「ただいま〜。今日は野菜がたっぷり食べられるスープが食べたいな」
午後7時。彼女からそんなリクエストがありました。
いつもはそんなことは言わない彼女。少し力のない笑顔を作る口元にはニキビがあり、お疲れの様子です。
「おかえりなさい。そしたら、ごろごろ具材のあれがいいかな!」
そう言って、僕はいつものキッチンに小走りで向かいます。
◇ ◇ ◇
こんばんは。エダジュンです。
彼女が帰ってきたのは、都内にある僕のキッチンアトリエ。訪れたみなさまをホッと温かい気持ちに包みたいなと思い、「おかえりなさい」の気持ちを込めたスープを振る舞っています。
ナチュラルメイクの彼女は、ふと見せるほほえみがすてき。細身の体に淡いグレーのロングカーディガン。玄関で脱いだ白いコンバースのスニーカーは、飾らない人柄を感じさせます。
今日は、誰かからの連絡を待っているのかな。スマホをしきりに確認しては、小さくため息をついています。聞けば、数日前に仲の良い友達と少しケンカしたみたい。
いつもポタージュをリクエストしてくるのに、野菜を食べたいなんて、気分を変えたいんだろうなあ。ご飯もあまり食べられていないのかも。今日は、ハーブ香るポトフ風スープにしよう。
【キノコとミニトマトのうまみたっぷりポトフ風スープ】
▽材料(1人分)
ウィンナーソーセージ 3本
シメジ 1/2パック
ニンジン 1/4本
ミニトマト 4個
(A)
水 300cc
コンソメスープの素 小さじ1(キューブの場合は1/2個)
ローズマリー 1枝
▽作り方
1 シメジは石づきを切り落とす。ニンジンは7ミリくらいの厚さにななめ切りにする。ミニトマトはヘタをとる。
2 小鍋にA、ニンジン、シメジを入れて中火で温める。沸騰したら弱火にして、ソーセージを加え、5分ほど温める。最後にミニトマトを入れて火を止め、お皿に盛り付ける。
うまみのあるシメジやミニトマトのおかげで、スープのコクが増します。さっぱりと食べ進められるよう、ローズマリーを入れて、香り豊かな味わいに仕上げました。ニンジンには、皮膚や粘膜の健康維持を助けてくれる「β―カロテン」が、ミニトマトには、肌のうるおいを助けてくれる「リコピン」が含まれていて、肌トラブルにも効果的です。
10分ほどで完成。
「ゆっくりと召し上がれ」
アトリエの窓側の特等席で、外を眺めながら、彼女は静かにスープをすすります。ゆっくり、じっくり。なんだか大切なものを味わっている感じ。
「ごちそうさまでした。ミニトマトとシメジでこんなにうまみを感じられるのね。スープのお気に入りが増えちゃった」と言った顔には、少し笑顔が戻っていました。よしよし! 少しでも心が休まったかな。帰り際、着信音が鳴り、急いでスマホを見た彼女はニッコリ。どうやらケンカをしていた友人と仲直りできたみたいだ。よかったね。
今日もお疲れさまでした。
※この連載はフィクションです。実在の人物や店舗などとは関係ありません。