ヴェルガモット・ポワール みずみずしい清涼感

瀬戸理恵子のおやつ便り

 空高く、風が心地よく感じられる秋は、おやつが一段とおいしくなる季節。「今日はどんなおいしいお菓子を味わえるかな」と、いそいそ出かけてみたら、食べる前から心を射貫かれるお菓子に出合ってしまいました。それがこの、「パリセヴェイユ」のヴェルガモット・ポワールです。タルトの上にのせられた、洋ナシが透けて見える淡いグリーンのジュレと、野辺に咲くような可憐な小花の美しさ……。もう、ため息しか出ません。

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 しばらく目で楽しんだ後、名残り惜しさを感じながらも口に入れると、みずみずしくとろりとしたジュレからあふれ出すのは、清涼感あふれるヴェルガモットの香りと、穏やかな洋ナシの風味。香ばしくてコク深いタルトの中にも、ヴェルガモットのコンフィチュール(ジャム)が絞られていて、心地よい苦みと清々しさがアクセントとなって弾けます。ヴェルガモットといえば、紅茶のアールグレイの香りづけにも使われる柑橘の一種ですが、想像をはるかに超えてなんてフレッシュ! 静かに目を閉じて、余韻に浸っていたい気分です。

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 「タルトはそもそも焼き菓子。そこにデザート的な発想を持ちこんで、みずみずしさの表現に挑戦してみました」と話すのは、「パリセヴェイユ」の金子美明シェフパティシエ。クラシックにしっかり根ざしながらも、常に新しい味わいや発想を意欲的かつ大胆に形にしていくのは、金子シェフの真骨頂と言ってよいでしょう。そして、端正でセンスあふれるお菓子のスタイルも! おいしくて美しい、贅沢なおやつの時間です。

ヴェルガモット・ポワール(650円税込み)
店舗 パリセヴェイユ
東京都目黒区自由が丘2-14-5 館山ビル1F
03-4731-3230  10:00~20:00  無休

瀬戸 理恵子(せと・りえこ)
フードエディター・ライター

 瀬戸 理恵子(せと・りえこ) フードエディター。 1971年東京都生まれ。銀行勤務を経て2000年にパリへ製菓留学し、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリで菓子ディプロムを取得。ピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、月刊誌「料理王国」、「料理通信」の編集部を経て、2009年独立。お菓子を中心にフリーランスのフードエディター・ライターとして活動中。監修・共著に「東京手みやげ 逸品お菓子」(河出書房新社)など。このほか、「『オーボンヴュータン』河田勝彦の郷土菓子」(誠文堂新光社)など、パティシエの書籍製作も手がける。