ミルフィーユ 香ばしさとコク深さがたまらない

瀬戸理恵子のおやつ便り

クリエイティブで複雑なお菓子にもひかれるけれど、何度でも食べたくなるのはやっぱりベーシックな味。なかでもミルフィーユは、初めて食べたその日から愛してやまない、大好きなお菓子です。

パイ生地とクリームという本当にシンプルな構成なのですが、だからこそ作り手の技術や知識、センスがストレートに表れるのが、ミルフィーユのおもしろさ。パティシエにとっては腕が試される、ちょっと怖い存在のお菓子でもあります。「だからこそ、これだけは絶対においしく作りたかったんです」と語るのは、東京・桜新町にある「パティスリー ビガロー」のオーナーシェフ、石井亮さんです。

フランス産小麦粉を使い、発酵バターをたっぷり加えたパイ生地は、一層一層がほれぼれするほど深い色に焼き上げられて、どこまでも香ばしくて風味よく、サクサク、ホロホロ。その間には、卵黄たっぷりでバニラをきかせたカスタードクリームに、泡立てた生クリームを合わせた、リッチなクリームがたっぷり挟まれています。そのコク深さは、まるで上質なバニラアイスクリームのよう。かむごとに香ばしさとコク深さが代わる代わる押し寄せては混じり合い、幸せを増幅させていくのです。このバランスが、本当にすごい!

「ミルフィーユは食べにくいから、とよく言われますけれど、僕自身、食べてパイ生地の間からクリームがブニッとあふれ出すのが嫌なんですよね。だから、クリームを硬めに仕上げているのもこだわりのポイントです」と石井さん。いつだったか、横倒しにしてナイフで切れば食べやすいよ、と教えてくれたフランス人パティシエもいたけれど、確かにこのミルフィーユならば倒さなくてもなんとか食べられそう。細やかな心配りと正確な手仕事が織り成すおいしさに、心揺さぶられること間違いなしのひと品です。

ミルフィーユ
  560円(税込み)
店舗 パティスリー ビガロー
東京都世田谷区桜新町1-15-22-1F
電話 03-6804-4184
営業時間 9:00~19:00
水曜休

瀬戸理恵子(せと・りえこ)
フードエディター・ライター

 1971年東京都生まれ。銀行勤務を経て2000年にパリへ製菓留学し、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリで菓子ディプロムを取得。ピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、月刊誌「料理王国」、「料理通信」の編集部を経て、2009年独立。お菓子を中心にフリーランスのフードエディター・ライターとして活動中。監修・共著に「東京手みやげ 逸品お菓子」(河出書房新社)など。このほか、「『オーボンヴュータン』河田勝彦の郷土菓子」(誠文堂新光社)など、パティシエの書籍製作も手がける。

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