの勉強がしたくて、NYに渡米した時もそうですが、こうと決めると、あまり落ち込んだり、迷ったりしないんです。

仕事のお供
 情報収集に欠かせないスマホ。よく使うアプリは、関心のある分野のニュースをフォローできる「Feedly」と、デザインの刺激になる「Pinterest」。面白いものを見つけると、メモ代わりにツイッターで送って、後でゆっくり楽しみます。

(聞き手:大森亜紀、写真:山岸直子)

幸田フミ(こうだ・ふみ)
 1973年、兵庫県神戸市生まれ。アメリカのパーソンズ・スクール・オブ・デザインを卒業し、ニューヨークのファッションマーケティング会社でウェブデザイナーとして勤務。2003年に日本でウェブデザイン会社「ブープラン」を創業。「手帳なんていらない ?ソーシャルネットワーク時代の情報整理術」(かんき出版)、「はじめてのIoTプロジェクトの教科書」(クロスメディアパブリッシング)などを出版。11年の東日本大震災を機に有志とともに特定非営利活動法人BLUE FOR TOHOKUを設立し、福島の児童養護施設の児童を支援している。16年にバッグブランド「FUMIKODA」を設立し、クリエイティブ・ディレクターに就任。