ハロウィーン後のカボチャをセサミで救え

水野仁輔のスパイスレッスン15

 年に一度のお祭り、ハロウィーンが終わった。10月の間だけ特別な注目を集めるカボチャも11月に入った直後から見向きもされなくなる、のだろうか。この時期にカボチャ料理を作ると冷ややかな反応に出会うことになるかもしれない。

 「ああ、ハロウィーンで残ったカボチャを料理したのね……」

 そんなことを想像すればするほど、天の邪鬼じゃくな僕の胸にはカボチャに対する執着心が湧きあがってくる。

 20年来の仲間で一緒にカレーを作り続けている「東京カリ~番長」という出張料理集団のリーダーは、こう言っていた。

 「ハロウィーンは嫌いだ」。ハロウィーンどころか、クリスマスもバレンタインも、とにかく世の中が盛り上がるその手のお祭りごとが好きになれないそうだ。ハロウィーンは嫌いだが、カボチャは好きだという。

 実は、僕は逆である。ハロウィーンは好きだ。街がきらびやかになるのも気に入っている。でも、実は、カボチャは昔から好きになれない。無駄に甘すぎるあの味わいも、ふかすとモソモソするあの食感も苦手だ。サツマイモや里芋や豆など、同じような食感を持つものもいまいち。スイーツになるならまだしも、食事として食べる感覚があまりない。僕の周りには賛同してくれる男性が何人もいる。カボチャは、男性が苦手な野菜の代表なのかもしれない。

 ほら、またカボチャに対してネガティブなことを考えてしまった。ハロウィーンを過ぎたカボチャにいいところを見つけること自体が難しいことなのかもしれない。でも、カボチャに罪はない。秋に旬を迎えるこの野菜は、スーパーに並んでいるのを眺めていると訴えかけてくる声が聞こえるようだ。

 「さあ、今が食べごろよ」

 それならカボチャが苦手な僕のような人でも、おいしく食べられる魔法をかけてみようじゃないか。スパイスの力に頼ってね。

 頭に浮かんだのは、ゴマだった。あの香ばしい香りなら、甘ったるいカボチャにいいアクセントを与えてくれそうだ。そこに合わせるのはレッドチリパウダー。とんがった刺激的な辛味を加えるのもバランスがよさそうだ。ターメリックパウダーは、二つのスパイスをつなぐ仲人のような役割。

 さっと煮て、火を通したカボチャにスパイスたちと塩、レモン汁を混ぜ合わせ、アツアツに熱した油を回しかけて全体をよく混ぜ合わせる。油が加わった瞬間に、すった白ごまからローストされたような香ばしさが立ち上る。と同時にボソボソしていたカボチャの表面が、高温の油の熱で溶け始めたアイスクリームのように滑らかに変化していくのがわかる。

 一口食べてみると、ゴマの香味、レッドチリの辛味、レモンの酸味が一丸となってカボチャの甘味に対抗してくれている。いや、対抗していると考えるのはあの甘味が苦手な僕の感覚で、そもそもカボチャが好きな人たちにとっては、甘味は引き立って感じられるだろう。ともかく、うまい。これがカボチャだというのなら、僕はカボチャが好きだと意見を変えてもいいとすら思う。

 「ああ、ハロウィーンで残ったカボチャを料理したのね……」

 そんな冷ややかな反応も、これを食べてくれれば一変するだろう。

 「ハロウィーンが終わって見向きもされなくなったカボチャを見事に救ってくれたのね!」

 そうであってくれることを願っている。

 

◆カボチャのローストセサミ
【材料】
カボチャ 1/4個(500g)
ターメリックパウダー 小さじ1/2杯
レッドチリパウダー 小さじ1/2杯
白すりごま 大さじ3杯
塩 小さじ1/2杯
レモン汁 1個分
植物油 大さじ5杯(75ml)
【作り方】
 カボチャをでて火を通し、ボウルに加える。ターメリックパウダー、レッドチリパウダー、白すりごま、レモン汁、塩を混ぜ合わせる。アツアツに熱した油を注いで全体をよく混ぜ合わせる。

水野仁輔
水野仁輔(みずの・じんすけ)
カレー&スパイス研究家

 1974年静岡県浜松市生まれ。99年に男性12人の出張料理集団「東京カリ~番長」を結成。各地で食のライブキッチンを開催するほか、世界のスパイス料理やカレーのルーツを探求中。著書は40冊を超え、近著に「水野仁輔 カレーの奥義」(NHK出版)、「スパイスカレー事典」(パイインターナショナル)、「いちばんやさしいスパイスの教科書」(パイインターナショナル)、「幻の黒船カレーを追え」(小学館)など。2016年にスパイスをレシピとともに届ける「AIR SPICE」を設立。