酒蔵の「招きネコ」フクちゃんに誘われて城下町歩き

いろいろな猫の生き方(32)

 四国と九州をつなぐフェリーの玄関口、大分県臼杵うすき市で偶然、蔵元の看板猫「フク」ちゃんに出会いました。臼杵は古い街並みが残る城下町ですが、当日はあいにくの雨。フェリー出港までの待ち時間をどう過ごそうかと観光案内所を訪れると、地元の酒蔵見学を勧めてくれました。そこを訪ねてみると、看板猫「フク」ちゃんが現れてビックリ。

 臼杵城と臼杵川に挟まれた城下町に位置する「小手川酒造」。1855年創業の歴史を感じさせるたたずまいですね。さっそく入ってみます。

 見学の途中で気づいた額入りの猫の写真。案内してくれた、五嶋さんが「猫? ここにいますよ」と答えたとたんに現れたのが、ふっくらとした三毛猫の「フクちゃん(10歳)」。

 まるで蔵を案内するかのように動き回るフクちゃん。この酒蔵では、主に麦焼酎を作っています。前方に見えるのがお酒の貯蔵庫。扉の中には30年貯蔵の焼酎の小さなカメが並んでいます。

 蔵の奥に進むと、肩ほどの高さの大きなカメが並んでいます。カメの中でじっくり熟成されると甘みと深みが増していくそう。1987年から黒こうじ仕込みの焼酎を造り始めたそうです。

 貯蔵用の蔵を出ると、フクちゃんが奥の家屋へ案内してくれました。フクちゃんの先に見えてきた、大きな2つのたるが、ここ小手川酒造自慢の木製の蒸留器です。

 フクちゃんが、大きさの比較にどうでしょうと言わんばかりに樽の横に鎮座しています。焼酎の蒸溜には木製の樽が味の決め手となるそうです。

 実はフクちゃんは、ご近所からやってくる通い猫。でも居心地が良いのか、長い時間をこの蔵元で過ごしています。

 人が大好きなフクちゃんは、お店にお客さまが来ると自分から近づいていきます。この日は、まるで販売スタッフのようにお客さまのそばに。気が向くと足元にスリスリしてきたり、おなかを見せてゴロンしたりするそうです。

 この酒蔵は大林宣彦監督の「なごり雪」(2002年)の撮影にも使われました。水田酒造(映画内での蔵元名)と書かれた看板や、撮影時の写真が飾られています。残念ながらフクちゃんの生まれる前でした。

 この日は雨のため屋内にいましたが、フクちゃんは外が好き。天気が良ければ隣の女流作家である野上弥生子文学記念館や、ご近所を散歩していることもあります。

 お薦めは左から、3年熟成の黒麹焼酎「羽衣」。野上弥生子氏99歳の直筆文字が印刷されている、大分むぎ焼酎「白寿」。戦国時代に臼杵城の城主だった大友おおとも宗麟そうりんの名にちなんだ日本酒「宗麟(上撰)」が。「試飲コーナー」でぜひ試してみてください。

 お店の案内(?)でお疲れのフクちゃんも奥で横になります。急な取材にお付き合いしてくれてありがとう。

 フェリーの出発時刻が迫って、城下町を後にしましたが、美容室の看板猫や町猫たちにも会えました。本当に古い町には猫がよく似合います。

小手川酒造株式会社
大分県臼杵市大字臼杵538番地
電話:0972-62-3335
年中無休(8:30~17:00)
※蔵見学は随時行っております。
http://www.fundokin.co.jp/kotegawa

南幅俊輔(みなみはば しゅんすけ)
デザイン事務所コイル代表。ソトネコ写真家&グラフィックデザイナー

2009年猫の島「田代島」を訪れ、「ソトネコたち」の生き方に興味を持ち、月1回、瀬戸内や九州の島で猫たちの写真を撮っている。ソトネコサイトの管理者。著書に『ソトネコJAPAN』『ねこ柄まにあ』『のんびり猫旅』『ねこ暦 七十二候』『ワル子猫カレンダー2018』『ワル猫だもの』『サーバルパーク』『どやにゃん』ほか

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