マロン リュバーブ 栗との華やかなハーモニー

瀬戸理恵子のおやつ便り

 サン=トノーレは、美しく絞られたクリームと、縁に並んだプチシューが華やかなパリ生まれのお菓子です。19世紀、パリのサン=トノーレ通りにお菓子屋さんを開いていたパティシエが考案したので、この名前がつけられたとか。お菓子屋さんとパン屋さんの守護聖人である、サン=トノーレから名付けられたという説もあります。

 定番のプレーンなクリームとキャラメルがけしたシューのサン=トノーレもはずせないけれど、さまざまな味わいに進化したモダンなサン=トノーレも魅力的。「おだやかな秋のティータイムにぴったり!」と選んだのは、「トレカルム」の新作サン=トノーレ、「マロン リュバーブ」です。

     ◇     ◇     ◇

 なめらかなクリームからは滋味深い栗の味わいがやわらかく広がって、香ばしいパイ生地、カリッとしたシューとマッチ。中からは甘酸っぱいリュバーブのコンフィチュールがとろりと現れて、鮮やかなインパクトはまるで、パッと光が差したようです。さらには、プチシューの中からキリリとしたラム酒の香りがあふれ出し、口の中は一気に華やかに。最後にはすべてが調和して、気品高くおだやかな余韻に包まれます。

 「ひとつのお菓子の中でも、時間差で生まれる香りや味を表現したい」と語るシェフ・パティシエの木村忠彦さん。独創的でありつつ繊細な素材使いや、味わいに変化をもたらすメリハリと調和には、料理人出身の木村さんならではの経験と感性があふれています。このお菓子以外にも、スペシャリテの「モンブラン」など大評判の栗の美味を生み出しているのに、「実は栗が苦手。好んでは食べません」だなんて、冗談かと思ったら本当でした。

マロン リュバーブ
  520円(税抜き)
店舗 トレカルム 
東京都文京区千石4-40-25
03-3946-0271
10:30~20:00
不定休

瀬戸 理恵子(せと・りえこ)
フードエディター・ライター

 瀬戸 理恵子(せと・りえこ) フードエディター。 1971年東京都生まれ。銀行勤務を経て2000年にパリへ製菓留学し、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリで菓子ディプロムを取得。ピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、月刊誌「料理王国」、「料理通信」の編集部を経て、2009年独立。お菓子を中心にフリーランスのフードエディター・ライターとして活動中。監修・共著に「東京手みやげ 逸品お菓子」(河出書房新社)など。このほか、「『オーボンヴュータン』河田勝彦の郷土菓子」(誠文堂新光社)など、パティシエの書籍製作も手がける。

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