いよいよ、桜の季節です。つぼみから満開、散りゆく姿まで、どの桜も情緒豊かで美しく、小さな花のひとつひとつに春の喜びがあふれていて、眺めているだけで幸せな気持ちになります。
そして、そんな桜の美しさを映し出した和菓子を目と舌で愛でるのも、この時期の大きな喜び。なかでも東京・赤坂「塩野」の「花衣」は、ひときわ可憐で優美な姿にため息がこぼれてしまう、お気に入りのひと品です。
幾重にも重なって濃淡を成すのは、やわらかくてもっちりした淡い色合いのういろうの花びら。中には、花芯に見立てた丸い黄味餡がそっと包まれています。「桜がぱあっと花開いた風景を思い描いてつくっております」と、ご主人の髙橋博さん。
桜の花びらの型は、「塩野」を創業した先代が50年ほど前に、自ら描いた図案をもとにつくらせたものだそうです。美しさの秘訣は、花びらの重ねかた。「形づくろうとすると、うまくいきません。重ねる角度が少し違うだけでもだめ。ういろうののばし具合や黄味餡を置く位置にも気をつけて、あとは無心で、空気を入れるようにふっくら包むことです」と、髙橋さんはやわらかな微笑みをたたえながら語ります。
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触れれば壊れてしまいそうなほど繊細で、お皿にのせると、まるでふんわり開き始めた桜の花をそのまま置いたかのよう。はかなげな美しさに言葉を発するのも忘れ、うっとり見とれてしまいます。
口に入れれば、ういろうのやわらかさとほのかな甘さが舌にやさしく、中から現れる色鮮やかな黄味餡からコク深い卵の風味が広がって、おだやかに調和。上品な余韻にまた、ため息がこぼれます。
花衣(400円・税込み)
店舗 塩野
東京都港区赤坂2-13-2
03-3582-1881
9:00~19:00(土曜、祝日~17:00)
日曜休
※本店建て替え中につき、2020年春まで仮店舗で営業中。
仮店舗住所: 東京都港区赤坂3-11-14
赤坂ベルゴビル1階
※「花衣」は、3月初旬~4月初旬販売
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