◆キュウリのあえ物 ナツメグ風味
【材料】
キュウリ 2本
塩 少々
ナツメグ ふたつまみ
かつお節(粉)小さじ1/4杯
マヨネーズ 小さじ1杯
【作り方】
キュウリをスライスして塩をふり、しばらく置いて水気を絞る。ナツメグ、かつお節、マヨネーズで和える。
ナツメグは、かわいそうなスパイスである。
ハンバーグくらいにしか使われないからだ。そんなことはない! あれにもこれにも使えるじゃないか! と反論する人はそんなにたくさんいないだろう。そもそも、ハンバーグを作るのにわざわざナツメグを使う人だって少ないはず。入れたら確実においしくなるのにね。
ツンとする癖のある香りは、肉料理全般に向いていると言われている。特に風味の強いマトンやビーフなどと相性がいい。ひき肉にもなじむから、ハンバーグに使えば肉の風味とのバランスがよい。じゃあ、メンチカツを作るときやステーキを焼くときにナツメグをふるかといえば、そうではない。ブラックペッパーという大きな牙城を崩せないのが現状だ。
ナツメグにもっと活躍の場を。そう考える僕がオススメしたいのは、かつお節との巡り合いである。ナツメグとかつお節!? とおおいにたじろいでほしい。直感的にいえば、センスのなさそうなブレンドかもしれない。でも、これがとてもよく合う。
第一印象は最悪だったのに、気がついたら居心地がよくなっていた、みたいな組み合わせだと僕は思っている。ある役者さんにそのことを話したら、「それ、恋愛の王道パターンじゃないですか!」と突っ込みが入った。彼にとってそれが現実の話なのかドラマの筋書きの話なのかはわからない。かつお節とナツメグで男女の恋愛を語れるとは思わないけれど、この恋は間違いなく成就するのである。
キュウリのおいしい初夏にまもなく突入するこの時期だから、すっきりしたあえ物にでもしてみようか。スライスしたキュウリを塩で軽くもんでおいておく間にナツメグとかつお節のご対面。まな板に並べて見るとかなり似たもの同士の色合いだ。くるくるとかき回せばどっちがどっちかわからなくなりそう。
そのまま混ぜ合わせるとナツメグはいったん姿を消す。その香りはナツメグを感じるというよりもかつお節の風味がより深まったようだ。マヨネーズのまろやかな味わいが加わればさらに風味は際立ち、きゅうりをおいしく食べられる。
この組み合わせを発見したきっかけは、ガラムマサラというミックススパイスだった。とあるガラムマサラからなぜか、カツオの風味がしたのだ。もちろん、かつお節は入っていない。不思議だけれど、このままご飯にかければふりかけになるんじゃないかとさえ思った。そうか、この手の香りはかつお節に合うんだな。
そう思ったからガラムマサラの原料になることもあるナツメグでやってみた。ナツメグがかつお節と合うことを発見した僕は、なかなか腕のいいキューピッドだと我ながら思う。もしかしたら、かつお節が活躍する料理にはたいていナツメグを合わせられるのかもしれない。次は冷ややっこにでもふりかけてみようかな。