アートのとなり 会いたい未来

マリ・クレール スタイル

(c)Emma Maeda

川上未映子さんの書かれた「夏物語」という小説を読みました。物語の主人公・夏子は38歳。パートナーはいませんが、「自分の子どもに会いたい」と思い、パートナーなしの妊娠・出産を目指します。その過程で、精子提供で生まれ「父の顔」を知らない男性や、出産は親たちの「身勝手な賭け」だと残酷さを訴える女性など、様々な登場人物と出会い、夏子が出産や生命の意味に向き合っていくお話です。

私はこの小説の関連トークイベントにいくつか行きました。その中のひとつがiPS細胞研究の権威・山中伸弥さんと川上さんの対談でした。私は頭があんまりよくなく(学校の勉強が本当に苦手でした)、難しいことは分からなかったのですが、「人間って、こんなところまで来てしまっているのか……」とポッカーンとしてしまいました。どうやら、もう実行しようと思えば同性同士でも、子どもが作れる世界に私たちはいるというのです。

「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命──人は明日どう生きるのか」は、そんな人間が手の届かない場所まで来てしまっているという恐怖と、幼い頃に描いた夢の世界を混在させたような、緊張する展覧会でした。空に浮かぶ都市、ロボットによる似顔絵デッサン、遺伝子デザインされ、頭や頬が変形した赤ん坊の人形、生きている椅子など、アートだけでなく建築や生命など多様なジャンルの作品が並びます。

会場に展示されている「火の鳥 未来編」(著・手塚治虫)の原画の中に、「新しい人間が生まれるのをあなたは見守らなければなりません」というセリフがありました。

私たちはどんな現在にいたかったのでしょうか。どんな未来を望んでいるのでしょうか。
(c)marie claire style/text: Emma Maeda

「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」

会期:3月29日(日)まで
会場:森美術館
お問い合わせ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://www.mori.art.museum/jp/

※新型コロナウイルスの感染予防および拡散防止のため、臨時休館が延長される場合があります。

前田エマ(まえだ・えま)
アーティスト、モデル

 1992年生まれ。東京造形大学卒業。オーストリアウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中より、モノづくりという観点から、雑誌のディレクション、ショーやイベント、ファッションブランドのモデルをつとめる。ほかにもエッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、分野にとらわれない様々な活動が注目を集めている。Now Fashion Agency所属。

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