花衣 可憐な桜の花に魅せられて

瀬戸理恵子のおやつ便り

 いよいよ、桜の季節です。つぼみから満開、散りゆく姿まで、どの桜も情緒豊かで美しく、小さな花のひとつひとつに春の喜びがあふれていて、眺めているだけで幸せな気持ちになります。

 そして、そんな桜の美しさを映し出した和菓子を目と舌ででるのも、この時期の大きな喜び。なかでも東京・赤坂「塩野」の「花衣」は、ひときわ可憐かれんで優美な姿にため息がこぼれてしまう、お気に入りのひと品です。

 幾重にも重なって濃淡を成すのは、やわらかくてもっちりした淡い色合いのういろうの花びら。中には、花芯に見立てた丸い黄味あんがそっと包まれています。「桜がぱあっと花開いた風景を思い描いてつくっております」と、ご主人の髙橋博さん。

 桜の花びらの型は、「塩野」を創業した先代が50年ほど前に、自ら描いた図案をもとにつくらせたものだそうです。美しさの秘訣ひけつは、花びらの重ねかた。「形づくろうとすると、うまくいきません。重ねる角度が少し違うだけでもだめ。ういろうののばし具合や黄味餡を置く位置にも気をつけて、あとは無心で、空気を入れるようにふっくら包むことです」と、髙橋さんはやわらかな微笑ほほえみをたたえながら語ります。

◇     ◇     ◇

 触れれば壊れてしまいそうなほど繊細で、お皿にのせると、まるでふんわり開き始めた桜の花をそのまま置いたかのよう。はかなげな美しさに言葉を発するのも忘れ、うっとり見とれてしまいます。

 口に入れれば、ういろうのやわらかさとほのかな甘さが舌にやさしく、中から現れる色鮮やかな黄味餡からコク深い卵の風味が広がって、おだやかに調和。上品な余韻にまた、ため息がこぼれます。

 

花衣(400円・税込み)
店舗 塩野
東京都港区赤坂2-13-2
03-3582-1881
9:00~19:00(土曜、祝日~17:00)
日曜休
※本店建て替え中につき、2020年春まで仮店舗で営業中。
 仮店舗住所: 東京都港区赤坂3-11-14
        赤坂ベルゴビル1階
※「花衣」は、3月初旬~4月初旬販売

瀬戸 理恵子(せと・りえこ)
フードエディター・ライター

 瀬戸 理恵子(せと・りえこ) フードエディター。 1971年東京都生まれ。銀行勤務を経て2000年にパリへ製菓留学し、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリで菓子ディプロムを取得。ピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、月刊誌「料理王国」、「料理通信」の編集部を経て、2009年独立。お菓子を中心にフリーランスのフードエディター・ライターとして活動中。監修・共著に「東京手みやげ 逸品お菓子」(河出書房新社)など。このほか、「『オーボンヴュータン』河田勝彦の郷土菓子」(誠文堂新光社)など、パティシエの書籍製作も手がける。

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