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店内すべての人・モノが“物語”の書き手
忙しい日常から少し離れたい時には、創意工夫あふれるフレンチが織りなす物語の世界へ飛び込んでみよう。中目黒の目黒川沿いにある「CRAFTALE(クラフタル)」では、都内の名店やフランスで修業したシェフ、大土橋真也さんが手掛ける色彩豊かで独創的な料理を味わえる。
店名の由来は、「CRAFT(=手技)」と「TALE(=物語)」という二つの言葉を掛け合わせた造語。生産者や店のシェフやスタッフ、訪れた客のそれぞれの手で物語を作り上げたいという願いが込められているのだそう。グレーを基調としたシンプルにまとめられた内装が、すっきりと洗練された空間を演出している。
CRAFTALEが提供するのは、季節ごとにメニューの変わるコース料理。全6皿で構成され、そのうち4皿にはオリジナルのパン(形状はパンとは限らない)を合わせる「パンペアリング」という独自のスタイルなのも楽しみの一つだ。今回は11月末まで展開予定の秋のコースから3品をピックアップしてもらった。
一口ごとに広がる日本の秋の味覚
「テーマは日本の秋、夕暮れ時です」とテーブルに運ばれてきたのは、香ばしく焼いたサンマを巻いた一品。上には薄くスライスした柿と黄ビーツが花弁のようにあしらわれ、下に満月のように真ん丸く柿のフルーティーなソースが広がる。真上からのぞき込むと、双葉を模したようなハーブがちょこんと添えられていて、笑みがこぼれてしまった。端にちりばめられた竹炭塩が日本の秋の情緒を感じさせる。「まずは日本人に感動してもらいたい」という大土橋シェフの思いがつまった一皿だ。
ナイフを入れると、ローストしたソバの実が顔を出した。ふわふわに焼き上げられたサンマと、カリカリとしたナッツのようなソバの実の食感、生クリームで煮たベーコンのマイルドな香り――。ペアリングされるパンは、干し柿を練りこんだ甘酒の蒸しパン。次々に登場する意外な組み合わせが楽しい。
麗しいカラーグラデーションに感嘆
2皿目は黒毛和牛のロースト。運ばれてきた瞬間、スイーツと錯覚するほど鮮やかな赤の色遣いが目を引いた。「CRAFTALEのこだわりのひとつが、カラーグラデーション。白から始まり、ピンク、淡い赤、しっかした赤、紫、ソースの茶色……。色を一つの物語として、徐々に移りゆく様子を一皿で表現しています」と大土橋シェフ。ブルーベリーソースのパープルのラインやフロマージュ・ブランの白い水玉模様など、アートでありながらどれもこの一皿に欠かせない味だ。
口に含んだ瞬間、とろけるように肉のうま味が広がる。さっぱりとしたソースとルビーオニオンのマリネも合わせると、思わず目を閉じてしまうほどの舌触り。ペアリングのパンはなんと、牛すじとセミドライしたイチジクが包まれた“春巻き”。パンの概念にとらわれない発想に、「そうきたか!」とうなってしまう。
「脂がのっているみずみずしいピンク色の肉に、イチジクやブルーベリーの穏やかな酸味がぴったりなんです」と大土橋シェフ。
視覚と味覚が満たされるイマジネーション
最後のデセールに至るまで、独創性は揺るがない。木目が美しい器に盛られた秋らしい甘味の数々に目移りしてしまう。メインはなんといっても大粒の栗。シェフが丁寧に殻をむき、渋皮煮でふっくらと仕上げている。ココアシガレットと竹炭で絶妙な木目が表現されたかけらはラングドシャ。なめらかな甘みをまとった安納芋の焼きいも、さっぱりとした紅茶のアイスクリームに至るまで、なにもかもが豊かな秋を感じる贅沢な味わいだ。
一切の迷いがないシェフの世界観
料理のひとつひとつにテーマがあり、まるで芸術作品を鑑賞するようなひとときだった。想像をかき立てられるビジュアルから、期待をはるかに上回る味わいを生み出す料理の数々。隙のない構成と緻密に計算された料理について大土橋シェフに尋ねると、「個性が強いものが好きなんです。何かに合わせるために馴らされた味より、それぞれの素材の良さが際立つアンバランスさで全体のバランスを整えたい。そのほうが新しい出会いが多く待っているんですよ」。その思いと確かな実力がCRAFTALEの物語をつづっていることを、ひしひしと感じる答えが返ってきた。
【メニュー】
おまかせコース 7,000円(税・サ別)
ドリンク フルペアリング(6杯) 6,500円(税・サ別) ドリンク ハーフペアリング(4杯)4,500円(税・サ別)
[店名]CRAFTALE(クラフタル)
[住所]東京都目黒区青葉台1-16-11 2F
[営業時間]ランチ11:30~15:00(L.O.12:30)、ディナー18:00~23:00(L.O.20:30)
※ランチは土日のみ
[定休日]水曜日、第2・第4火曜日
[問い合わせ先]03-6277-5813
[ホームページ]https://r.gnavi.co.jp/jrn4ysuu0000/
(ライター/麻林由、カメラマン/片桐圭)