瀬戸内の島の小学校の猫生徒

いろいろな猫の生き方(25)

 瀬戸内の島のひとつ「佐柳島(さなぎじま)」は猫好きが集まる、「猫の楽園」として知られています。昨年8月、廃校になった島の小学校を改装して、宿泊施設&カフェがオープンしました。その名も「ネコノシマホステル」。小学校の雰囲気をそのまま残したホテルに、「猫生徒」がいると聞いて、会いに行ってきました。

 多度津港(香川県多度津町)からフェリーに乗り約1時間で佐柳島に到着。港から歩いて約15分の「ネコノシマホステル」に向かう途中、路地や防波堤の上に、次々と島の猫たちが現れました。ゴミひとつ落ちていない美しい島に猫。これはシャッターを押さずにはいられません。かわいい猫たちにじゃま(?)されて到着時間はどんどん遅くなります。

 ネコノシマホステルに入ると、板張りの床に黒板がある懐かしい教室に2匹のキジ白猫がいました。まるで教室で授業を受けている生徒のよう。実はこの2匹は宿のオーナーさんの飼い猫。通常イベントなどに貸し出すフリースペース(音楽室)を2匹が独占しています。

 ピアノの上にクールに陣取る、片腕にキジ模様のある「ノック」(上)と、両腕が真っ白な「フック」(下)。暖かいと昼は外に出かけ、夕方になると、リコーダーやアコーディオンなど懐かしい楽器が飾ってあるこの音楽室に戻ってきます。

 宿泊者以外でも利用できるカフェスペース(職員室)にはゆったりとした落ちついた空気が流れていました。廃校後そのままだった職員室をリフォームし、何度も何度も拭き掃除をして、ワックス掛けでピカピカにした床。学校の雰囲気を残したいと教材道具などはそのままに生かしてあります。

 宿泊した「図工室」は、懐かしい雰囲気で、ゆっくりとした時間を過ごせました。「ネコノシマホステル」には同じタイプの1〜4人まで利用できる「資料室」「理科室」や、2段ベッドを配して最大8人が泊まれるドミトリースタイル(相部屋)もあります。

 経営していた大阪の古書店を閉め、ここのオーナーになった村上淳一さんと妻の直子さん。佐柳島で生まれた村上さんのお父さんのふるさとを夫婦で訪れた時、この美しい島と偶然雨宿りしたこの校舎を気に入ってしまい、宿泊設備のないこの島に泊まれたら、もっとゆっくり過ごせるのにと思い一念発起。自治体と交渉して許可を得て、島民や地域の理解とサポートで開業の運びとなったそうです。

 直子さんは元ディスプレーデザイナー。随所に学校の教材などを生かしたオシャレな空間を作りあげています。宿泊者の思いがつづられた黒板を読むのも楽しい。夕飯には「茶がゆ」など佐柳島の伝統料理も提供しています。

 カフェスペース隣は、現在書店の準備中。本のかわりに(?)いるのが黒猫の「ろっさん」。島で弱っていた子猫を見つけた2人が、このままでは冬の寒さをしのげないと判断して保護しました。そのかいがあってか、現在は元気過ぎるぐらい、少しもじっとせずに走り回って、何度もダミ声をあげる活発な猫です。

 実はこの「ろっさん」と同じ柄で、お父さんじゃないかと思う猫(写真手前の白黒猫)を数年前に撮影していました。不思議な縁を感じます。オーナーの村上さんは猫に導かれてこの島にたどり着いたと語っていました。私もそんなひとりなのかもしれません。

ネコノシマホステル+喫茶ネコノシマ
香川県仲多度津郡多度津町佐柳1353
Tel.0877-35-3505 火曜定休
http://neconoshima.jp

南幅俊輔(みなみはば しゅんすけ)
デザイン事務所コイル代表。ソトネコ写真家&グラフィックデザイナー

2009年猫の島「田代島」を訪れ、「ソトネコたち」の生き方に興味を持ち、月1回、瀬戸内や九州の島で猫たちの写真を撮っている。ソトネコサイトの管理者。著書に『ソトネコJAPAN』『ねこ柄まにあ』『のんびり猫旅』『ねこ暦 七十二候』『ワル子猫カレンダー2018』『ワル猫だもの』『サーバルパーク』『どやにゃん』ほか

ソトネコ facebook sotoneko

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