やんちゃな男子と、大人な女子。
空気が読めない男子と、空気を読める女子。
それは人間の子供時代の“あるある”だけでなく、猫の世界でも“あるある”のようだ。
わちゃわちゃ動き回り、隙間があれば首を突っ込んでいく男子と、キャットタワーの上で優雅に毛づくろいをしている女子。
かまってほしくてウズウズしている男子と、かまってもらって迷惑顔の女子。
保護猫カフェ“小豆沢の森”に通い、改めて知った猫界の男女差。
留守がちな私に合う猫は?
温和で甘えん坊な性格が多い、茶トラ猫は“猫暮らし初心者向き”と聞いたことがあったが、ここで初めて私のひざに乗ってくれたのが茶トラのサノスケ君で、その説を実感した。
猫が甘えてくれて、ひざに乗ってくれるのは間違いなくうれしい。でも、めったにそばに来てくれない女子猫が、たまに足元をスリッとしてくれた時の驚きと幸福感。
あぁ、どっちも捨てがたい。
猫が苦手な猫もいる
猫カフェの店長アイさんのお宅には保護猫が6匹いるとのことで、職場にも猫、家にも猫。
「アイさんのお宅の猫たちは、アイさんのひざの取り合いはしますか?」
「毎日ですね(笑)。特に男子2匹が、互いを押しのけて競うようにひざに乗って、私の手を舐めます。冬の夜は、寝ている私の上に最高5匹が乗っていたこともありますよ」
「うわぁ、ハーレム状態ですね!」
「もはや悪夢を見そうな重量ですが(笑)」
「猫によって、多頭飼い向き、1匹飼い向きってあると思うんですけど、遊び盛りの子が、私みたいに昼間、家に居ない家にもらわれていったら寂しがりますよね?」
「猫好きの猫は寂しがりますね。子猫は、遊びながら手かげんしてかむことや、爪を出したら痛いということなどを学びますし、互いに温め合うこともできます。ですから、猫好きの猫や子猫の場合は複数での飼育をお勧めしています。仲良しであれば、必ずしもきょうだいではなくても大丈夫です。逆に、人間は好きだけど猫が苦手という猫もいます。そういう子は、単独飼い希望の方に譲渡しています」
「猫が苦手な猫もいるんですか?」
「たまにいるんですよ。そういう子が入店した時は、なるべくストレスがたまらないよう、スタッフルームやカーテンをしたケージに居てもらうようにしているんです」
「へぇー、猫が苦手な猫の存在、初めて知りました!」
遊んでほしいのか、ひざに乗ってほしいのか
「真穂さんはどういう猫暮らしをイメージしていますか?」
「以前お話ししてくれた、猫とたくさん遊びたいのか、ひざに乗ってほしいのか、一緒に寝てほしいのか、見るだけで十分なのか……ということですよね?
ここに来ると、つい遊び盛りの子猫に目がいっちゃうんですけど、私がイメージしている猫は、細身でツンデレな感じだったんです。でもここにきて、ベタ甘な猫にゴロゴロしてもらって、あぁ、こういう感じもいいかもって正直迷っています」
「女王様気質の“ツン”とした猫が、たまにしてくれる“デレ”も、かなりヤラれます」
「あぁー分かります! その感じ、私の中の猫のイメージにあります! あとは、あまりかまってほしい猫だと、留守がちなのでかわいそうかなとも思っています。ちなみに、私みたいに昼間、家に居ない人が里親になる場合、どういう猫が合いますか?」
猫は留守番できる?
「お昼寝しながらのんびり飼い主さんの帰宅を待てる、4~10歳くらいの大人猫がいいかなと思います。もし真穂さんが猫とたくさん遊びたければ、1~3歳くらいの若い猫もいいと思います。大人猫っていっても3歳以下は、大きな子猫のようなものです。でも子猫ほど不安要素はないので、猫との遊びを楽しみたいのであればそういった若い大人猫がぴったりですね。中にはいくつになってもおもちゃが大好きな猫もいるので、最後は相性かなとも思います。
あと、ここで猫や人と接して過ごした猫たちは社会性が身についているので、猫暮らしが初めての真穂さんもトライアルしやすいと思います」
「オスの甘えん坊な猫でも、昼間、1匹でのお留守番は問題ないですか?」
「はい、大人猫でしたらお留守番は大丈夫です」
「居ない時間が長いので、ひとりでも遊べるようおもちゃとか用意しておけばいいですか?」
「多分、真穂さんがいない時間はほとんど寝て過ごしていると思うので、帰宅してからたくさん遊んであげればいいと思います」
「えっ、そんなに猫って寝るんですか!?」
「はい、そんなに!?って思うほど猫って寝ますよ。年齢によって違いますが、1日15時間前後は寝てますね」
「そうなんですね!? それなら安心して仕事に行けそうです。アイさんから見て、私に合う猫ってどういう子だと思いますか?」
「うーん、ここでの真穂さんを見ている限り、猫にずっと触れていたいというよりも、同じスペースに猫がいるだけで楽しめるタイプだと思うので、ツンデレ女子が合うかな」
「ですよね! ひざに乗ってくれる甘えん坊男子もたまらないんですけど」
「女の子の猫、抱っこしたことはありますか?」
「ないです。自分から近づくと逃げちゃうので、向こうからスリッとしてくれるのを待っている感じです」
「男子は毛がフワフワでも、なでてみると結構、筋肉質で見た目よりも硬い感じがするんですけど、女子は見た目通り体もしなやかで、抱き上げるとやわらかいんですよ。その感触に魅了される人もとても多いです」
「うわぁ、体験してみたいです」
するとアイさん、店内を見回し、女の子が近くにいないか探してくれたが、床で寝ているのは子猫か大人男子。
「残念、女子は全員高みの見物タイムでした」
「なんか女子っぽい!」
女の子猫に触ったことがない私には、男の子猫の感触もフカフカでやわらかだが……いや、言われてみれば、フカフカではあるが、やわらかではないかも。確かに毛の内側はガチムチだ。
「アイさんが今まで一緒に暮らした中で、この子は最高のパートナーと思った猫はどういうタイプでしたか?」
「それぞれに持ち味があって思い出深いので決められませんが、“小豆沢の森”で猫店長もしてくれている茶トラ猫のサノスケは、独特の空気を持った猫で特別かな。彼はマイペースで穏やかで、猫にも人にも犬にも友好的です。猫にもとても人気があり、保護した子猫の子守もやってくれるイクメン猫でもあるんです」
「サノスケさんには私もお世話になっています! サノスケさんからいつもあいさつしに来てくれるので、猫にも、ここにも慣れることができました。サノスケさんも元保護猫ですか?」
「そうです。私が動物レスキューを始めた頃に、崩壊した大型シェルターから仲間がレスキューした猫です。初めて見たときは小さな折り畳みケージに入れられ、複数の感染症にかかって瀕死の状態でした。もともとは福島の原発事故避難区域から保護された猫だと聞いています。いろんなことを経験したからなのか、おおらかで懐が深い猫です」
「サノスケさんはアイさんと出会えたことで、新たな“猫生”を始めることができたんですね」
甘えん坊猫に、ツンデレ猫に、イクメン猫。どの猫もそれぞれストーリーがあり、魅力がたっぷり詰まっている。
いつか、女の子猫のフワフワでやわらかな感触……ぜひ味わってみたいものだ。
(※この物語は、実在する飼い主募集型保護猫カフェをモデルにしたフィクションです)
猫クイズ!(四つの選択肢から選んでください)
Q.猫の給水で間違っているのはどれ?
(1)猫の水飲み場は複数用意する
(2)ひげが当たらないよう容器は口が広いものを用意する
(3)おしっこの後にすぐ飲めるようトイレの近くに置く
(4)ミネラルウォーター(軟水)をあげても問題ない
A.(3)おしっこの後にすぐ飲めるようトイレの近くに置く
【解説】嗅覚がとても鋭い猫は、トイレと給水の場所が近いと、においが気になって飲んでくれなくなることもあります。給水の場所はトイレからなるべく離すようにしましょう。
(ねこ検定公式ガイドブックより)
(Photo by 保護猫写真家ねこたろう/写真提供・協力 CAT’S INN TOKYO)
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