スワン 気品あふれる白鳥のシュー

瀬戸理恵子のおやつ便り

 水面にゆったり浮かぶ、エレガントな白鳥の姿を映したスワンシューは、子供の頃からの永遠の憧れ。買ってもらうとうれしくて、お皿の上にのせては「わぁ!」と歓声を上げて、うっとり眺めていたものです。

 そんな懐かしい情景を思い出させてくれるのが、東京・三軒茶屋のパティスリー「オクトーブル」の「スワン」。ふっくらと羽をふくらませた優美なフォルムといい、少しうつむいたしなやかな首の角度といい、くちばしの繊細さといい、かわいらしい尾っぽといい、文句なしに美しい! そして、風味よく、しっかり焼かれたシュー生地は少し塩気が利いていて、ふんわりミルキーな生クリームとコクのあるカスタードクリーム、甘酸っぱいイチゴとバランスよくマッチ。まさに正統派のスタイルと味わいを感じさせるスワンシューなのです。

 「このお菓子は、僕が最初に修業した『ルコント』から受け継いだもの。カスタードクリームとイチゴを加えたのは、僕のアレンジです」と話すのは、「オクトーブル」オーナー・シェフパティシエの神田智興さん。「ルコント」といえば1968年東京でオープンした、今は亡きアンドレ・ルコントさんによるフランス菓子専門店。「万事、フランス流に」を貫き、いち早く本格的なフランス菓子の味を伝えたこの店で、神田さんはルコント氏最後の弟子となり、腕を磨きました。

 神田さんによると、「ルコント」でシューを絞らせてもらえるのは、働き始めて3年目から。「もっと早くてもやればできるかもしれません。でも、職人として経験を積んでものづくりの意味を知ってから、しっかりと気持ちを持ってお菓子をつくりなさい、ということだったのだと思います」と、神田さんは話します。

◇    ◇    ◇    

 おいしさとともに、楽しい音楽を聴くような夢みる気分を届けたいと願い、スワンを生み出したルコントさん。味とともにその気持ちまで受け継ぎ、職人としての誇りを胸にスワンをつくる神田さん。時を超えて笑顔を運ぶ、思いのこもったひと品です。

スワン
   400円(税抜き)
※間にはさまれているイチゴは、季節によってオレンジなど他のフルーツに替わることもあります。
店舗 オクトーブル
東京都世田谷区太子堂3-23-9
電話 03-3421-7979
営業時間 10:00~19:00
火曜休

瀬戸 理恵子(せと・りえこ)
フードエディター・ライター

 瀬戸 理恵子(せと・りえこ) フードエディター。 1971年東京都生まれ。銀行勤務を経て2000年にパリへ製菓留学し、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリで菓子ディプロムを取得。ピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、月刊誌「料理王国」、「料理通信」の編集部を経て、2009年独立。お菓子を中心にフリーランスのフードエディター・ライターとして活動中。監修・共著に「東京手みやげ 逸品お菓子」(河出書房新社)など。このほか、「『オーボンヴュータン』河田勝彦の郷土菓子」(誠文堂新光社)など、パティシエの書籍製作も手がける。

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