アニョー・パスカル ふんわりおいしい 復活祭の仔羊

瀬戸理恵子のおやつ便り

アニョー・パスカル(※背中のピックは、数量限定)

 春の訪れとともにやってくるのが、イエス・キリストの復活を祝うイースター。フランスで「パック」と呼ばれ、お菓子屋さんの店先には、生命や復活の象徴とされる卵の形をした、大小さまざまなチョコレートがたくさん並びます。それから、豊穣ほうじょうと繁栄を表すウサギやニワトリの形のチョコレートも。どれもデザインが凝っていて、見て歩くのが楽しい季節です。

 チョコレートも、もちろん素敵すてきなのですが、私が大好きでたまらないパックのお菓子といえば、アルザス地方だけで見られる「アニョー・パスカル」。首にリボンを巻いたかわいい羊の姿に目を奪われて以来、毎年ソワソワしながら再会を心待ちにしています。

 「ラ・ヴィエイユ・フランス」オーナーシェフの木村成克さんがつくるのは、現地そのままの味わいが楽しめる、シンプルな「アニョー・パスカル」。卵黄と卵白を別々に泡立てたビスキュイ(スポンジ)生地を、アルザス地方のスフレンハイムでつくられる、伝統の陶製の型でじっくり焼き上げています。口に入れればきめ細やかで、しっとり、ふわふわ。やさしく広がる卵の風味に心が和み、飽きることなくずっと食べ続けていたくなります。

◇     ◇     ◇

 32年前にフランスへ渡り、アルザス地方・ストラスブールのパティスリー「ネゲル」で修業を始めた木村さん。「パックの季節になると、お店にこの羊がずらーっと並ぶんです。飛ぶように売れて、何千と焼いても間に合わないくらい。ごく普通のビスキュイなのに、なんでそんなにみんな食べるんだろうって、当時は不思議に思っていました」と木村さん。

「でも、きっとそれは、季節が巡れば僕らが桜餅や柏餅を食べるのと一緒なのでしょうね。厳しい冬を越えた、春の訪れを象徴するお菓子でもある。そういう文化や伝統を味とともに受け継いで、日本の方々にも紹介したいと僕は思うんです」

 “春分の日のあとの最初の満月の次の日曜日”とされるパックが今年やってくるのは、西暦(グレゴリオ暦)では4月21日。春の喜びを運ぶお祭りはそれまでしばらく続きます。

 

アニョー・パスカル
   小(約13×10cm) 600円(税込み)
    ※大(約14×11cm) 850円(税込み)は予約のみ
店舗 ラ・ヴィエイユ・フランス
東京都世田谷区粕谷4-15-6 グランデュール千歳烏山1F
03-5314-3530
10:00~19:30
月曜休(祝日の場合、翌火曜休)
※今年の「アニョー・パスカル」の販売は、3月21日~4月21日
※背中に刺したピックは、数量限定につき、なくなり次第終了

瀬戸 理恵子(せと・りえこ)
フードエディター・ライター

 瀬戸 理恵子(せと・りえこ) フードエディター。 1971年東京都生まれ。銀行勤務を経て2000年にパリへ製菓留学し、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリで菓子ディプロムを取得。ピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、月刊誌「料理王国」、「料理通信」の編集部を経て、2009年独立。お菓子を中心にフリーランスのフードエディター・ライターとして活動中。監修・共著に「東京手みやげ 逸品お菓子」(河出書房新社)など。このほか、「『オーボンヴュータン』河田勝彦の郷土菓子」(誠文堂新光社)など、パティシエの書籍製作も手がける。

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