私は、ずっとジョン&モニクが大好きだった。J&M、そう、ブランドの創設者デヴィッドソン夫妻。レセプションや取材で何度かお会いしたけれど、本当にクールな2人だった。イギリス人のジョンと、フランス人のモニク。「僕は彼女の感性を心から愛している」とジョン。「自宅でもオフィスでもずっと一緒なのよ」と困った顔をしながらも、ジョンの姿が少しでも見えなくなると、不安そうな顔をするモニク。
ベルトのデザイン、販売からスタートしたブランド「J&M デヴィッドソン」が、バッグやシューズ、アパレルにまで大きく広がったのは、この2人の愛のあり方や、存在感が大きかったはず。今でも大ヒットを記録している、“カーニバル”というバッグは、モニクが「昼間使うバッグを、ジョンや仲間と夜遊びをするときにも持てるようにデザインした」そうで、2人の生活に密着しているアイコニックなアイテムの一つ。
今後はインテリアにも興味があると言っていたのに、2人は退任を発表。デザインやディレクションをケイティ・ヒリヤーに譲った。ジョンと同じイギリス人のケイティ。2人の愛情をたくさん受けて育ったブランドがどうなるのかな、と思っていたら、シンプルに言えば、とても素敵になっていた! 素敵に――というのは、さまざまな意味が含まれていて、今っぽい、気持ちが強く動かされる、パワフル、などいろいろ。
ジェントルで思いやりの深い2人の「J&M デヴィッドソン」が、その愛のあり方を、いい意味でクローズドな形で表したものだとしたら、ケイティの解釈するブランドは、もっと、オープントゥエブリバディ。国籍や性別やライフスタイルを限定しない、という意味では、「今までのアイデンティティ」を軽々と飛び越えてみせた感じだ。
たとえば、このジョーゼットのワンピースは、一見クラシカルでコンサバティブだけれど、絶対にそんなことはない! ケイティなら、きっと、「ドクターマーチン」のブーツで「はずして」、彼女の新しい解釈による“カーニバル”を持つはず。一方で、ボウ付きのバレエシューズで正統に、もあり。
そう、目の前にいる相手への無償の愛を秘めたブランドは、今、大きな意味での他者に優しい視線を送るダイバーシティなブランドに成長したのだ。
(c)marie claire style/text: Naoko Okusa
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