ギリシャ「ポロス島」、猫が引き寄せた人との縁

いろいろな猫の生き方(72)

ギリシャ旅行でアテネに行った際、エーゲ海の3島(ポロス島・イドラ島・エギナ島)を巡る日帰りクルーズに参加しました。実は、3島の中のイドラ島が猫島だと聞いていたので、期待をして船に乗り込んだのですが、船内放送を聞いてがっかり。強風のため肝心のイドラ島だけが寄港できないというのです。その島に行きたいがために参加したツアーなのに……。最初に降りたポロス島を落ち込みながら歩いていたら、意外にもあちこちに猫の姿。本腰を入れて猫探しをはじめると、奇跡のような猫だらけの一軒のお宅にたどり着くことができました。

アテネ市街のホテルからの送迎バスでピレウス港へ向かい、そこから3島めぐりクルーズのスタートです。大きな船で、方々からピックアップした観光客を大量に収容していきます。

ピレウス港でも猫を見かけ、ワクワクと期待をしながら船内で過ごして、ポロス島の丘までぎっしりと並ぶ家々のかわいさには目を奪われます。

3島の中で最も小さなポロス島ですが、手頃なリゾート島ということで海岸沿いにはレストランやカフェが軒を連ねています。冬の寒い時期なのでストーブ必須ですが、そこにいました! 猫。

広場のカフェへ移動すると、行儀良くおすそ分け待ちする猫の姿がありました。おしゃべりに夢中の現地の人のかたわらで、辛抱強く座っています。

せっかく熱心にアピールしていたのに、おすそ分けはもらえずじまいの茶トラ猫。あきらめて今度はバーのドアマンのようにお客待ちです。

港へ戻る途中、またも海岸沿いのカフェで猫を発見できました。長毛のカワイイ猫です。ポロス島は行儀の良い猫が多いですね。

冬の時期は観光客が少ないのを猫たちもわかっているのでしょうか? 見慣れない人=観光客には少し積極的に近寄る傾向です。しかもこの猫、愛嬌あいきょうのよいこと。

長毛猫はカフェの奥の坂道へ誘導するように進んでいきます。坂道のある町は日本でも猫が多い印象がありますが、ここポロス島も同様。ただし、日本のような黒いアスファルトの坂ではなく、白い坂なんですね。

振り返ると愛嬌のある長毛猫は、次の観光客に向けてお持てなしをしていました。快く写真撮影に応じているようで、立派な「観光大使」です。

白い坂道の両側には、淡いセンスの良いカラーリングの建物が並んでいます。お店もしゃれていて、とてもかわいらしい島です。天気が良くないのがちょっと残念ですが……。

港に近い坂を上り切ったところに、時計台がそびえています。寄港時間が短い場合、クルーズに参加した客はここを目指し、丘の上から海や対岸の半島や景色を楽しみます。

港に停泊した船から見ると、こんな景色。時計台に近いほど傾斜はキツくなりますが、民家の脇道の坂を選べば、途中で猫との遭遇も楽しめます。

丘の頂上近くにも猫が数匹いました。ある一軒の家の前に長毛の猫の姿がありますが、よく見ると扉の向こうにも猫がいるようです。

扉の先で夢中になって猫の写真を撮っている私に気づいて、家主の方から声を掛けてくれました。「キャナイ テイク ピクチャー キャット?」と身振り手振りをすると、笑顔で庭に招き入れてくれました。

「どうぞ自由に撮って」と洗濯もの干しを続ける家主に感謝しつつ、猫たちを撮り続けました。この猫は今年生まれでしょうか? あどけない表情です。

身を乗り出して興味津々の白黒の猫も幼そうです。坂町なのでそれ程お庭が広くありませんが、その中に猫がいっぱいです。

子猫とは対象的に大人の猫たちは見慣れない人間に警戒の目線を送ってきています。なんだか見張られている気がしてきました。

目線に気がついて上を見ると、階段の上にも猫たちがいます。庭に入ってきてからずっとこちらを見張っていたのでしょうか。

入り口の扉の上にもいました。この猫たちも、とっても冷ややかな目線です。一挙手一投足を見逃さないぞという不信感が伝わってきます。

ついに、このお宅のボス的な存在に見える猫が声を上げてきました。長居し過ぎる私に向かって、出るように促しているようです。

家主に「サンキュー サンキュー」とお礼を言うと、ナプキンに包んだお菓子を差し出してくれました。気づかいがうれしくて、ペコペコと頭を下げて猫だらけのお宅を後にしました。この街のスイーツ&パン屋さんでよく見かけたタイプのお菓子です。

後で調べて分かったのですが、頂いたお菓子はメロマカロナ(Melomakarona)。ギリシャの冬(クリスマスシーズン)の伝統的なスイーツで、訪問客にお持てなしとして振る舞うそう。もしかしたら、お菓子をその場で食べるのが礼儀だったのかな? 猫たちが胡散うさん臭そうにしていたのが、今になってうなずけます。ポロス島にはちょっと後悔が残ってしまったので、今度行くときはきちんとお礼をしようと心に決めました。

南幅俊輔(みなみはば しゅんすけ)

盛岡市生まれ。グラフィックデザイナー&写真家。デザイン事務所コイル代表。現在、デザイン以外にも撮影、編集、執筆を手がける。2009年より外で暮らす猫「ソトネコ」をテーマに本格的に撮影活動を開始。日本のソトネコや看板猫のほか、海外の猫の取材・撮影を行っている。著書に「ソトネコJAPAN」「猫と世界遺産の街カレンダー」(洋泉社)、「ワル猫カレンダー」「ワル猫だもの」「サーバルパーク」(すべてマガジン・マガジン)、「どやにゃん」(辰巳出版)など。企画・デザインでは「ねこ検定」「パンダのすべて」「ハシビロコウのすべて」(すべて廣済堂出版)など。

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