スイス 柑橘香る、さわやかな“カレ”に夢中!

瀬戸理恵子のおやつ便り

 私には、お菓子屋さんでときどき出会えると胸がキュンとしてしまう、いとしの“カレ”がいます。“カレ”の名は、「スイス」。頭に帽子をかぶり、口ひげを生やしたお顔が凜々りりしくてチャーミングな、フランス・ヴァランスの伝統菓子です。

 フランスのお菓子なのに、なぜスイスなのかといえば、スイスの衛兵さんの姿をかたどってつくられたお菓子だから。かつて、ナポレオンによってローマ教皇がヴァランスの町に幽閉され、その教皇が亡くなるまで護衛に当たっていたのが彼らだったそうなのです。

 表情や服のデザインはお店によってさまざまで、キュートでほのぼのとした衛兵さんもいれば、勇猛でいかめしい衛兵さんも。同じお店のなかでも一人一人微妙に表情が違っていて、見比べるのが楽しくてたまりません。

 なかでもお気に入りなのが、南浦和にあるパティスリー「ロタンティック」の「スイス」! レーズンのつぶらな瞳が清々すがすがしくて、甘すぎずゴツすぎず、バランスの取れた容姿と、立体感があってつややかな装いに心かれます。そしてパクッとかじってみれば、じっくり焼き上げられた厚みのあるサブレ生地がザクッと割れて、中はややしっとり、ホロリ。むうちにオレンンジとレモンのさわやかな香りが広がって、粉の旨みと混じり合い、素朴なおいしさに笑みがこぼれます。

◇     ◇     ◇

 ポイントは、「クッキーよりも重たくて分厚い生地なので、粉っぽさが残らないようしっかり焼くこと」と、オーナーシェフ・パティシエの関本祐二さん。「ハレの日のお菓子だけでなく、なんてことはないシンプルなお菓子もおいしくつくる」を心がけ、一瞬一瞬、真摯しんしに向き合うひたむきさが、その味わいにしっかり溶け込んでいるのを感じます。

スイス(540円・税込み)
店舗 ロタンティック
埼玉県さいたま市南区文蔵2-29-19  KSマンション文蔵1F
048-839-8227
10:00~20:00
木曜休

瀬戸 理恵子(せと・りえこ)
フードエディター・ライター

 瀬戸 理恵子(せと・りえこ) フードエディター。 1971年東京都生まれ。銀行勤務を経て2000年にパリへ製菓留学し、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリで菓子ディプロムを取得。ピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、月刊誌「料理王国」、「料理通信」の編集部を経て、2009年独立。お菓子を中心にフリーランスのフードエディター・ライターとして活動中。監修・共著に「東京手みやげ 逸品お菓子」(河出書房新社)など。このほか、「『オーボンヴュータン』河田勝彦の郷土菓子」(誠文堂新光社)など、パティシエの書籍製作も手がける。

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