手作りの職人魂宿るフレンチレストラン 「PATH」の極上モーニングで“幸せ”を食べる

ごほうびフード×ぐるなび

 人知れず頑張っているあなたへ。すてきなレストランやワンランク上の手土産など、女性にとって最高の“おいしいごほうび”情報をお届けします。

代々木で食す“世界一幸せな朝食”

 まだ肌寒い春の朝。「PATH」の中に一歩足を踏み入れると、その活気に心まで温まる。入り口では、Tシャツ姿のパティシエが一心にパイを折り続ける。カウンターの中ではエプロンをかけた料理人たちがリズムよく食事を作り続ける。香ばしく甘い香りを漂わせながら、オーブンから次々と焼き上がってくるカンパーニュ、クロワッサン、カヌレ−−。

 東京・代々木にあるこの小さなレストランは、シェフの原太一さんとパティシエの後藤裕一さんが2年前に二人で始めた。国内外のメディアから絶賛され、美食家たちから愛される超人気店。でも、彼らは開業したその日と少しも変わることなく、たゆまぬ姿勢で食と向き合い続けている。

 そんな二人のお店には、朝8時から夜11時まであらゆる人が入れ代わり立ち代わり訪れる。その理由は、彼ら職人が丹精込めて手作りする料理と、その空間に流れる時間が人を幸福にするからだ。そう、この店で食事をするということは、ただの美食体験にとどまらない。

 今回のごほうびフードはこちらの「朝食」。時間をかけてなにもかも手作りする料理を、朝からいただけるのは今の時代、最高の贅沢ぜいたくだろう。

甘くてしょっぱい恍惚の一皿「ダッチパンケーキ」

 最初の一皿は、この店の朝食を知る人なら誰もが溺愛する「ダッチパンケーキ」。ダッチパンケーキは、フライパンではなくオーブンでじっくり焼き上げるパンケーキのこと。こちらでは、その上に出来立てのブッラータチーズ(生クリームと細切りのチーズを巾着のように中にくるんだフレッシュチーズ)と自家製のハムをのせ、さらにメープルシロップをたっぷりかけていただく。「なめらかな食感を出すために、何度も何度も試作を繰り返しました」と話す原さんの自信作だ。

 熱々のパンケーキの温度で溶けて艶めくブッラータ、ローズピンクのハム。それらを生地にのせて、メープルシロップの海に浸して口の中へと運ぶ。その瞬間の恍惚こうこつといったら、たとえようもない。メープルシロップと卵のリッチで優しい甘味、そこにハムの塩味が重なり、芸術的な“甘塩っぱさ”を奏でる。

 「キヌア、ザクロ、トレビスのサラダ」は、PATHモーニング定番のサラダ。紫キャベツに似たトレビスをベースに、トマトやザクロなど様々な赤で表現された美しい一皿だ。ザクロの種がはじけた時ののどを潤すジューシーさ、プチプチしたキヌアの食感、ザクザク香ばしいヘーゼルナッツに、独特な風味を添えるヤギのチーズ。それらをしっとり柔らかなトレビスの薄い葉が包み込む。さらに、魚醤ぎょしょうを隠し味に加えたドレッシングが、素材それぞれの味を引き立て、見事に調和させる。

 季節のスープはほっこり優しい味わいの「サルシッチャのクリーム煮込み」(取材時)。キャラウェイやクミンなどのスパイスを利かせたサルシッチャは、武骨な肉感とうまみを感じさせる。それを玉ねぎや鶏ガラからしっかり出汁だしをひいたクリームスープが優しくむかえる。あっさりサクサクのスコーンをひたして食べると、バターと小麦のふんわり甘い風味が広がりまた違った表情をみせる。

 最後に、PATHの命ともいえる「クロワッサン」。早朝から後藤さんが生地を折り続けて作るこのクロワッサンは、午前中で売り切れてしまうこともしばしば。その人気ぶりは一度口にすれば納得する。かむ前からほろっと崩れそうな繊細な外側に対して、モッチリしたきめかな内側。まるで生のバターが溶け出すようなコク深い甘さと、信じられないほど軽やかな食感。この絶妙な均衡を保っているのが不思議なほどだ。

 フィナンシェ、カヌレなどのほかの焼き菓子も、どれも驚くほど繊細で深く、リッチな味わいで、手土産にするとよろこばれること間違いなしの逸品ばかり。

二つ星レストランで修業時代をともにした原さんと後藤さん

 ミシュラン二つ星のフレンチレストラン「キュイジーヌ[s]・ミッシェル・トロワグロ」でともに修業時代を過ごした彼ら。その後、原さんは、東京・渋谷に「Bistro Rojiura」をオープンして独立、すぐにビブグルマンに選ばれた。後藤さんはフランス・ロアンヌの本店でアジア人初のシェフパティシエをつとめあげた。そんな二人がつくったレストランは、意外にもかしこまった白いクロスやコックコートのない等身大の手作りのお店。

 店内を歩けば、いたるところに彼らの“手作り”に出合う。天井からはサルシッチャがつるされ、食器棚には発酵中のイチゴジュース。カウンターの上では天板に並べられたヘーゼルナッツや、ディナーコースのデセールたちがかわいらしく出番を待つ。ランチタイムが終わると、スタッフ総出でディナーの準備にとりかかる。小さな小さなパイ生地でレーズンバターサンドを作る人。レモンの皮を削ってリモンチェッロを作る人。店内に流れる曲が途切れると作業の手を止め、次のレコードをかける。そんなことが毎日毎日ここで繰り返される。

 ああ、食べるってこういうことなんだな。

 人が集って作り、食べる。そのとき人は孤独でなくなる。食の世界を深く深くすすめば、自然な愛に出合える。朝からそんなことにまで思いをめぐらせてくれるPATHの朝食は、最高のごぼうびなのかもしれない。

(文・取材/望月みかこ、写真/岡本寿)

【メニュー】(全て税抜き)
ダッチパンケーキ 1,500円 / キヌア、ザクロ、トレビスのサラダ(L) 980円
サルシッチャのクリーム煮込み 980円 / クロワッサン 290円 / カヌレ 300円
フィナンシェ 240円 

[店名] PATH(パス)
[住所] 東京都渋谷区富ヶ谷1-44-2 A-FLAT1F
[営業時間] 8:00~14:00、18:00~24:00(L.O23:00)
[定休日] 月曜日(月に1度日曜日)
[ページ]  https://www.instagram.com/path_restaurant/

 

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