料理と酒のパーフェクトな相性「赤星とくまがい」

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NY帰りの二人が開いた麻布十番の新星

 名店がひしめく美食の街・麻布十番。その中でもひときわ輝きを放つ店が、2015年にオープンした「赤星とくまがい」だ。日本酒と料理の完璧ともいえるペアリングを提案し続け、オープンからわずか2か月で予約がとれなくなるほどの人気店に。ニューヨークで経験を積んだ店主・赤星慶太さんと料理長・熊谷道弘さんが織りなす新たな世界を体験しに、この店のカウンターにこぞって人が押し寄せている。

 「日本酒をふだん飲まない人にこそ楽しんでほしい」と話す赤星さん。実は“SAKE”ブームが起きる前のニューヨークで、ひとりその普及に尽力してきた。味も飲み方もまったく知らないニューヨーカーに、どうすれば日本酒の魅力が伝わるのか……。「提案を間違えれば、きっとその人は、一生日本酒を飲まなくなってしまう」。そんな責任を感じながら、毎晩、バーに立ち続けた。銘柄は関係なく、口に合うか、そうでないか、ただそれだけ。そんな厳しい環境で18年間やってきた彼の「赤星とくまがい」での提案は、酒と料理の新たな地平を開くこと。どんな料理にも完璧なペアリングを提案したいと、約350種類もの日本酒をそろえる。それぞれの飲みどきを見極め、最高のタイミングで料理と供する。

 「日本酒は、国の名前を冠する世界唯一の酒」。そう聞くとなんだか誇らしげな気分にもなる。「関西では、日本酒とカレーのペアリングがはやってるんです」、「実は、料理と合わせる秘訣ひけつは『酸』にあるんです」と、こっそり教えてくれるこの店のカウンターは本当に楽しいのだ。

計算し尽くされたペアリングはもはや芸術!? 旬を引き立てる日本酒の奥深さ

 さて、最初のペアリングは「のカルパッチョ 水茄子生姜のビネグレットソース」と「吉野杉の樽酒」(奈良・長龍酒造)。旬の初鰹に、生姜、みょうが、木の芽、あさつき、からし菜などの香味をふんだんに加えた一皿。水茄子のふんわりした甘みと、きゅうりの夏らしい爽やかな食感、マンゴービネガーを使ったドレッシングのまろやかでほんのりした甘みが加わり、どこまでも優しく華やかだ。この香りの宝庫のようなこの一皿をしっかり受け止めてくれるのが、「吉野杉の樽酒」。樽材として最高といわれる樹齢約80年の吉野杉で熟成させた本醸造酒だ。晩春の山を思わせる深く静かな杉香。澄明な朝の空気を感じさせる優しくキレのある味わい。それが華やかな鰹と香味野菜とともに口の中で溶け合い、引き立て合う。「料理のうまみをここまで引き出せるのは、日本酒しかない」という赤星さんの言葉通り、お互いの香りはぶつからず、驚くほどに調和している。

 続いて「稚鮎の天ぷら 雲丹と生のりのあんをかけて」と「備中杜氏のにごり酒」(岡山・白菊酒造)。軽やかな稚鮎の天ぷらに、しっとりなめらかな雲丹、ほんのり柚子の香りが溶け込んだとろりと絡む生のりのあん。「備中杜氏のにごり酒」は、米の甘味、うま味が清々しい。料理とともにいただくと見事に口の中で溶け合い、透明になってのどを流れていく。ここまでそれぞれの味わいが変化するのかと不思議な感覚に、思わず箸もお酒も進んでしまう。

 最後は、「イベリコ豚の肩ロース炭火焼き 胡麻と八丁味噌のソースで」に「大七純米生酛きもと」(福島・大七酒造)をぬる燗で。りんごやいちご、ラズベリーなどのフルーツを数時間煮込み、八丁味噌に合わせたソースを、美しく桜色に焼き上げたイベリコ豚と旬の野菜に。ぬる燗の大七が、豚と野菜のうま味を最大限に引き出してくれる。りんごやベリーを仕込んだコクのあるソースとの相性も抜群だ。

 「旬」を大切にする同店は、月ごとに季節の食材を使ったメニューに変わる。来月はまた違った料理と日本酒のペアリングが楽しめるのかと思うと、何度でも足を運びたくなる。リピーターが多いのもうなずける。

NYで出会ったマリアージュ 日本酒に魅せられた二人が目指す先

 舌の肥えたニューヨーカーにSAKEを広めた赤星さん(右)が帰国したのは2015年。相棒に指名したのは、15歳から料理一筋の熊谷シェフ(左)。枠にとらわれない自由な発想で、ブルックリンの日本食レストラン「BOZU」を人気店に押し上げた。「赤星とくまがい」でも、彼の料理は食材を生かしながらも、組み合わせ方、盛りつけ、噐、すべてに自由な感性がいきている。そして、料理に寄り添う赤星さんの日本酒。彼ら2人が目指すのは、食を通じて誰かの人生を少しだけ良くすること。
 「このペアリングに出会ってなかったら、一生ジャンクフードを受け入れて終わっていたよ。子どもにも本物の食事を食べさせていきたい」。NYのバーでお客さんがくれたこの一言。それが今も彼らを突き動かす原動力となっているようだ。
(文・取材/望月みかこ、写真/岡本寿)

【メニュー】
おまかせ料理と日本酒ペアリング(食事8品+お酒8種類) 13,000円
鰹のカルパッチョ 水茄子と生姜のビネグレットソース 1,980円/吉野杉の樽酒 750円
稚鮎の天ぷら 雲丹と生乗りのあんをかけて 2,480円/備中杜氏のにごり酒 750円
イベリコ豚の肩ロース炭火焼き 胡麻と八丁味噌のソースで 3,600円/大七純米生酛 950円
※金額は税別。今回のご紹介は5月のメニューです。

[店名] 赤星とくまがい
[住所] 東京都港区麻布十番3の3の9コムス麻布十番7階
[営業時間] 月~木18:00~24:00(L.O23:30)、金・土18:00~翌2:00(L.O1:30)
[定休日] 日曜、祝日
[ページ] https://r.gnavi.co.jp/2a1xmyz60000/

 

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